CA1770 – 動向レビュー:図書館はデジタルカメラによる複写希望にどう対応すべきか / 鑓水三千男

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カレントアウェアネス
No.312 2012年6月20日

 

CA1770

動向レビュー

 

図書館はデジタルカメラによる複写希望にどう対応すべきか

 

前千葉県労働委員会事務局:鑓水三千男(やりみず みちお)

 

1. 問題の所在

 図書館資料の複写については、多くの場合、自動複製機器(以下「コピー機」という)が図書館内に設置され、当該コピー機を使用して図書館職員の監視と監督のもとで行われている。しかし、近年、図書館利用者による携帯電話のカメラ機能を利用した図書館資料の無断撮影が行われ、あるいは利用者からデジタルカメラによる撮影を認めてほしい旨の希望が出されているという。

 著作権法第31条第1項に基づき図書館において提供される複写サービスは実費を徴収する場合がほとんどである。一方、利用者が持参したデジタルカメラを用いた複写(撮影)を許容するならば、わざわざ図書館の有料の複製機器を利用するよりも、無料でかつ利便性の高いデジタルカメラによる撮影を選ぶことになるだろう。

 図書館におけるデジタルカメラによる撮影については、著作権法第30条の問題と理解する見解と同法第31条の守備範囲で考えようとする見解がある。そこで、本稿においては、図書館資料をデジタルカメラで撮影することについて、第30条と第31条との関係を中心として整理し、図書館におけるデジタルカメラを用いた撮影に関する対応について検討することとする。

 なお、筆者は、2012年3月31日まで千葉県職員として勤務し、その間、政策法務室長等自治体法務に係る業務を担当してきたが、本稿の内容中意見にわたる部分は、筆者がかつて所属した組織とは何ら関係のないものであり、筆者の個人的な見解であることをお断りしておきたい。

 

2. 現行法制下における図書館資料の複製に係る状況

2.1 図書館法

 図書館法第3条は、図書館において提供されることが予定されている図書館奉仕を列挙しているが、その中に図書館資料の複写サービスは含まれていない。ただし、同条に規定する図書館奉仕は例示であると理解されている(1)ので、図書館が図書館奉仕の一環として、法令が許容する範囲で、また図書館資料の管理上支障のない範囲で、利用者の求めに応じて当該図書館が所蔵する図書館資料の複写物を提供することに特段の問題はない。むしろ図書館資料の積極的な活用と住民サービスの拡大につながるものとして望ましい対応と言えるし、現に多くの図書館において複写サービスが行われている。

 

2.2 著作権法

 著作権法第30条第1項は、私的使用を目的とするのであれば、著作権の目的となっている著作物を自ら複写することを認めている。この場合、私的使用とは、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することをいう。ただし、同項には三つの例外が定められており、その一つが「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いてする複製」である。したがって、誰もが使用できるようコンビニエンス・ストア等に設置されたコピー機等を使用して図書館資料を複製することは、本来、同項によって許されないこととなるが、著作権法附則第5条の2の規定により、当分の間、同項の適用が排除されている。

 一方、著作権法第31条第1項は、公立図書館、大学図書館等政令で定める図書館において、(1)利用者の調査研究目的で、(2)当該図書館における資料保存の目的で、(3)入手困難な資料を他の図書館に提供する目的で、図書館において著作権者の許諾なくして図書館資料を複写することを認めている。このうち(1)の場合にはこれを利用者に提供することができるが、提供する複製物の部数は一人一部であり、複製することができるのは原則として図書館資料のすべてではなくその一部分であって、しかも公表された著作物に限られる(2)

 これらの規定から明らかなように、図書館における資料の複写は極めて限定的に認められているにすぎないものであり、これらの要件を満たす場合に限って著作権を制限し、複製物を提供することができるとしている。当該規定は、利用者の便益と著作権者の権利の尊重との調整を図っているものであり、複製が許される場合が極めて限定的であるということは、その分著作権者の権利を尊重することに重点が置かれていることを覗わせる。

 

3. 国その他の関係機関・団体の見解

 この章では、デジタルカメラ等で図書館資料を撮影することについて、国その他の関係機関・団体の見解を確認する。

 

