カレントアウェアネス
No.243 1999.11.20
CA1289
システム・ライブラリアン
−求められる図書館員像の一つとして−
図書館界にコンピュータ技術が浸透し,各図書館では,統合システムが導入されたり,各種のネットワークを通じて業務を行うようになった。このような環境下で,「システム・ライブラリアン(Systems Librarian)」と呼ばれる職種への関心が,欧米を中心に高まっている。
システム・ライブラリアンという言葉が使われるようになったのは,図書館業務に機械が導入された時代ではなく,各部署で個別に行われていた業務が,図書館全体を覆う一つのシステムに統合されるようになってからである。この時期に,図書館システムを管理するため,非常に広範囲の知識を備えた人材が必要とされるようになった。
しかし,システム・ライブラリアンを育成するための整ったカリキュラムは未だない。今後の養成カリキュラム開発に資するため,システム・ライブラリアンに求められる職能の調査分析が行われている。
1996年から1997年の2年間に,American Libraries誌に掲載された求人案内を調査した結果,システム・ライブラリアンに対して133もの求人があった。これは,1990年から1994年の4年間の数107と比べて,非常に多い。そのうち学術図書館での求人が6割近くを占めているが,今後は公立図書館やその他の図書館でも増加が予想される。さらに,多くのシステム・ライブラリアンのポストでは,図書館学ないし図書館・情報学修士の資格が要求されており,これに加えてコンピュータや情報科学関連の学士ないし修士の資格をも同時に要求するものが1割以上あった。また,多くが,図書館あるいはシステム関連での勤務経験のある人材を求めている。
システム・ライブラリアンに任される責務は拡大傾向にある。図書館システムについては,その維持だけでなく,企画・開発・導入(購入)といった管理職務が重要視されている。また多くのポストでは,システム維持・テクニカルサポートのような純粋な技術関連の職務だけでなく,人事管理・人材育成の責務が課されている。133ポストのうち,管理職のポストも36存在しているが,それ以外の33ポストにも監督権限が委ねられていた。
このような責務を遂行するために必要な知識領域および技能について,今回の調査では次のような結果が得られている。まず図書館関連では,図書館システムについての知識が,必要とされる傾向が強い。その一方で他の図書館関連知識,例えば情報検索技術やカタロギング・ツールに関する知識は,あまり重要視されていない。またコンピュータ・ネットワーク関連の知識は,より重視される傾向が強いが,中でも,通信,OS関連の知識が求められている。しかしながら,プログラミング言語の知識は,必要性が低い。また,職務上,対人関係の責任が増しているにもかかわらず,コミュニケーションや対人技術は,要求程度がさほど高くなかった。
今回行われた調査は,求人案内の内容を分析することで,システム・ライブラリアン像を明らかにするものであった。図書館界で求められている人材を明確にし,それを今後の養成カリキュラムに反映させようとする試みは,今後も続くと予想される。
三輪 由美子(みわゆみこ)
Ref: Xu, Hong et al. What do employers expect?: the educating systems librarian research project 1. Electron Libr 17 (3) 171-179, 1999