3. 1. 閲覧サービスと閲覧室

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3. 1. 閲覧サービスと閲覧室

 

3. 1. 1. 利用資格と利用手続き

 国家図書館は満16歳以上を利用対象としている。ただし、少年児童図書館の利用対象は満6~15歳である。

 週末の連休及び法定祝祭日には、中学・高校生、保護者同伴の小学生以下の子どもも館内見学ができる。小中高生の団体見学は常時可能である。

 閲覧室に入室するとき、サービスポイントでサービスを受けるときは、いずれも国家図書館利用者カードが必要となる。満16歳以上の中国国民は、第二代身分証(1)の提示により開架閲覧室での閲覧が可能である。少年児童図書館入館には少年児童図書館利用者カードが必要となる。利用者カード所持者は国家図書館資料利用規則その他関係規則を遵守しなければならない。また、高齢者や障害者には利用に際して優遇措置が講じられている。

 利用者カードの種類と機能、発行手続きは表3.1のとおりである。

 

表3.1 中国国家図書館利用者カード一覧

カードの種類カードの機能利用可能範囲申請条件発行手続き登録有効期限
利用者カード基本機能普通閲覧室(開架・閉架)閲覧機能普通閲覧室(開架・閉架)の閲覧満16歳以上の中国国民及び外国人有効な本人身分証明書(身分証、軍人証、パスポート、香港・マカオ通行証、台湾同胞帰郷証、戸籍簿)を持参し、「国家図書館利用者カード申請書」に記入すればその場で発行される。初回手続きは手数料不要。3年
少年児童図書館利用者カード開架閲覧室閲覧機能少年児童図書館満6~15歳の少年・児童有効な本人身分証明書(身分証、戸籍簿、パスポート、香港・マカオ通行証、台湾同胞帰郷証)、学籍カード、学生証を持参し、「国家図書館少年児童図書館利用者カード申請書」に記入すればその場で発行される。初回手続きは手数料不要。1年
第二代身分証開架閲覧室閲覧機能普通開架閲覧室での閲覧満16歳以上の中国国民第二代身分証を所持する本人が開架閲覧室に直接来室する。3年
利用者カードまたは第二代身分証拡張機能基蔵資料閲覧機能基蔵書庫所蔵の資料が閲覧できる。資料利用は当日のみ。貸出不可。満16歳以上の中国国民及び外国人利用者カードまたは第二代身分証を持参し、申請書に記入し保証金100元を納付する。貸出機能の手続きを行えば、本機能は自動的に付与される。3年
中国語図書貸出機能中国語図書貸出室所蔵図書3冊、附録ディスク3点の貸出が可能。満16歳以上の中国国民利用者カードまたは第二代身分証を持参し、申請書に記入し保証金100元を納付する。基蔵資料閲覧機能が自動的に付与される。3年
外国語図書貸出機能基蔵書庫所蔵の外国語図書3冊(出版後20年以上経過した図書を除く)、附録ディスク3点の貸出が可能。満16歳以上の中国国民利用者カードまたは第二代身分証を持参し、申請書に記入し保証金1,000元を納付する。基蔵資料閲覧機能が自動的に付与される。3年

出典:“办理借阅证”. 中国国家图书馆・中国国家数字图书馆.
http://www.nlc.gov.cn/service/dzzn_bljyz.htm, (参照 2010-09-02). に基づき作成。

 

3. 1. 2. 閲覧室とサービスポイント

 国家図書館は原則として1年365日、法定祝祭日を含め毎日開館している。開館時間は次のとおりである。

 

本館南区(一期館)月曜~日曜9:00~17:00
本館北区(二期館)月曜~金曜9:00~21:00
 土曜、日曜9:00~17:00
古籍館月曜~金曜9:00~17:00

 

 各閲覧室及びサービスポイントで提供される資料とサービスの内容、サービス時間、利用条件は表3.2のとおりである。

 

