CA1125 – フランソワ・ミッテラン図書館開館 / 高信麻

カレントアウェアネス
No.213 1997.05.20


CA1125

フランソワ・ミッテラン図書館開館

フランスの国立図書館(BN)とフランス図書館(BDF)が合併して再出発したフランス国立図書館(BNF)が,1996年末,パリの13区トルビアックに新館を開館させた(CA1091参照)。名付けて「フランソワ・ミッテラン図書館」(BFM:la Bibliotheque Francois-Mitterrand)である。故前フランス大統領が,“全く新しいタイプの図書館”の構想を発表してから,8年の歳月が流れた。リシュリュー通りの旧館と合わせてBNFは,アメリカのLCに次いで世界で二番目に大きな図書館になった。

BFMの設計はドミニーク・ぺロー(Dominique Perrault)。中央の中庭部分(12,000m2)をくりぬいた形の基礎と,本をひろげた形の4つの塔(高さ80m)から成り立っている。セーヌ川の河岸から,入口のある見晴らし台(60,000m2)にたどりつくまでに,巨大な階段をのぼる。中庭のある基礎の部分は二層に分かれていて,上が一般利用者用の閲覧スペース(オ・ド・ジャルダン,Haut-de-jardinと呼ばれる),下が研究者用の閲覧スペース(レ・ド・ジャルダン,Rez-de-jardin)である。昨年12月17日にオープンしたのは,一般利用者用の閲覧スペースのほうである。

以下,オ・ド・ジャルダンを中心に,BFMの利用法と設備に限って簡単に紹介する。開館時間は,(火)から(土)の10:00〜19:00と(日)の12:00〜18:00となっている。18歳以上の全ての人と,バカロレア試験(大学入学試験)の資格保持者に開放されている。入館のチケットは,入口ホールのカウンターか,自動販売機で買う。利用料は1日20フラン。年間のカードは200フランで,学生等は100フラン。

オ・ド・ジャルダンには1,593の閲覧席があり,現在18万冊の開架資料が用意されている。将来的には,38万冊の図書,2,450タイトルの雑誌の開架コレクションを目指す。全ての分野でマイクロフォーム,デジタル化資料を参照できる。哲学・歴史・人文科学,法律・経済・政治学,新聞・ジャーナリズム,科学技術,文学・芸術,視聴覚,書誌検索サービスの各分野ごとの部屋に分かれており,全部で10の閲覧室がある。弱視の人のための拡大鏡がどの閲覧室にも備えられ,6つある防音のキャビネの中では付き添い者に音読してもらうことができる。

オ・ド・ジャルダンの資料は,一部を除き全てコピーすることができる。複写は40ページまで。A4版は1フラン,A3版は2フラン。

館内には,特約業者に託された書店(librairie boutique)とレストランが置かれている。レストランはセルフ・サービス。書店では,レファレンス資料や,マルチメディアの著作物,カタログなどの図書館出版物等が扱われる。

塔の一つには警察署が駐在し,公衆秩序,安全を所轄する。

ついでながら,レ・ド・ジャルダンでは,研究者のために2,000席が用意され,42万冊に達する開架資料を含めた所蔵資料の利用ができる計画である。オープンは1998年の予定。

フランソワ・ミッテラン図書館を含め,BNFの所蔵資料は1千万冊にのぼる。雑誌は35万タイトル,マイクロフィルム76,000巻,マイクロフィッシュ95万枚,デジタル化資料10万点,マルチメディア資料28,000点。デジタル化された静止画像30万点,音声資料90万5千点,ビデオ資料62,000点等である。

高信 麻(たかのぶあさ)

Ref: Le Monde 1996.12.17
Les 12 chantiers prioritaires. Trajectoire (12)2-7 1996
Tesniere, Valerie. La collection du Haut-de-Jardin. Trajectoire (12) 8-9 1996
The Daily Yomiuri 1996. 12. 22
フランソワ・ミッテラン図書館 フランス便り (81) 14-15 1997.4http://www.bnf.fr