3.1 文化庁

 文化庁のホームページに掲載されている「著作権なるほど質問箱」によれば、同庁は、デジタルカメラを図書館に持ち込んで撮影することについて、著作権法上の問題はあるかとの質問に対して、「一般的には著作権上の問題はありません」と回答している。すなわち、図書館資料を複製の対象とする場合でも、利用者が自ら持ち込んだ複製機器に拠るならば、第30条第1項の定める「私的使用」である限り、著作権法の問題は生じないとしている。ただ、「図書館の管理上の問題として、持ち込み機器によるコピーを禁止することができるのは言うまでもありません」とも述べている。

 このように、文化庁はこの質問に対しては、専ら同法第30条に規定する私的使用のための複製という観点から回答しており、著作権法第31条の適用可能性について何ら言及していない(3)

 

3.2 公益社団法人著作権情報センターの見解

 公益社団法人著作権情報センターの発行している「ケーススタディ第3集」では、デジタルカメラや携帯電話を使って資料を撮影する利用者がいる場合の図書館における対応について見解がまとめられている。それによると、「著作権法には『私的使用のための複製』という規定があり、この規定に該当すれば利用者は、著作権者に無断で複製することができます」と説明を始めていることから、同センターはこの問題を著作権法第30条第1項の問題として認識しているものと思われる。その上で、「図書館として、そのようなデジタルカメラや携帯電話による撮影は認めないという方針を取るのであれば、それは一つの見識といえましょう。著作権法で止めるのは難しいので、根拠としては、静かな読書環境を保ちたいという図書館という施設の管理権に基づいて、利用者に止めてもらうよう注意すべきでしょう」と述べている(4)

 

3.3 社団法人日本図書館協会の見解

 社団法人日本図書館協会(JLA)は、「利用者が自分のハンディコピー機を図書館に持ち込んで、資料を複写することは(著作権)<法31条>には当たらないと思いますが、(著作権)<法30条>に該当しませんか。また、スキャナーを持ち込んで自分のパソコンに読み込むことはどうですか」との設問に対し、著作権法第30条第1項が規定する私的使用のための複製の要件を満足するものについて無断使用が許容されており、複写の場所を特定していないことから、図書館資料について必要な部分を複製することができるという解釈も成り立ちうるとしている。しかし、さらに続けて、著作権法が図書館の公共的な立場に照らして著作物の複製を第31条第1項を用意して認めている趣旨にかんがみれば、図書館において同法第30条第1項の規定による複製を認めることは法の趣旨に合致しないと考えられるとし、違法とまでは言えないとしても、図書館の管理運営規則により拒否すべきものであると回答している(5)

 

3.4 各団体の見解の整理

 図書館におけるデジタルカメラによる撮影に関する各団体の見解を要約すれば次のようになる。

 すなわち、文化庁は、図書館におけるデジタルカメラによる図書館資料の撮影は、著作権法第30条第1項の規定による私的使用の範囲にとどまる限り可能であるが、図書館が施設管理上の問題としてこれを禁ずることはできるとしている。公益社団法人著作権情報センターもこれとほぼ同様の見解と思われる。

 一方、JLAの見解は、これらとややニュアンスを異にし、著作権法第31条が設けられていることの趣旨等に照らして、同法第30条第1項の規定を根拠に図書館におけるデジタルカメラによる撮影を許容することには懐疑的であり、図書館の管理運営上の理由から拒否することが適当と考えている。

 

4. 図書館における実務上の取扱い

4.1 公立図書館

 筆者が情報公開制度等を利用して入手した関東地方1都6県の都・県立図書館における図書館資料の複製に係る取扱いについてみると、7自治体中6自治体の図書館において、著作権法第31条第1項に基づく図書館資料複写サービスを円滑に行うための取扱要綱を定めている。

 これらの要綱にほぼ共通しているのは、複写により損傷する恐れのある資料を複写対象としないことを定めていることであり、第31条の複写を許容する要件を確認し、複製機器を図書館に設置されたものであることとしていることである(6)。このことから、これらの要綱は、明らかに同法第31条第1項の範囲内で対応するための事務処理マニュアルという性格のものということができる。

 このほか、複製機器の持込みによる図書館資料の複製の取扱いに関する要綱を定めている例もある(7)。この場合においては、持込みを可とする複製機器を非接触式の機材と定めることにより図書館資料の保護を図り、併せて複写の目的を自ら転載、出版等の目的による複製等に限定する等としている。これらの作業は図書館職員の監視の下で行われるものであって、当該要綱に基づき行われる持込機材による複製も、著作権法第31条が想定する図書館資料を図書館職員の監視の下で複写する場合に該当し、同法第30条第1項が規定する私的使用を想定した対応ではないと判断される。

 

