CA1203 – LCの新戦略計画 / 村山隆雄

カレントアウェアネス
No.228 1998.08.20


CA1203

LCの新戦略計画

1997年7月16日,米国議会図書館(LC)のビリントン館長と上級幹部は,300人の管理職者に対して,『戦略計画(1997-2004)』(以下,新戦略計画)の概要を述べた。1992年に発表された『戦略計画(1993-2000)』では電子図書館の計画,実験,実現が重点目標とされ,高い成果をあげた。今回の新戦略計画は1995年にビリントン館長が議会に提出して,1996年5月に承認を受けたものである。新戦略計画においても,LCの使命は,「その資源を議会と国民に対して利用できるようにし,役立つようにすること,および,知識と創造性の成果,普遍的なコレクションを将来の世代のために維持し,保存すること」であり,また21世紀に向けてのLCのビジョンは「国家の先頭に立って知識と情報へのアクセスを保障し,議会とその構成員の創造的な利用を促進すること」であると簡潔明快である。しかしながら過去のものとは異なり,新戦略計画は特定の作業努力と複数年度にわたる予算との結びつきが想定され,予算の執行や人員の配置等,限られた資源の効率的かつ効果的な配置に対して細心の注意が払われるようである。

新戦略計画では4つの優先項目が示され,それぞれに対して戦略目標が策定されている。第一優先項目は「議会に対して知識と創造性の成果を利用できるようにすること」であり,質の高い議会サービスを維持することと議会の信頼を獲得することに重点が置かれている。

第二優先項目は「議会と国民による現在および将来の利用にそなえて,米国の歴史と創造性の包括的な記録と人類の知識の普遍的なコレクションを収集し,組織化し,保存し,危険から守り,維持すること」である。この中では,コレクションを災害や盗難等の危険から守ることと滞貨の削減が図書館サービス部門の重点項目にあげられている。

第三優先項目は「議会・連邦政府・国民に対してコレクションへの最大限のアクセスを可能にすること」である。この戦略目標には国立電子図書館(NDL)プログラムを西暦2000年後も継続し,発展させることが含まれている。

第四優先項目は「LCの資源から生み出される創造的仕事と知的活動を支援するために,LCの基本的な資源に説明を加えたり,教育的な価値を加えること,および,国家の安寧と将来の発展にとってLCが重要であることを強調すること」である。この優先項目は,これまでに述べた優先項目の統合であると認識されており,外国語資料や特殊形態資料を含むLCの比類ないコレクションを利用した研究活動を促進するとともに,展示会・コンサート・出版物・会合などあらゆる機会を通じて,LCのことを良く知ってもらい,多様な資料の利用を促進することが目標である。LCは,西暦2000年に創設200周年を迎えるが,その記念行事の準備もLCに対する国民の幅広い支持を形成するための好機と捉えている(CA1190参照)のが印象的である。

戦略計画は通常定期的に改訂される。LCでも,戦略計画は「生きているドキュメント」として取り扱われ,NDLや議会調査局(CRS)や図書館サービス等,11のサービス・ユニットが目標達成に向けて活動しているか,その計画やプログラムや予算がLCの使命やビジョンや優先項目を支援しているかを確かめるために,四半期ごとに計画と予算の執行について評価がなされる予定である。そしてこの評価がまた,次の計画立案に反映していくというサイクルが考えられている。この評価を指揮するのは,6月30日付けで計画・管理・評価理事会長に就任したブライアント(T. Bryant)氏である。氏は1993年の退官まで,30年にわたり米国陸軍にいて,大学の軍事学の教官や総合参謀本部の将校,国防総省監察総監等を歴任,1994年からはオートメーション・リサーチ・システムズ社のプログラム・マネージャー兼運営部長の職にあった。こうした経験を買われて登用されたものである。

新戦略計画は段階的に策定されることになっており,ここで紹介したものは,そのうちの第一段階である。第一段階では今まで紹介してきたような,LCの使命,優先項目の他に,2004年におけるLCのあるべき姿が述べられている。

策定の第二段階は,これらの優先項目に対応して,サービス・ユニットごとに具体的な行動計画を盛り込んだ,ミニ戦略計画を策定する予定である。

この計画に描かれた2004年のあるべき姿を,今後LCがどのように実現していくか,注目されるところである。

村山 隆雄(むらやまたかお)

Ref: Library of Congress Strategic Plan (1997-2004). Library of Congress, 1997
世界の国立図書館の将来計画 国立国会図書館月報(400/401)2-29,1994
世界の国立図書館の将来構想と電子図書館への挑戦 国立国会図書館月報(431)2-21,1997
A ‘Living Document’. LC Inf Bull 56 (3) 264-265, 1997