CA839 – 国立美術図書館に向けて / 佐藤典子

カレントアウェアネス
No.159 1992.11.20


CA839

国立美術図書館に向けて

「フランス図書館(Bibliotheque de France,以下BDF)」の建設をめぐる論議で,このプロジェクトにおけるもう一つの進展の重要性は影に隠れがちである。すなわち,リシュリュー通りにある国立図書館(Bibliotheque Nationale,以下BN)の旧施設は,新しく「国立美術図書館(Bibliotheque Nationale des Arts)」と変わることが1990年の初めに発表された。この美術図書館は,BNの版画・写真部,美術・考古学図書館,ルーブル・国立美術館中央図書館および国立高等美術学校図書館が所蔵する資料を統合して新たに発足するものである。この計画をめぐり,1991年12月にフランス図書館員協会(Association des Bibliothecaires Francais)専門図書館部会の主催による会議がパリで開かれた。以下は,5項目にわたる未来の国立美術図書館についての討議の内容である。

計画と日程 予定された1995年までに,それぞれ数十万点にものぼる複数の大規模なコレクションの移転・統合の準備を終えなければならないために,様々な困難が生じている。例えば,資料の保存や人事が問題となっている。現在の所属機関との関係やBDFとの関係も決まっていない。

資料の収集範囲 最も困難な仕事は,収集対象となる「美術」の範囲を定義して,収集すべき個々の特殊なコレクションを決めることである。考古学,建築のような伝統的な美術概念の領域を越える分野を含め,一方,他の芸術分野を含めていないことに疑問の声も上がっている。

コレクションの多様性 彫刻,絵画,建築模型といった資料の類は,印刷物とは異なり,各々多様な取扱いとアクセス手段とを必要とするであろう。また,現在の所属機関の内部文書も美術史にとって重要であり,どう対応するか注目される。

アクセスとサービス プロジェクトが完了した場合,分散した資料が単一の機関に集められることから,アクセスとサービスの改善が期待される。すべての人に平等なアクセスを保証する必要はないが,現在よりも利用対象の制限が厳しくなるのではないか,との懸念が一部にある。

オートメーション 数世紀に渡ってばらばらに維持されてきた目録を統一することは大変な難問であり,自動化によってのみ可能であろう。予算的に困難は残るが,機械化はプロジェクトの核である。また,映像技術やファックス等の通信技術を駆使した遠隔利用も,実現が期待される。

佐藤典子(さとうのりこ)

Ref: Mckee, Chergl Spiese. Toward a Bibliotheque Nationale des Arts. Coll Res Libr News 53 (4) 247-248, 1992