カレントアウェアネス
No.227 1998.07.20
CA1199
BFMのその後とレ・ド・ジャルダン開館に向けての準備
先日日本の新聞でも紹介された,フランス国立図書館(BNF)の新館フランソワ・ミッテラン(BFM)には,現在一日平均3,000人から3,500人もの利用者が訪れている。1996年12月に開館した,BFMの一般利用者向けの閲覧室オ・ド・ジャルダンは,当初利用者も少なく,多難なスタートをきったが(CA1125,CA1135参照),1998年3月現在,多くの利用者で混雑している。その数は日曜日には4,000人から4,500人にもなる。BNF館長,ジャン=ピエール・アングレミー(Jean-Pierre Angremy)氏によると,理由の一つはジョルジュ=ポンピドゥー・センターのBPI(Bibliotheque publique d'information)の改修工事(1997年9月より)に関連している(BPIは隣接するブラントーム街の仮施設で開館)。また,学生の利用が増加してきたことも一因であるという。
さてこのBFMに,研究者向けの閲覧室レ・ド・ジャルダンが今秋10月8日オープンする。オープンに向けて今年3月から,10ヵ月にも及ぶ資料の移転作業が始まった。既に,最低限必要な40万冊がオ・ド・ジャルダンで一般の利用に供されているが,1,000万冊の図書,35万タイトルの雑誌等が,トルビアックに向かってセーヌ川を渡りつつある。これら貴重な図書館資料の引越には,2,500万フランから3,000万フランの費用がかけられる。
資料は,耐火,耐震,耐熱の手動式集密書架に収められ,中の気温は18度,相対湿度50%に保たれている。それらを運ぶトラックは,パリ警視庁との緊密な連絡のもと,あらゆる襲撃を避けるため覆面にされ,運行状況は衛星による監視システムで把握される。
作業を綿密に準備した,館長補佐のジャクリーヌ・サンソン(Jacqueline Sanson)氏の説明では,コレクションは最も利用の少ないもの(論文,判例など)から移転を始めている。次に中程度に利用されるもの,最後に最も利用の多いもの(フランス史など)を移す。そしてこの利用頻度の最も高い資料群を動かす間,8月30日から10月7日までの5週間のみ全館休館とする予定である。
資料と同様,リシュリュー通りの旧館の職員の内500人以上も新館へ移る。サンソン氏は,コレクションが行ってしまうのを見るのは寂しいと語る。が,この大規模な引越しはBNFにとって一段階にすぎない。さらに大切なのは,資料の大部分が抜けた後の旧館の再組織をどうするかである。旧館には,特別部門が残るが(30万点の手稿,1,500万点の版画と写真,100万点の音楽資料,50万点の貨幣,60万点の地図類),空いた空間には国立美術史研究所(L'Institut national d'histoire de l'art: INHA)を組織する計画である。いずれにせよ,今後,新旧両館の本当のまとまりを確かなものにしていかなければならないであろう。
高信 麻(たかのぶあさ)
Ref: Le Monde 1998.3.20
La Liberation 1998.3.19
Le Figaro 1997.12.20-21
Inf Manag Re 5, 1998.3
出版ニュース(1790)21,1998.1下
毎日新聞夕刊 1998.6.12
朝日新聞夕刊 1998.6.23