CA1135 – フランソワ・ミッテラン図書館のその後 / 高信麻

カレントアウェアネス
No.215 1997.07.20


CA1135

フランソワ・ミッテラン図書館のその後

開館して4ヶ月あまり,BNF新館フランソワ・ミッテラン図書館(BFM:CA1125参照)の閲覧室には人気がない。ラ・リベラシオン紙の4月29日付の記事によると,607席ある“芸術・文学”部門の閲覧室を利用している人は多いときでも60人ほどで,総体的に,オ・ド・ジャルダンの全ての部屋はすいている。

記事によれば,BNFの経営陣は一日に5,000人の利用者を見込んでいた。最も楽観的な見方としては,7,000人とも考えていた。4月末の時点で,日々図書館を利用する人の数は予約契約をしている人も含めて,1,200〜2,000人である。“大きな図書館は,利用者に慣れてもらうのに,ある程度時間がかかる”と,事務総長フィリップ・ベラヴァル(Philippe Belaval)氏は言う。“4ヶ月は,判断を下すのに十分な期間ではない”。

12月17日から3月31日までにBFMを訪れた人の数は75,000人,一日平均900人に満たない。経営陣は,大衆をひきつけるための宣伝キャンペーンの企画を準備中である。利用者のニーズを把握するべく研究も進められている。

BFMの設計者ドミニーク・ペロー氏は,都市計画の問題を引き合いに出す。この図書館は,首都パリから切り離されたような,古い荒れ地に建てられている。交通手段の問題もある。最寄りの地下鉄駅ケ・ド・ラ・ガールはかなり遠くにある。当局は,パリ−リヴ・ゴーシュ地区とマドレーヌ地区を結ぶ地下鉄メテオール線の開通を忍耐強く待っている。

また,温かみのない建物,その巨大な階段(河岸から見晴らし台にたどりつくまで50段)は,人を招き入れる雰囲気をもっていない。ただし入館が有料なので,他の図書館と利用者数を単純に比較することはできない。

新しい建物は,設備的にもそれほど満足のいくものではなく,セーヌ川から地下書庫に水が漏れているという報告もある。これは新館建設プロジェクトの最初期から問題になっていた。1月26日夜に起きた洪水で,一階部分(未開館)の科学雑誌とビデオフィルムが損害を受け,フランス文化相は建物全体の検査を命じた。

BNFは,その閲覧室と“全学識分野において知識の根本を象徴する”資料的基礎を掲げて,研究者のための図書館のイメージを守ろうとしている。そして,ベラヴァル氏は来館者増を,研究者用に確保されるレ・ド・ジャルダンのオープンに期待している。

高信 麻(たかのぶあさ)

Ref: La Liberation 1997. 4.29
Inf Manag Rep 11-12, 1997. 5