4.2 大学図書館

 『大学図書館における著作権問題Q&A』(8)のQ3に「利用者から資料の一部をメモする代わりに、デジタルカメラで撮影したいと申し出がありましたが、認めても問題はないでしょうか」との設問が掲載されており、これに対して、この場合の複製行為は、著作権法第31条ではなく同法第30条が根拠となるので、著作権法の条文の上では、特に問題にならないと思われるとの回答を示している(9)

 

5. 図書館においてとるべき対応方針(私見)

5.1 図書館における著作権法第30条と第31条の適用関係

 デジタルカメラによる図書館資料の撮影を認めるかどうかを検討するに際して、著作権法第30条と第31条の適用関係について整理しておきたい。

 筆者は、同法第30条の規定は、図書館以外の場所において妥当するが、図書館の内部においては、同法第31条のみが適用されるべきと考えている。

 先ず、著作権法第30条の守備範囲について考える。第30条第1項の私的使用の場面を安易に拡大すべきでないことは、1976年の著作権審議会においても議論されている(10)

 著作権法の目的は、「著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与する」ことにある(第1条)。著作権法の個別の条項の解釈運用に当たっても、この視点は常に維持されなければならないと考える。

 図書館は、著作者等の知的活動の結果生み出された書籍、映像資料等を保存し、利用者に提供する知の宝庫であり、その意味において「公的な場」(11)である。筆者は、図書館の有する公共性とは、図書館が単に情報を集積している施設というだけではなく、生涯学習を推進し、調査研究を支援する機能を有するものであるということ、また、著作権を尊重する運用を行うことで次代の著者や文化の担い手を育成するという、すぐれて公共的な機能をも有するものであるということに存在すると理解している。

 なるほど、第30条は場所を限定しておらず、その意味において形式的に図書館を排除してはいないという理解も成り立つであろうが、私的使用という目的と家庭内その他これに準ずる場所における使用を対象とする第30条の次に、図書館等における複製でより限定的な条件を付している第31条が置かれている意味を考えるとき、そのような形式論が妥当するかどうかは疑わしい。つまり、著作権法においては、第30条は一般的な私的使用に関する規定であり、図書館における私的使用はより限定的に第31条に規定する要件に該当した場合のみ認めるという趣旨ではないのだろうか。

 その両規定の整合性を踏まえた解釈運用を行うのであれば、図書館においては第30条の規定による複製は認めるべきではないという結論になるであろう。第31条が図書館において厳格な要件の下で複製を認めているのは、図書館資料に係る複製行為が、図書館の管理下(図書館職員の監視下)において行われることにより、著作権の保護と著作物の利用とのバランスを確保できるとの配慮によるものと思料されるのである。

 なお、図書館資料といえどもいったん館外に貸し出されたものについては、図書館資料以外の著作物と同様に、その利用者が自らの責任と判断において、第30条の許容する範囲で複製すべきものであり、当該利用者が著作権法を遵守するかどうかは、図書館の預かり知らぬことである。

 

5.2 デジタルカメラによる撮影が許容される条件

 上記の議論は、図書館資料のデジタルカメラによる撮影についても妥当するものと考える。著作権法第31条第1項は、複写の手段について、第30条第1項に規定する自動複製機器やデジタル方式の録画のような限定をしていないことから、これらの手段による複製を排除しているとは解しがたいので、デジタルカメラによる図書館資料の撮影も、第31条第1項の守備範囲の中で認められるべきものである。

 周知のとおり、第31条1項1号は、図書館等が図書館利用者に複製を認める要件について厳格な制限を課している。この規定は、図書館において図書館資料の複製を行う場合には、図書館が主体的に複製を行い(利用者が複製を行うのではない)、複製の過程に図書館のコントロールが及ぶものであることを求めている。

 現在議論されているデジタルカメラによる撮影については、カメラを持ち込んだ者が撮影をすることが前提であるから、図書館が主体的に複写するわけではない。デジタルカメラによる撮影は、この点で第31条の要件を満足しないこととなる。したがって、図書館利用者がその保有するデジタルカメラにより図書館において図書館資料を複写することは、そもそも許されないとする解釈も可能であろう。

 しかし、図書館利用者の利便性の向上を図り、併せて著作権者の権利を保護する観点からは、デジタルカメラによる撮影を、著作権法第31条第1項が要求する図書館の主体に基づくものであり、図書館の管理下において行われるものであると評価できる方法を検討すべきではなかろうか。

