カレントアウェアネス
No.193 1995.09.20
CA1024
GII電子図書館プロジェクト−第1回運営委員会開催−
CA996にて紹介した標記プロジェクトの最初の運営委員会が去る5月29日,フランス国立図書館において開かれた。これは,我が国と共に幹事国となっているフランスがホストとなって開いたものである。
G7からは日本,フランス,ドイツ,カナダ,アメリカ,イタリア,EC(European Commission)が出席し,英国は欠席した。その他としては,スイス,スペインが参加。各国とも国立図書館からの出席者が多く,文化省からだけの参加はイタリアとスペインであった(注)。
会議の概要は以下のとおり。
1. 各国からの現行電子化プロジェクトの紹介
2. 今後のプロジェクトの進め方についての意見交換
1) 技術的問題の取扱について2) 著作権の取扱について
3) 参加国の範囲
4) プロジェクトの具体化について
この結果,了解された事項は以下のとおり。
1) 参加を希望する国は可能な限り受け入れる。2) フランスはWWWサーバを用意し,プロジェクトの政策と成果に関する情報を提供する。
3) 電子化資料の目録情報データベースを作成する。
4) 当面は著作権使用料に係わる決済処理の不要な資料を対象とする。
5) 議題を提案したり,法律的,技術的課題,電子化コレクションの内容に係わる作業部会を設置するための常設事務局を日・仏で構成する。
国立図書館からの参加が多かった各国の代表には,総じて次のような意識が強いように見受けられた。すなわち,現在得られる技術を用い,著作権処理の不要な資料(public domain)を中心に,実際に各国の国立図書館同士を繋げて電子化資料の情報の共有化を図って行きたいというものである。それに対して,日本の通産省の主張するところは,現在のインターネットを用いた技術レベルでは,言語,回線容量,マルチメディア等に十分対応できないとして,電子図書館の標準化技術の開発,ネットワークによる接続実験等の事業の実施が不可欠,というものである。この意見にはアメリカ代表も賛成の意見を述べておられたが,要は,コンテンツも技術も車の両輪だと言うことである。
国立国会図書館としては,このプロジェクトがまず各国の国立図書館をネットワークで繋いで行くという計画であることから,日本の省庁の代表と共に今後も会議に参加し,計画の推進に協力していく方針である。
具体的には,国内においては電子化の基盤を充実する。電子化入力・蓄積・提供の標準化を図ると共に,所蔵資料の電子化とその世界的提供体制の整備を図っていく。平行して国際的に資料を提供していく上で言語の扱いの方法を提示していくことになろう。母国語の尊重というのはこの事業の中でうたわれていることではあるが,実際に流通を図る上では生易しいことではない。
国立国会図書館は,この情報化社会の中で国内においても国際社会においても,国を代表する図書館として情報発信の中核を担っていくべきであり,現在,館内で検討が進められている関西館(仮称)システムもこれに十分に応えるよう構築される予定である。
植月献二(うえつきけんじ)
(注) 幹事国であるフランスからは,文化省,国立図書館から総勢10名。同じ幹事国である日本からは,外務省,通産省,文部省,郵政省,学術情報センター,情報処理振興事業協会,国立国会図書館等から総勢9名であった。他の参加国からの参加は各1名で,イタリアとスペインを除き国立図書館からの出席者であった。