カレントアウェアネス
No.142 1991.06.20
CA743
USMARCにおけるドイツ統一問題
東西ドイツの統一は,当然のことながら,目録作業にも影響を及ぼしている。以下に紹介するのは米国議会図書館(LC)における記述目録作業,及び件名作業の新方針であるが,この方針変更により,LCから頒布されるUSMARCのデータ内容も従来との整合性等の点で問題が生ずることになった。コピー・カタロギングを行っている図書館は要注意である。
(1)著者標目(地名=政府名)
分裂以前,及び再統一以後 | ……Germany |
分裂時代の各政府 | ……Germany (East) |
……Germany (West) |
(2)著者標目への付記事項
分裂以前,及び再統一後のBerlinについて | ……Berlin (Germany) |
分裂時代のBerlinについて | ……Berlin (Germany : East) |
……Berlin (Germany : West) |
Berlin以外の標目への付記事項は,従来より(Germany)のみで東西の区別は行っていないため,変更はない。
(3)出版国コード
gwを用いる。(ge, wbは不使用)
従来は,Berlin (West) とBerlin (East) に別のコードが割り振られており,Berlinに本拠を置く出版者毎に東西どちらであるかを確認する必要があったが,今後は全てgwでよい。
(4)件名標目(政府名)
政府名に関しては著者標目と同じ。
(5)件名標目(地名)
統一の前後にかかわりなく,目録対象資料が旧西ドイツ(ドイツ西部地域)に関するものであれば,Germany (West) を用いる。ドイツ全域に関するものであれば,時代にかかわりなくGermanyを用いる。
(6)件名の間接地理区分
ドイツ国内の地名による間接地理区分は,今後Germany (West) 等ではなく,全てGermanyのもとで行う。(BerlinもGermanyのもとで用いることになる)
(7)地域コード
旧東西ドイツの特定地域については,時代にかかわりなくe-gxを用いる。(即ち,旧東ドイツ内の地域でもe-geは用いない)ただし,旧東ドイツ全域であれば従来どおりe-ge。
ここで問題になるのは,上記方針の適用開始時の違い,及び整理時期との関係である。例えば著者標目への適用は出版年が1991年以降の資料に対してである一方,件名標目への適用は,1990年12月3日以降に整理される資料に対してである。また,出版国コードの付与は,出版時点ではなく,整理時点において当該資料の出版地がどの国に位置するかによって決定されるため,分裂時代中に同一の出版者から刊行された資料であっても,LCがいつ整理したかによって異なるコードが付与されることになる。
こうしてみていくと,「目録業務統合計画」(CA708参照)にもかかわらず,記述目録作業と主題目録作業の方針の違いがあるほかに,過去のデータとの整合性の欠如が放置されたままである。データベース構築におけるバックファイル・メンテナンスの困難さは図書館屋ならずとも周知のことであるが,利用者にとっては非常に不便なデータの集積が行われ続けることになる。書誌情報の世界における「ドイツ統一」は何時の日か実現するのであろうか。
横山幸雄(よこやまゆきお)
Ref: German Reunification. Cat. Serv. Bull. (51) 2, 1991