 そのためには、図書館利用者の保有するデジタルカメラによる撮影は、その申請に基づき図書館長が許諾するという形式をとることが適当である。その上で、デジタルカメラによる撮影の全過程を図書館の管理下で行われるよう、職員が立ち会い、対象資料の確認を行う等、所要の措置を講ずる必要がある。

 

5.3 デジタルカメラによる撮影の望ましい管理方法

 以上のとおり、現行の著作権法を前提とする限り、図書館におけるデジタルカメラによる撮影については、第31条の守備範囲の中で対応せざるを得ない。この場合において、OCLCの報告書(12)を参考としつつ検討すれば、次のように対応することで、図書館による制限的な複写行為の管理が可能となると考える。

(1)撮影には図書館職員が必ず立ち会い、事前に複写対象物の状態を確認する。

(2)撮影場所として、一般の閲覧室とは区分された場所を用意する。

(3)複写の目的を調査・研究、教育等の私的使用に限定し、著作権法第32条に規定する引用を行う場合を除き自己のブログ等に掲載して不特定多数の者に閲覧に供したり、他者のダウンロードを可能としたりするような用途に供することを禁止する。

(4)(3)の趣旨を記載した確認書を事前に作成し、撮影前に署名を求める。

(5)撮影される映像には、対象となった図書館資料の収蔵する図書館名が明らかとなるように目印を付す。

(6)図書館資料にダメージを与えるような撮影方法を禁ずる。

(7)撮影枚数は、図書館資料1ページに1枚とし、図書館資料の半数のページを超えての撮影を認めない。

(8)デジタルカメラによる複製についても、料金を徴収する(13)。職員の立会い等のサービスを提供することとなるからである。

 

6. 結びにかえて

 時代の変遷により、図書館における図書館奉仕の内容も様変わりする。かつて図書館におけるサービスは閲覧のみという時代があり、やがて図書館資料の貸出を認めることとなり、更には機器を用いた複製をも取り入れることとなった。そして技術の進歩に伴い、複写方法も複製機器によるものから、デジタルカメラという一層容易で図書館資料にダメージを与えない方法が登場している。これに伴い、利用者からその方法の採用が求められるのは当然であり、その方法に適切に対応することが求められている。

 一方、著作権法は頻繁に改正されているものの、図書館における複製に関する現行規定が直ちに見直されるとも思えず、そうすると図書館職員は、他国の状況等も踏まえて、著作権者の利益と著作物の利用者との均衡を図りつつ、現行法の範囲内で工夫をして対応せざるを得ない。これが今回の本稿の結論である。

 

(1) 西崎恵. 図書館法. 日本図書館協会, 1970, p. 73.
伊藤昭治. 図書館法を読む. 日本図書館協会, 1990, p. 89.

(2) ただし、定期刊行物で、既に発行されてから相当の期間が経過した場合には、例外的に各著作物の全部の複写が認められている。

(3) “図書館の利用者から、自己が所有するハンディコピー機やデジタルカメラを持参して当館の図書資料を複製したいとの相談がありましたが、著作権の問題はありますか。”. 文化庁.
http://chosakuken.bunka.go.jp/naruhodo/answer.asp?Q_ID=0000521, (参照 2012-04-09).
図書館資料を図書館においてデジタルカメラ等を持ち込んで撮影しようとする場合に「著作権法上問題はないか」との問題設定において、図書館法第31条の関係にまったく言及していないのは、不親切というべきである。他の著作権法の抵触の可能性、すなわち、図書館における複写の問題である以上、第31条の適用可能性の有無まで説明しておくべきではないかと考える。

(4) “デジタルカメラや携帯電話を使って資料を撮影する利用者がいますが、図書館としてはどう対応したらいいのでしょうか?”. 公益社団法人著作権情報センター.
http://www.cric.or.jp/qa/cs03/cs03_10_qa.html, (参照 2012-05-18).
ここでも、この質問に対する著作権法第31条の適用可能性については、全く触れられていない。

(5) 日本図書館協会著作権問題委員会編. 図書館活動と著作権Q&A. 日本図書館協会, 2000, p. 24.
この見解は、利用者が図書館に無断で図書館資料をデジタルカメラ等により撮影した場合を想定していると思われるが、利用者からデジタルカメラによる撮影を申し込まれた場合の回答としても、妥当することになるのであろう。ただし、「著作権法上直ちに違法とは言い難いが、図書館管理運営規則により拒否すべき」とする法的根拠については、特に言及していない。

