CA1287 – 図書館システムで失敗しないために / 酒井貴美子

カレントアウェアネス
No.243 1999.11.20


CA1287

図書館システムで失敗しないために

ふつう,家や車など大きな買い物をする時には,自分がなぜそれを買うのかわからないままに買うとか,セールスマンの言うことを鵜呑みにして買ったりすることはない。信頼できる情報を集め,実際に品物を見て,さらに他のものと様々に比較して,費用なども勘案した上で決めるだろう。

しかし,こうしたあたりまえのことが,図書館システムを購入する際には行われないことがある。つまり,自分が何をしたいのかよくわからないまま,なにか便利になるのではという気持で,システム会社の人(実はセールスマン)の言うままに,システムを購入してしまうといったケースである。もちろん,これは極端なケースであろうが,詳細な業務分析や他製品の比較検討をせずにシステムを導入してしまい,実務に活用できないどころか,維持管理に非常に手間がかかるはめになってしまった例や,システムの作成者の思惑と利用者の要望が合わずにほとんど利用されないシステムになってしまった例が,国内でも公表されている。

日本図書館協会が1994年に実施した調査では,システムを導入している図書館955館のうち,6割以上にあたる583館が何らかの不満を抱えている。その理由のトップは,処理速度の遅さであった。

図書館システムを買うのも,家や車を買うのも根本のところでは同じである。ただ,システムの場合,ある程度の専門知識がないと,機器などを含めて,果たしてその中の何が本当に必要なのか,不要なのか,とか,費用が妥当なのかを査定するのが難しいという点がある。

これを解決するためには,信頼できる情報を集めるほかない。カレツキー(Karetzky)による図書館システム選択の際のチェック・ポイントをまとめると次のようになる。

  1. システム製作会社をチェックする。図書館システムに関する実績・経験がどのくらいあるか,またどの程度のカスタマイズが可能か。
  2. 実際の利用館,それも自館と同種で,同規模のところに行って,どんな状況かを訊く。
  3. 様々な会社のシステムについて客観的な評価データを集める。デモディスク等はあくまでも販売促進用に作られていることに留意。
  4. それぞれのシステムについてライバル会社の意見を訊く。欠点等について正確に指摘してくれることが多い。
  5. 費用について,関連機器・維持費用等も含めて複数の会社に見積もりをさせる。システム自体は安くても維持費用がかなり高いこともある。また書誌データの遡及等も考えているならその費用も勘案しなければならない。

システムの選択の際に,コンサルタントを頼むということも考えられる。しかし,一般的なシステムについての専門的な知識はなくても,必要性を精査し,情報を集めることによって,自館にもっとも適合したシステムを選定することは可能であろう。

酒井 貴美子(さかいきみこ)

Ref: Karetzky, Stephen. Choosing an automated system: sorting out the real information from the misinformation and disinformation. Libr J 123 (11) 42-43, 1998
関谷宣子 機械化の夢のあと 情報の科学と技術 41 (7) 567-574, 1991
日本図書館協会情報管理委員会 公共図書館のコンピュータ利用調査報告書 1994. 3. 74p