表3.2 中国国家図書館閲覧室・サービスポイント一覧

名称提供資料サービス項目利用資格・カード要件サービス時間
本館北区(二期館・国家デジタル図書館)
総合レファレンスカウンター 来館及び非来館(電話)総合案内、一般的なレファレンス、蔵書検索支援 月~日
9:00-17:00
利用者カード受付 利用者カードの発行、第二代身分証の閲覧・貸出機能付与、機能変更、登録更新、チャージ等 月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00(利用者カード機能の手続きは毎日
9:00-16:30)
目録検索区 OPAC検索、貸出延長手続き、閲覧予約等 月~日
9:00-17:00
中国語図書区面積約7,000m2、閲覧席728、休憩席50
最近刊行された中国語の人文・社会・自然科学図書及び附録CD-ROM、計約50万冊(点)
閲覧(図書は開架、CD-ROMは閉架)、電子資源サービス、所蔵資料に関するレファレンス、複写サービス、研究室サービス等国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
参考図書区面積約2,000m2、閲覧席656
四庫全書及び関連叢書(影印版)、古典籍叢書、中国語・外国語参考図書、計約4万冊
開架閲覧、所蔵資料に関するレファレンス、複写サービス等国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
名著区面積540m2、閲覧席64、休憩席10
著名な受賞図書、名著、影響力のある現代の叢書、各分野の古典的著作等、計約2万冊
閲覧(図書は開架、CD-ROMは閉架)、電子資源サービス、所蔵資料に関するレファレンス、複写サービス等国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
アート・デザイン資料区面積1,100m2、閲覧席100、休憩席66
アート、デザイン関係の最近の中国語図書と附録CD-ROM、約7万冊
閲覧(図書は開架、CD-ROMは閉架)、電子資源サービス、所蔵資料に関するレファレンス、複写サービス等国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
中国語新聞区最近2年分の国内主要新聞295紙、OPAC検索可能でマイクロ化・電子化されていない建国後の国内刊行中国語新聞原紙(香港・マカオ・台湾及び外国刊行の中国語新聞を除く)開架閲覧、電子資源サービス、所蔵資料のレファレンス、複写サービス等国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
中国語雑誌区最近3年分の国内刊行中国語雑誌約7,000種、OPAC検索可能な基蔵書庫収蔵の合冊製本済中国語雑誌開架閲覧、電子資源サービス、所蔵資料のレファレンス、複写サービス等国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
デジタル共有空間インターネット学習区、デジタル研究区、特殊サービス区、電子ビジネス区、インターネット交流区、メディアセンター等のデジタルサービス空間デジタル資源・インターネットサービス、マルチメディア・録音映像資源の視聴、携帯型電子書籍リーダーの提供、障害者サービス、情報リテラシー研修等国家図書館利用者カードで有料閲覧(1人1日1時間は無料)月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
学術活動区学術報告ホール(面積315m2、300人収容)、レクチャールーム4室、会議室3室各種会議、講座、研修  
セルフ複写コーナー1、2、4階に各1箇所セルフ複写サービス、複写代行サービス(対象:高齢者・障害者・妊婦)国家図書館利用者カード(磁気・ICカード)、第二代身分証月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
サービス受付 スキャニング、印刷、写真撮影、製本等 月~金
9:00-21:00
土日
9:00-17:00
少年児童図書館面積約650m2、閲覧席80
少年・児童用の図書・雑誌・新聞・マルチメディアディスク・デジタル資源、約2万2000冊
図書・雑誌・新聞の開架閲覧、ディスク類の閉架閲覧、デジタル資源サービス、読書指導等少年児童図書館利用者カード、
同伴保護者(1名のみ)は有効な身分証を提示する。
月~日
9:00-17:00
本館南区(一期館)
利用者カードサービス
利用者カード受付 利用者カードの発行、第二代身分証の閲覧・貸出機能付与、機能変更、登録更新、チャージ等 月~日
9:00-17:00
(利用者カード発行と保証金返還は月~日
9:00-16:30)
レファレンスサービス
総合レファレンスカウンター2階に2箇所、4階に1箇所来館及び非来館(電話)総合案内、一般的なレファレンス、蔵書検索支援 2階:月~日
9:00-17:00
4階:月~金
9:00-17:00
文献提供センター 文献提供、図書館間貸出、国際貸出 月~金
9:00-17:00
社会科学レファレンス室 口頭・電話・文書レファレンス、事実調査、ビジネス情報検索等 月~金
9:00-17:00
科学技術レファレンス室 口頭・電話・文書レファレンス、事実調査、科学技術最新情報調査、ビジネス情報検索等 月~金
9:00-17:00
企業情報サービスセンタ― 専用のサービスプラットフォームによる企業関係情報提供サービス 月~金
9:00-17:00
検索サービス
