カレントアウェアネス
No.223 1998.03.20
CA1179
クイーンズ図書館と世界を結ぶWorldLinQ
ニューヨーク市のクイーンズ公共図書館(Queens Borough Public Library)は,クイーンズ区の196万の人々をサービス対象とする図書館で,本館と62の分館を持ち,900万点の蔵書および1,500万冊の年間貸出冊数を誇る米国屈指の大図書館である。同館では現在3ヶ年計画でWorldLinQというプロジェクトを進めている。
AT&T社の資金援助のもとにすすめられているこの計画は,40か国語にも及ぶ膨大な外国語の蔵書を持つ同館がそれらに対する電子的アクセス手段をウェブ上で提供しようというものである。と同時に,WorldLinQという名が示すとおり,世界各地の良質なサイトへのリンク集にもなる。
WorldLinQのシステム構築は4段階に分かれている。第1段階では外国語蔵書の案内やリンク集をまとめたウェブサイトを,中国語,朝鮮語,スペイン語のいずれかと英語の2か国語で提供する。第2段階としては,各文字およびそのローマ字への翻字で検索可能なウェブサイトの索引を作成するほか,新しくロシア語のサイトを加える。ついで,移民を主な対象とする,ウェブ上での多言語による読者相談サービスの開始とCJK(中国・日本・韓国)文字でのCJK書誌データベースのOPAC開発が第3段階にあたる。最後に,アジアビジネス情報センターとラテンアメリカ学習センターを含むウェブによる電子的レファレンスセンターの設立をもってシステムは完成する。システムが完成した暁にはWorldLinQは世界中の主な言語をカバーし,ウェブを通じて同館の蔵書,コミュニティ情報および他のウェブサイトへの無料でのアクセスを可能にするはずである。
ところで,ひとくちに多言語での提供といっても,欧米の普通のコンピュータは漢字などの非ローマ字を表示することが出来ない。同じ漢字であっても中国語と日本語の文字コードが違うために日本のコンピュータで中国語を表示しようとすると文字化けしてしまう。この問題を解消するために同館は資金の一部をDRA社とのCJK文字表示ソフトウェアの共同開発に充てた。今のところ何らかのCJKソフトがないとCJK文字の表示は不可能だが,近いうちにCJK文字をすべて画像として提供していく予定であり,そうすれば特殊なソフトはもはや不要となる。
現時点ではWorldLinQは第2段階にさしかかり,同時並行でOPACでのCJK書誌検索システムのデモンストレーションを行っているところのようである。中国語の蔵書案内でドラえもんが「ニイハオ」と言っているのはご愛嬌だろう。
現システムではUCS(統一文字コードの国際規格)への対応については触れられていないので将来的には手直しを迫られる可能性もあろうが,非ローマ字へのいち早い対応は評価すべきである。また,こうした計画の中に先駆者としての米国の気概を感ずるとともに,ニューヨークが英語を母国語としない人々を多く抱えた人種のるつぼであって,このような計画が生まれたのもいわば必然であるという事実に改めて気付かされるのである。
鎌倉 治子(かまくらはるこ)
Queens Library WorldLinQ