カレントアウェアネス
No.229 1998.09.20
CA1209
IFLA「ヴァウチャー計画」とOCLC,LC
−ILL料金決済の簡素化に向けての動き−
国際図書館連盟(IFLA)では,国際相互貸借(ILL)の決済を簡略化するための支払い手段として,1995年1月から「ヴァウチャー計画」を試行しており,今年の4月現在でアメリカ,カナダ,イギリス,オーストラリアなどを中心とした202の機関が参加している。
このヴァウチャー,すなわち相互貸借用クーポンは,1枚8ドルの固定レートで1ヴァウチャーと半ヴァウチャー(額面4ドル)の2種類があり,原則として1ヴァウチャーで1回の現物貸借,または15ページまでの複写を申し込むことができる。さらに,ヴァウチャー自体が無制限に繰り返し使用できるので,受付館が次の依頼時に再利用でき,受付の多い館はIFLAのオフィスで等価払い戻しを受けることもできるようになっている。
このヴァウチャーを,今年の1月からLCが文献提供サービスに対する支払い手段として導入した。これはヴァウチャー計画の立案当初から求められていたもので,OCLCが行っているILL料金決済システム(IFM)を用いてIFLAヴァウチャーによる相互貸借の料金決済を行うかたちをとっている。LCは1996年以来IFMによる相互貸借依頼を受け付けてきたが,今回の措置によりヴァウチャーによる相互貸借依頼に対しても対応できるようになり,LCの蔵書がより世界的に活用される道筋がつけられた。LCは依頼時に寄せられたヴァウチャーを年4回,定期的にIFLAに送付し,IFMのクレジットに振り替えている。
なお,日本国内においてはヴァウチャー計画自体に2館(大阪女子大学図書館・就実女子大学図書館)が参加しているが,全国的な拡大につながる動きは目立ってみられない。国立大学図書館協議会の専門委員会が1997年に海外とのILLにおける料金決済に関する検討報告を行い,その方法として1)国際返信切手券,2)IFLAヴァウチャー,3)ユネスコ・クーポン,4)第三者機関による預託金制度の4つを例示しているが,通貨単位の限定性による会計処理と国庫納入の困難や入手の不便性,参加国の偏り(特にユネスコ・クーポンの場合)などから,実現の可能性がある方法として預託金制度の創設を提言するにとどまっている。
樋山 憲彦(ひやまのりひこ)
Ref: IFLA Voucher Scheme. [http://www.nlc-bnc.ca/ifla/VI/2/p1/vouchers.htm](最終更新1996.1.5, last access 1998.7.18)
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