CA1911 – 図書館向けデジタル化資料送信サービスの統計に見る開始から3年の状況 / 上綱秀治

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カレントアウェアネス
No.334 2017年12月20日

 

CA1911

 


図書館向けデジタル化資料送信サービスの統計に見る開始から3年の状況


関西館:上綱秀治(かみつなしゅうじ)

 

 国立国会図書館(NDL)の「図書館向けデジタル化資料送信サービス」(図書館送信)は、NDLが収集・保存しているデジタル資料のうち、絶版等で入手困難な資料を全国の公共図書館、大学図書館等の参加館に送信するサービスである。2014年1月21日の図書館送信開始から3年以上が経過した。そこで、参加や利用に関する統計に基づき、2016年12月時点の状況について報告する。関連する基本的な統計等がNDLのウェブサイト(1)や、毎年刊行される電子出版制作・流通協議会の「電子図書館・電子書籍貸出サービス調査報告」(2)に掲載されているのであわせて参照いただきたい。

 

1. デジタル化資料の提供点数

 図書館送信の対象資料は「国立国会図書館デジタルコレクション」(デジコレ)に収録されている。デジコレは、資料を次の3つの公開範囲で提供しており、2.に該当する資料が図書館送信の対象となる。

  1. インターネット公開:公開について著作権など権利状況に問題がないことが確認できたもの
  2. 図書館送信:インターネット公開していない資料のうち、絶版等で入手困難なもの
  3. NDL館内限定:上記にあてはまらないもの

 デジコレで提供している資料は、図書館送信の開始当初(E1540参照)は約231万点だったが、2016年末時点では約262万点に増えている。資料の公開範囲の割合は当初とほぼ変わらず、約2割(約51万点)をインターネット上で、約5割(約143万点)を図書館送信で、約3割(約68万点)をNDL館内限定で提供している。資料種別の割合は、図書が約4割(約96万点)、雑誌が約5割(約127万点)で、これも当初とほぼ変わらない。2016年末時点に図書館送信で提供していた資料の資料種別の割合も概ね同じである。

 

2. 図書館送信の参加館数

 2016年末時点の図書館送信参加館数は760館(3)で、内訳は、都道府県立図書館56館、政令指定都市立図書館83館、市区町村立図書館275館、大学図書館324館、その他(研究所、資料館、博物館、美術館等)22館となっている。

 

表1 館種別参加館数

都道府県立 56
政令指定都市立 83
市区町村立 275
大学 324
その他 22
合計 760

 

 都道府県立図書館は全ての都道府県が、政令指定都市立図書館は20市中18市が参加しており、最近では市区町村立図書館や大学図書館の参加が増えている。2016年の公共図書館数は約3,300館、大学図書館数は約1,700館とされている(4)ため、公共図書館の約1割が、大学図書館の約2割が参加していることになる。都道府県ごとに公共図書館の参加率を見ると、参加率が1割未満の都道府県が約20あった(図1)。電子出版制作・流通協議会のアンケート(5)によれば、現在のところ参加を考えていない図書館が約5割を占めており、参加を阻む要因として、端末設置スペースがない、セキュリティやネットワークを確保できないなどの施設や機器の課題が挙げられている。また、参加率が4割を超える神奈川県、滋賀県、大阪府の参加状況を確認したところ、主に府県内の市立図書館が同時期にまとまって参加していることがわかった。

 

都道府県ごとの公共図書館の参加率。北海道9.5% 青森20% 岩手4% 宮城7% 秋田2% 山形6% 福島8% 茨城12% 栃木20% 群馬4% 埼玉20% 千葉12% 東京11% 神奈川44% 新潟6% 富山7% 石川5% 福井14% 山梨6% 長野11% 岐阜13% 静岡11% 愛知13% 三重4% 滋賀49% 京都6% 大阪42% 兵庫11% 奈良10% 和歌山12% 鳥取10% 島根5% 岡山10% 広島8% 山口4% 徳島7% 香川10% 愛媛11% 高知3% 福岡5% 佐賀23% 長崎13% 熊本4% 大分3% 宮崎3% 鹿児島3% 沖縄18%

図1 都道府県ごとの公共図書館の参加率(6)

 

3. 図書館送信の利用点数

 参加館では、資料の閲覧または閲覧・複写が可能で、参加館のうち約1割は閲覧サービスのみを提供している。2016年の1年間の統計では、全参加館で合計すると、1日平均約470点の閲覧、約230点の複写が行われている。サービス開始1か月後の統計(約150点の閲覧、約60点の複写)と比較すると、閲覧は約3倍、複写は約4倍に増えている。

 図書館送信の開始当初と同様に、利用が多い図書館と少ない図書館の差は大きい。2016年の統計で最も閲覧と複写の合計数(利用点数)が多かったのは京都市右京中央図書館(7)CA1912参照)で、1日平均約15点の閲覧、約4点の複写が行われている一方、閲覧・複写ともに全く利用がない図書館もある。なお、2016年に全く利用がなかった図書館を調査したところ、複数の図書館が同時期に参加した地方公共団体(8)の、その一部の図書館であるケースが多いことがわかった。

