3. 2. レファレンスサービスと文献提供

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3. 2. レファレンスサービスと文献提供

 

3. 2. 1. レファレンスサービス

 一般利用者に対するレファレンスサービスは、参考レファレンス部に属する総合レファレンス組、社会科学レファレンス組、科学技術レファレンス組の3組によって行われている(6)

 

(1) 総合レファレンス

 総合レファレンス組は、総合レファレンスカウンターで来館利用者の振り分けや簡単なレファレンスを行うほか、電話レファレンスや、インターネットを通じたバーチャル・レファレンスを担当している。

 バーチャル・レファレンスは、2006年末から提供を開始した比較的新しいサービスで、平日の午前9~11時、午後2~4時の間に、職員2名が常駐して、オンラインで利用者からの質問に回答している。質問形式は2種類あり、1つはチャット形式、もう1つは質問票形式である。チャット形式で寄せられる質問は1日平均30~40件で、検索の方法や資料の利用方法に関する問い合わせが多い。質問票形式は1日10件程度である。

 

図3.4 バーチャル・レファレンス

図3.4 バーチャル・レファレンス

 

図3.5 チャット形式

図3.5 チャット形式

 

(2) 人文社会科学レファレンス

 社会科学レファレンス組は人文社会科学分野のレファレンスを担当しており、職員は8名である。利用案内や文献の探し方など、簡単な質問に対しては、無料で回答している。また、有料での委託調査も行っており、主な調査内容としては、特定主題についての網羅的な文献調査、法律に関する文献調査、事柄・人物などについての事実調査、解題書誌の作成などが挙げられる。料金は担当する職員のレベルに基づいて算出される。事前に、調査に必要なレベルや時間を見積もった上で、依頼者と協議をして決定する。そのため、固定された料金体系は存在しないが、文献目録作成で300~500元、過去数年間の網羅的な研究論文調査で2,000~3,000元がおおよその目安である。

 

(3) 科学技術レファレンス

 科学技術レファレンス組は12名の職員からなり、うち9名が正職員、3名が退職後の再任用である。専門知識が必要とされるため人事異動は少なく、近年は再任用も多い。これは、上述の社会科学レファレンス組においても同様である。

 レファレンス調査についても、社会科学レファレンスと同様、簡単な調査以外は有料で行っている。主なものとしては、顧客が実施予定の研究プロジェクトについて、他に類似のプロジェクトが過去や海外で行われていないかを調査し、その研究の意義・効果・水準について評価を行って総合的な報告書を作成する「科技査新」や、論文の引用状況を調査する文献引用調査証明、科学技術分野における事実調査、技術面からのビジネス情報調査などが挙げられる。依頼受理数は年間5,000~6,000件である。

 なお、「科技査新」については、国家図書館のほか、中国科学院、中国科学技術信息研究所、北京大学図書館、清華大学図書館、上海図書館などでも同様のサービスを提供している。

 

3. 2. 2. 企業向けサービス

 企業向けサービスは企業サービス組が担当し、職員は33名(うち半数は非常勤職員)である。主な提供サービスは「クリッピング・サービス」、「メディア追跡調査」、「企業情報調査」、「新聞記念品サービス」の4種で、すべて有料で提供している。

 

(1) クリッピング・サービス

 1998年から開始したサービスである。常用顧客は約60で、科学研究機関、政府機関、企業など様々である。顧客の要求に応じて、特定の業界や商品などを対象に、全国各地の新聞・雑誌・インターネット情報を追跡して情報を収集する。毎日、毎週、毎月など期間を区切って、その期間内の関連情報を網羅的に調査し、原紙のコピーとともに、発行量、発行地域、抄録、版面形式、字数、面積、広告価値、抄録などの付加情報を加える(図3.6-3.8)。サービス開始当初は文字通り紙の新聞を切り貼りして提供していたが、最近では電子媒体での提供が主流となっている。従来どおり冊子体での提供も行っている。また、最新の情報のみならず、過去の報道を遡って収集・整理するサービスも行っている。

