CA1288 – 雑誌記事識別子(SICI)−ANSI/NISO Z39.56-1996の動向− / 菅野育子

カレントアウェアネス
No.243 1999.11.20


CA1288

雑誌記事識別子(SICI)
−ANSI/NISO Z39.56-1996の動向−

文献識別の目的から図書にはISBNが付与され,逐次刊行物にはISSNが付与されている。これらの番号付与の対象は物理的な単位を主としていたが,物理的な単位を越えて著作としてのまとまりを対象とした番号制度に関する規格が米国で制定されている。このANSI/NISO Z39.56(version 2)は,Serial Item and Contribution Identifier(SICI)というタイトルが示すとおり,逐次刊行物の各号(号全体,目次,索引等)や収録部分(記事全体,抄録等)を識別するために考えられた米国規格である。

具体的には,複数の識別子(identifier)をまとめたSICI codeを作成するための規程であり,その内容は1991年の第1版と比較すると,識別対象を各号と収録記事だけでなく,その部分である目次や抄録も含め,また逐次刊行物自体も冊子体だけでなく点字資料,マイクロ資料,電子雑誌にまで対象メディアを拡大した。

SICI codeの構成は,まず対象によって3つのCSI(Code Structure Identifier)のいずれかが決定される。逐次刊行物の各号にはCSI-1が与えられ,収録部分にはCSI-2が与えられる。さらに,そのいずれにも,構成部分の識別のためにDPI(Derivative Part Identifier)が付与される。例えば,号(issue)全体にはCSI-1を示す1に続けて,0を,抄録にはCSI-2(収録部分)を示す2に続けて3を付与する。なお,PII(Publisher Item Identifier:自然科学系の学協会や出版社で採用されている文献識別子)のような既成の識別子をそのままCSI-3として採用することもできる。さらに対象となった逐次刊行物のメディアの種類を識別するためにMFI(Medium Format Identifier)が決定される。冊子体はTX,点字資料はTB, CD-ROMはCD,電子雑誌はCO,録音資料はSC,ビデオ資料はVXなどとなっている。

実際のSICI codeは,雑誌記事の抄録部分の場合では(1)ISSN,(2)出版年月日,(3)巻号,(4)収録頁,(5)タイトルコード,(6)CSIの番号,(7)DPI,(8)MFI,(9)規格の版次,(10)検査文字から構成される。例えば,Journal of the American Society for Information Science誌の45巻10号(1994年12月発行)の737頁からはじまるC.A. Lynchの論文“The integrity of digital information”の抄録は,次のようになる。

SICI:0002-8231 (199412) 45:10< 737:TIODIM > 2.3.TX;2-M

識別を目的とする番号制度は,SICIだけでなく図書の収録部分を対象とするBICI(Book Item and Contribution Identifier)の提案にも拡がりをみせており,さらに楽曲という著作自体を識別するISWC-T(International Standard Work Code-Tune)も現在規格化の過程にある。また,あらゆる電子的な内容(Digital Object)を識別することを目的として現在ANSI/NISO Z39.84として規格化がすすめられているDOI(Digital Object Identifier)はこのSICIとの互換性を可能としている。このように,もともと物理的単位を主とした識別を指向してきた番号制度が電子化の影響を受けて,直接手にとることも読むこともできないものを識別することへと進んでいる。このANSI/NISO Z39.56は,その契機となったものの一つである。

愛知淑徳大学文学部:菅野 育子(すがのいくこ)