 約3年間の利用点数を館種で比較すると、1館あたりの1か月間の平均利用点数は、都道府県立図書館が際立って多く、残りは概ね、政令指定都市立図書館、国立大学図書館、その他、市区町村立図書館、私立大学図書館、公立大学図書館の順となっており、主に図書館の規模が関係していると推察される(図2)(9)。一方で、1か月間の利用点数全体に占める館種別合計の割合を比較すると、都道府県立図書館と市区町村立図書館の差は大きくない(図3)。市区町村立図書館の参加館数が多いため、図書館送信利用全体の4分の1を占める結果となっていると推察される。

 

館種別の1館の平均利用数。都道府県立は閲覧が84点、複写が31点。政令指定都市立は閲覧が26点、複写が11点。市区町村立は閲覧が14点、複写が6点。国立大学は閲覧が22点、複写が12点。公立大学は閲覧が8点、複写が8点。私立大学は閲覧が10点、複写が8点。その他は閲覧が17点、複写は9点。

図2 館種別の1館の平均利用数

 

館種別の利用に占める割合。都道府県立は29%、政令指定都市立は13%、市区町村立は24%、国立大学は14%、公立大学は3%、私立大学は15%、その他は2%。

図3 館種別の利用に占める割合

 

 約3年間の利用状況を資料種別ごとに算出すると、閲覧については図書が40%、雑誌が58%、複写については図書が45%、雑誌が52%を占めており、図書館送信で提供している資料の割合(図書35%、雑誌55%)と概ね一致している。

 利用された資料の主題を調べると、図書は歴史・地理、文学、社会科学、芸術に関する資料が多く、言語、自然科学、総記に関する資料が少ない傾向がみられた。また、雑誌は科学技術・工学、芸術、社会・労働に関する資料が多い傾向がみられた。

 なお、一部の参加館の統計から、参加館ではインターネット公開資料も多く閲覧されていることがわかった。これは、図書館送信の初期設定では、図書館送信資料のみでなく、インターネット公開資料も検索・閲覧可能となっているためと考えられる。

 

4. 図書館送信の利点と課題

 電子出版制作・流通協議会のアンケート(10)によれば、図書館送信を導入した図書館の多くが「より多くの資料を提供できるようになった」(77.0%)、「利用者のニーズに即した資料をより適切に提供できるようになった」(73.8%)、「より迅速に資料を提供できるようになった」(57.4%)ことを導入の利点として挙げている。また、アンケートの自由記入欄では、レファレンスツールとしての有効性を挙げている図書館が多い。これらの利点の一部は、デジコレでは目次も検索対象である効果が発揮されているものと推察される。

 導入して感じる課題としては「利用が少ない」(45.1%)、「複写物の提供に係る判断が難しい」(32.8%)、「運用・管理が煩雑である」(32.0%)、「設備や要員に係る負担が大きい」(19.7%)などが挙げられている。利用環境に関する課題に加え、「利用が少ない」という悩みに対して、参加館とNDLが協力して対応する必要があることがわかる。

 

5. おわりに

 NDLでは、提供資料数の拡大に加え、図書館送信に関するポスターやちらしの作成・配付、図書館員向け研修の実施などを通じて、参加館の拡大や利用促進に努めているが、今回の調査により、さらに積極的な取り組みが必要であることがわかった。今後もより一層努力していきたい。

 今号では、上記で紹介した2016年に利用点数が最も多かった京都市右京中央図書館と、デジコレの書誌情報を自館のOPACに取り込んで提供している静岡大学附属図書館(CA1913参照)の事例報告を執筆いただいた。これらの参加館での取り組み事例が、参加館における利用促進や非参加館における参加検討の参考になれば幸いである。
 

(1) 田中譲. “図書館送信の利用状況について”. 国立国会図書館.
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/digitization/about_riyo.pdf, (参照 2017-08-21).
本文中の統計値の多くは、この文献による。

(2)たとえば、2016年版の書誌情報は次のとおりである。
植村八潮, 野口武悟, 電子出版制作・流通協議会. 電子図書館・電子書籍貸出サービス調査報告2016. 電子出版制作・流通協議会, 2016, 134p.

(3)2017年10月末時点では856館。

(4)日本図書館協会図書館調査事業委員会. 日本の図書館: 統計と名簿. 日本図書館協会, 2017, p. 20, 231.

(5)植村八潮, 野口武悟, 電子出版制作・流通協議会. 前掲. p. 32-33, 45-46.

(6)地図の作成にはCraftMAP(http://www.craftmap.box-i.net/)を使用した。参加率は、各都道府県の参加館数を、『日本の図書館: 統計と名簿』の2016年版の20ページに掲載されている都道府県別の図書館数で割ったものである。

(7)閲覧は1位、複写は大阪府立中之島図書館、島根県立図書館に次いで3位だった。

(8)上記の参加率が4割を超える3府県と一部重複するが同じではない。

(9)「その他」が多いのは、研究所等の文献需要の高い利用者が多い機関が含まれているためと推察される。

(10)植村八潮, 野口武悟, 電子出版制作・流通協議会. 前掲. p. 46-49.
 

[受理:2017-10-27]

 


上綱秀治. 図書館向けデジタル化資料送信サービスの統計に見る開始から3年の状況. カレントアウェアネス. 2017, (334), CA1911, p. 11-13.
http://current.ndl.go.jp/ca1911
DOI:
https://doi.org/10.11501/11007716

Kamitsuna Shuji.
Statistical View of the NDL Digitized Contents Transmission Service for Libraries Three Years after its Launch.