(6) 例えば、筆者が2012年1月に千葉県の情報公開制度に基づき提供を受けた「千葉県立図書館資料複写サービス取扱要綱」には次のような規定が置かれている。
(複写条件)
第3条 前条の規定する複写対象資料の複写条件は、著作権法第31条の規定により、利用者の求めに応じ、調査研究のために公表された著作物の一部(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物は、その全部)について1人につき1部とする。
(複写機器)
第4条 複写サービスに用いる機器は、図書館に設置する複写機器(マイクロリーダーの印刷機、CD‐ROM等電子出版資料の印刷機を含む。)とする。

(7) 千葉県立図書館では、2008年3月27日館長決定により、「千葉県立図書館複製機器持込みによる図書館資料の複製取扱要綱」を定めている。同要綱も筆者が2012年1月に千葉県の情報公開制度に基づき提供を受けたものである。当該要綱は、千葉県立図書館資料複写サービス取扱要綱第11条が複製機器持込みによる資料の複製を、「館長が別に定めるものを除き、原則認めない」としているとしているところ、その「館長が別に認める」ものである。当該要綱において対象としている図書館資料は和装本等(和漢古書)であって、図書館に設置してあるコピー機による複写を行った場合に、図書館資料にダメージを与える可能性が高いものについて、持込み機材による複写を認めようとする趣旨である。

(8) 国公立大学図書館協力委員会大学図書館著作権検討委員会. “大学図書館における著作権問題Q&A(第8版)”. 国立大学図書館協会. 2012-03-23.
http://www.janul.jp/j/documents/coop/copyrightQA_v8.pdf, (参照 2012-05-11).

(9) 当該回答では、併せて「著作権の権利者側からは、デジタルカメラによる撮影で、図書館の利用者が電子的な複製物を手にすることになり、高品質の複製物が大量に流通するとの懸念が示されている」とし、さらに「著作権法第31条に基づく複製との整合性との観点や館内における撮影により他の利用者が写ってしまうことを防ぐという観点、利用者が撮影することによる資料の破損・汚損を防ぐとの観点から、撮影を禁止している図書館もある。」として、撮影を禁止している図書館の事例も紹介している。
国公立大学図書館協力委員会大学図書館著作権検討委員会. “大学図書館における著作権問題Q&A(第8版)”. 国立大学図書館協会. 2012-03-23.
http://www.janul.jp/j/documents/coop/copyrightQA_v8.pdf, (参照 2012-05-11).

(10) 1976年9月に発表された著作権審議会第四小委員会(複写複製関係)報告書は、「公正利用」の範囲や態様が経済、社会、文化の発展段階に応じて変化していくものであることを踏まえつつも、その根底には著作権者の利益を不当に害する利用であってはならないという認識が存在すると明言し、「従って、法30条をはじめとする著作権の制限は、本来認められるべき著作権を制限するものであるという条文の性格上、厳格に解釈されなければならない」としている。
“第4小委員会(複写複製問題)報告書”. 公益社団法人著作権情報センター. 1976-09.
http://www.cric.or.jp/houkoku/s51_9/s51_9_main.html, (参照 2012-04-09).
一方、著作権法30条を制限的に解釈すべきでないとする見解も有力に主張されている。例えば、以下の資料が挙げられる。
中山信弘. 著作権法. 有斐閣, 2007, p. 241.
作花文雄. 詳解著作権法. 第4版, ぎょうせい, 2010, p. 308 -309.

(11) 船橋市西図書館蔵書廃棄事件における差戻判決において示された概念である。図書館は住民に対して思想、意見その他の種々の情報を含む図書館資料を提供してその教養を高めること等を目的とする「公的な場」であるとしている。
“平成17(ネ)3598損害賠償請求:平成17年11月24日東京高等裁判所東京地方裁判所”. 裁判所.
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/D9D8E1AF35673AB649257ED000D6.pdf, (参照 2012-04-09).

(12) Miller, Lisa et al., eds. “Capture and Release: Digital Camera in the Reading Room”. OCLC. 2010-02.
http://www.oclc.org/research/publications/library/2010/2010-05.pdf, (accessed 2012-05-18).

(13) 地方自治法227条に基づく手数料として条例に基づき徴収することとなる。

[受理 2012-05-18]


鑓水三千男. 図書館はデジタルカメラによる複写希望にどう対応すべきか. カレントアウェアネス. 2012, (312), CA1770, p. 8-12.
http://current.ndl.go.jp/ca1770