CA1012 – BNF,竣工する / 岸美雪

カレントアウェアネス
No.191 1995.07.20


CA1012

BNF,竣工する

ミシェル・ペロー氏の設計になる新フランス図書館(BNF)の竣工式が1995年3月30日に行われた。本が4冊半開きの形で置かれたのを型どった塔を4すみに配したBNF(CA908参照)は,ミッテラン大統領の在任期間中にあわせることもあって,建物本体の工事はわずか1年7カ月で完成した。

主要なデータは次のとおりである。敷地面積:7.5ha,中庭:12,000m2,塔:高さ80m,総面積:365,000m2,利用面積:168,000m2(うち書庫57,000m2,公共スペース55,000m2,事務スペース16,000m2),閲覧室面積:40,000m2

一般閲覧者用の地下1階の閲覧室(haut-de-jardin)では1,556席が予定され,38万冊を開架し,開館時には20万冊を用意するという。

研究者用には中庭を取り囲む地下2階の閲覧室に2,034席が設けられ,開架で48万冊が利用できる予定である。年間増加冊数は93,000冊を予想している。その外,紙以外のメディアでは,マイクロフィルム76,000点,マイクロフィッシュ95万点,電子化資料10万タイトル,マルチメディア資料28,000点,デジタル化された映像資料30万点,ビデオ62,000点,音盤905,000点を収蔵する予定。年間予算は,13億フラン(現BNは4億フラン)を予定している。

建物が完成した現在,図書館としての中身を完成するための事業が必要になっている。情報システムの完成,目録の機械化,端末で利用可能にするための資料の電子化などに18カ月を必要とするとされる。特に,1,200万冊の資料をBNからBNFへ移転するには,12〜18カ月かかるとされている。その他に,ベルサイユの分館から35万点の逐次刊行物と100万点の音響資料もBNFに移される予定である。このため,一般利用に公開されるのは,早くとも1997年の予定である。機械化の進捗状況によって定められる「運命の日」より6〜8カ月前に引っ越し準備が開始される。今年の秋にはその日が決められる事になっている。いずれにしても,こうした引っ越しに当たって,利用者の混乱は避けられない。BNFの開館の4週間前は,どの資料も見られないということになるだろう。BNFがオープンしても,旧BNに残っている資料は,トルビアック地区(新館)とリシュリュー街(旧館)を行ったり来たりすることになろう。

旧BNの合計660席をはるかに上回る座席を用意し,開かれた図書館をめざすBNFはどのような性格の図書館となるだろうか。

旧BNの1992年の利用者調査によれば,1992年の年間入館証発行数は,42,500枚で,入館者数は287,000人である。平均すると,一人当たり年間6〜7日の利用であるという。利用者をみると,大学で修士論文を準備している学生(26%),博士論文を準備している者(32%),学者・研究者(25%)と,これらの合計で80%を越える。このことからも,これまでのBNが巨大な大学図書館としての機能を果たしていることが伺える。また,専攻分野をみると,歴史(37%),美術史(20%),文学(22%),哲学(5%)と,人文科学系の利用者がめだっている。フランス国籍の利用者が73%を占めるが,フランス語を解する利用者は82%にのぼり,ほぼ100%がフランス語の知識をもっているという結果となっている。このようにフランス語に堪能で研究者的な利用者からさえ,目録の複雑さを嘆く声がよせられている。特に,カード目録がいくつもの「シマ」にわかれ,さらにそこに機械可読形の目録が加わっている。これらをBNFでどのように利用可能にするかも大きな課題である。BNFでは,1998年には,自館の700万件の目録,そして1,300万から1,400万件のフランスの総合目録の記載を利用することができるようになる予定である。

一方,旧BNに残るのは,1,500万点の版画,110万点の写真,コイン約57万点,地図約65万点,楽譜200万点,手縞本170点などとなる。リシュリュー地区は将来,美術関係の研究所の集合体となることが予定されており(CA839参照),ルーブル美術館図書室,高等芸術院図書室をはじめとして,美術館の図書館とその分野の大学の図書館とを統合することが想定されているが,大学と美術館の間の調整には,困難も予想されている。Michel Laclotte前ルーブル美術館館長は,この建物についての最終報告書をとりまとめたところである。

旧BNに見られる人文系研究者指向の図書館利用が,BNFの誕生によってどのように変化するのだろうか。また,その後のフランス図書館界の再編の動きもこれからが本番である。

岸 美雪(きしみゆき)

Ref: Liberation 1995. 3. 30
Le Monde 1995. 3. 28
Baudelot, Christian & Verry, Claire. Profession: lecteur? Resultats d'une enquete sur les lecteurs de la bibliotheque nationale. Bull. Bibl. France 39 (4) 8-17, 1994
“脅威”を“機会”へ:各国の国立図書館に見る戦略 国立国会図書館月報(400・401)3-23,1994