CA1025 – インターネット資源の目録作成 / 飯倉忍

カレントアウェアネス
No.193 1995.09.20


CA1025

インターネット資源の目録作成

インターネット上にある莫大な電子情報資源は,図書館にとっても重要なものになりつつある。このインターネット資源を図書館が有効活用するためには,何処に,どのような情報があるのかを素早く知る必要がある。しかし,そういった便利な仕組みはほとんどなく,図書館にとっては使い勝手の良い環境にあるとは言い難いのが実情である。

そこで,幾つかの機関がこのインターネット資源の目録をとってみる,という実験を行った。以下にその実験のうちの2つを紹介し,この実験から明らかになった問題点や課題を考えてみることにする。

一つ目は,OCLCが行った実験である。これは米国教育省の補助金により,USMARCフォーマットの維持や変更に対して責任を負っている,書誌情報の機械可読形式に関する委員会(Committee on the Machine-Readable Form of Bibliographic Information(MARBI))やLCの指導のもとに1992年から行われたものである。この実験では,インターネット資源の目録化に際して,目録規則は,英米目録規則第2版改訂版(AACR2R)が,記録様式として,USMARCフォーマットがそれぞれ使用された。

もう一つは,Rice大学での例である。1993年にシャピロ(Beth Shapiro)の発案に基づいて同様の実験が行われた。こちらは2つの大学内部で作成された電子テキストと,10のいわゆるグーテンベルグ計画(用語解説T1参照)によって作成されたものとの併せて12のインターネット資源を選び,それらの目録を作成するという実験であった。

これらの実験から,まず既存の目録規則やMARCではインターネット資源の目録化はかなり難しいということがはっきりした。実際OCLCの実験の後,目録規則の中のComputer-fileの記述規則の変更や,USMARCフォーマットの特に所蔵に関する部分(field 856)のタグの追加などの提言がなされている。

次に電子的な環境下での目録対象資源の不安定さである。そもそも電子的情報資源は内容の変更や追加削除などが簡単に行えるという特徴がある。いままでの目録は大雑把な言い方をすれば記録をしたうつわを目録記述の対象にしていた。そこでは内容の変更はうつわの変更とほぼイコールなのである。しかし,電子的情報資源では必ずしもこの関係にはならない。さらに変更の内容に対しての責任(Responsibility)の所在がはっきりしないことも多い。内容の変更をどのように目録として記録していくのか,うまい解決方法はない。

Rice大学での実験でもこの部分は問題となった。グーテンベルグ計画の電子テキストを使用したのも,おそらくは内容の変更が起こりにくいと判断したからではないかと思われる。

さらに物理的に存在しないものなので,図書館側で所蔵し,請求記号をつけ,書架に排列するというわけにもいかない。したがって,利用者が自由に手にとって見てみるというようなものでもないので,どのように利用させるかという問題も解決はしていない。

内容的にも頻繁に変更され,かつその頻度も不明,また物理的に存在するものでもなく,図書館が個々に所蔵するものでもないこのような電子的情報資源を目録作成の対象とすることは無意味,とはいえるだろう。しかし,だから何もしないのではなく,逆にどのような目録の在り方があるのかを考えることの方が大切ではないだろうか。

人類の記録がどのように文書化され,保存され,アクセスされるかということに対して,これからの電子時代はどのようになるのか,ということをもっと図書館人は考えていく必要がある。伝統的な今までのサービスを維持しつつも,新しい電子図書館の下での利用者サービスの在り方を考えることの必要性を認識しなくてはならない。

今までは大抵の場合,コンピュータシステムやソフトウェアの開発の現場に図書館員は存在していなかった。しかしこれからはコンピュータスタッフと共同して図書館員の専門的な技術や知識を駆使できるようなシステムやソフトの開発を行うことも必要になるであろうし,電子図書館の使命としても目録化の可能な電子的情報資源の形式を考えなくてはならない。

日本でも電子図書館という言葉がよく使われるようになってはきたが,その中身は,と見るとどうもフルテキストデータベースだのハイパーテキストだのと情報資源の個々の内容にかかる小規模なテクニカルの段階に留まっているような気がする。しかし必要なのは,それらをどう利用者にスムーズに提供できるかということの方ではないだろうか。

飯倉 忍(いいくらしのぶ)

Ref: Flannery, Melinda Reagor. Cataloging Internet resources. Bull Med Libr Assoc 83 (2) 211-215, 1995