 

図3.6 冊子体の報告書

図3.6 冊子体の報告書

 

図3.7 左が付加情報、右が原紙のコピー

図3.7 左が付加情報、右が原紙のコピー

 

図3.8 付加情報

図3.8 付加情報

 

(2) メディア追跡調査

 新聞・雑誌・インターネット等で公開された、特定の業界に関する報道、ニュース原稿、記者会見資料、広報活動資料などを追跡・収集し、要求に応じて選別・整理・分析を行うサービスである。ネット上の情報を収集する際には、事前にキーワードを設定して、自動で当該キーワードを含む情報を採取したのち、職員が選別する方法を採っている。提供にあたっては、顧客向けの専用ポータルサイトを設け、顧客自らがログインして、依頼した情報をオンラインで入手することができる。常用顧客数は約100である。

 

(3) 企業情報調査

 顧客の指定する業界や競争相手企業の最新情報、統計データ、文献情報などを調査し、報告書を作成するサービスである。ブランド商品のキャッチ・コピーや広告の投入状況を調査して、広告価値の評価も行っている。調査対象は公開された情報に限られる。大企業は自社で調査部門を設置しているところが多いため、中小企業の利用者が比較的多い。

 

(4) 新聞記念品サービス

 誕生日や記念日などの新聞を選び、感光製版や水晶鍍金で記念品を作成するサービスである(図3.9)。

 

図3.9 北京オリンピックの記事を使った記念品

図3.9 北京オリンピックの記事を使った記念品

 

3. 2. 3. 文献提供センター

 文献提供センターは1997年に設置された。以前は典蔵閲覧部に属していたが、2007年末の機構改革の際に、参考レファレンス部に編入された。職員数は25名である。

 

(1) 図書館間貸出と遠隔複写

 年間の処理件数は、図書館間貸出が約1,000件、遠隔複写が3~4万件である。

 図書館間貸出は、事前に申請・登録を行った機関のみが対象である。貸出の対象となる資料は、中国語図書の基蔵本ならびに出版後3年が経過した外国語図書に限られる。遠隔複写は機関、個人のいずれも申し込むことができる。両サービスとも国家図書館の蔵書で応えられない場合は、国内外の他館の所蔵を調査し、代理で処理をするサービスも提供している。

 

(2) 料金体系

 図書館間貸出と遠隔複写はいずれも有料サービスで、図書館間貸出は、中国語図書が10元/冊、外国語資料が15元/冊で、梱包費と郵送料が含まれている。遠隔複写の料金は、以下の計算式で算出される。

 

(検索料金+複写料金+梱包費)×手数料130%+郵送料

 

 検索料金は、利用者の申込情報に不備があった場合に課されるもので、国家図書館の蔵書検索については2元/件、他機関の所蔵調査については10元/件が課金される。通常は申込を受け付けてから2~3日で処理されるが、当日中の処理を希望する場合は、括弧内の料金が2倍となる。合計が50元以下は後払い、50元以上は先払いとなっている。また、他機関への代理処理の場合は、さらに図3.10のⒶ郵送料とⒸ利用料を利用者が負担する。Ⓑ郵送料は国家図書館と他機関の間で相殺処理される。

 

図3.10 遠隔複写のフロー

図3.10 遠隔複写のフロー

 

(3) 申込方法

 「図書館間貸出及び文献提供システム」【馆际互借与文献传递系统】(7)で、インターネットを通じて申し込むことができる。

(前田直俊)

 

(6) 参考レファレンス部は、その他、利用者カード組、企業サービス組、文献提供組、複写組からなる。

(7) CALISで使われているシステムを国家図書館向けに改修したシステム。2009年に導入された。
“馆际互借网关登陆”. 中国国家图书馆. http://202.96.31.83/gateway/index.jsf, (参照 2010-09-02).