OPACサービスコーナー2階と4階に各1箇所OPAC検索、貸出延長手続き、閲覧予約等 2階:月~日
9:00-17:00(土曜は予約サービスなし)
4階:日~金
9:00-17:00(予約サービスは
9:00-16:00)
カード目録検索コーナー2000年以前の中国語図書、2003年以前の外国語図書、電子閲覧室資料、マイクロフィルム、中国語・外国語雑誌のカード目録等  月~日
9:00-17:00
参考図書閲覧室主要言語の百科事典、常用参考図書、辞書、伝記資料、書誌等開架閲覧国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~日
9:00-17:00
中国年鑑閲覧室中国(香港・マカオ・台湾を含む)の総合・分野別・統計年鑑(創刊号から最新号まで)閉架閲覧国家図書館利用者カード日~金
9:00-17:00
閲覧サービス:一般資料
台湾・香港・マカオ文献閲覧室台湾・香港・マカオ及び国外刊行の中国語図書・雑誌・新聞閉架閲覧国家図書館利用者カード(資料によっては紹介状が必要)日~金
9:00-17:00
日本出版物文庫閲覧室最近2年間に整理された日本出版物文庫図書及び附録CD-ROM開架閲覧国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-17:00
外国語文献第一閲覧室最近3年間に整理された欧文人文・社会科学類図書(法律・文学・芸術類を除く)及び附録CD-ROM閲覧国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~日
9:00-17:00
外国語文献第二閲覧室最近3年間に整理された科学技術類図書及び附録CD-ROM、最近2年の外国語新聞閲覧(外国語新聞は閉架)国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~日
9:00-17:00
外国語文献第三閲覧室最近3年間の欧文雑誌及び附録CD-ROM(法律類を除く)閲覧国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~日
9:00-17:00
外国語文献第四閲覧室最近3年間に整理された日・露語図書(法律・文学・芸術類を除く)、日・露・韓国・朝鮮語雑誌、日・露語索引誌及び附録CD-ROM開架閲覧国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~日
9:00-17:00
閲覧サービス:専門資料
学位論文閲覧室国内の博士・修士学位論文及びポスドク研究報告書、海外学位論文、計約30万冊閉架閲覧国家図書館利用者カード日~金
9:00-17:00
マイクロ文献閲覧室各種マイクロフィルム・マイクロフィッシュ閉架閲覧国家図書館利用者カード(資料によっては紹介状が必要)日~金
9:00-17:00
国際機関及び外国政府出版物閲覧室1949年以降の国連及び国連専門機関、国連関係機関、EU、OECD、ADB、CRS、RAND、GPO、カナダ政府等の出版物閲覧国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-17:00
貴重書閲覧室古典籍貴重書(マイクロフィルム・影印本を含む)、新貴重書、外国語貴重書、金石拓片、少数民族語古典籍、中外地図等閉架閲覧、カード目録・オンライン書誌検索、レファレンス、複写サービス国家図書館利用者カード(保証金100元を含む)
原本閲覧には紹介状が必要
月~金
9:00-16:45(12:00-13:00は出納休止)
敦煌トルファン文献閲覧室敦煌・トルファン学研究資料閉架閲覧、所蔵資料に関するレファレンス、複写サービス国家図書館利用者カード月~金
9:00-17:00
中国少数民族語文献閲覧室少数民族語の図書・雑誌・新聞開架閲覧、カード目録・オンライン書誌検索、レファレンス、複写サービス国家図書館利用者カード月~金
9:00-17:00
保存本閲覧室中国語保存本(=永久保存)図書、3年以前の保存本雑誌、3年以前の台湾・香港雑誌及び内部資料閉架閲覧(貸出本、閲覧本、基蔵本、電子化・マイクロ化資料のいずれも利用できない場合のみ閲覧可)国家図書館利用者カード(内部資料閲覧には紹介状が必要)日~金
9:00-17:00(資料出納は
9:00-12:00、13:00-16:30)
法律参考閲覧室2003年以降の中国語法律図書、最近3年間の中国語法律雑誌、1993年以降の欧文法律図書、最近3年間の欧文法律雑誌、2000年以降の日・露語法律図書、最近3年間の日・露語法律雑誌開架閲覧国家図書館利用者カード又は第二代身分証日~金
9:00-17:00
海外中国学文献研究センター1985年以降の欧文中国学図書、最近3年間の日・露語中国学図書、最近3年間の欧・日・露語中国学雑誌、国外中国学研究関係の中国語図書開架閲覧国家図書館利用者カード又は第二代身分証日~金
9:00-17:00
基蔵資料閲覧サービス
基蔵図書・雑誌出納台基蔵書庫所蔵の中国語・外国語図書及び外国語雑誌(中華人民共和国成立前の中国語図書・雑誌は含まない)閉架閲覧国家図書館利用者カード日~金
9:00-17:00
基蔵図書・雑誌閲覧室 基蔵図書・雑誌の閲覧国家図書館利用者カード日~金
9:00-17:00
基蔵外国語図書貸出出納台最近20年間の基蔵書庫所蔵の外国語図書館外貸出外国語資料貸出機能付き国家図書館利用者カード日~金
9:00-17:00
貸出サービス
中国語図書貸出室最近5年間の中国語図書(附録CD-ROMを含む)、約30万冊館外貸出中国語図書貸出機能付き国家図書館利用者カード又は第二代身分証月~日
9:00-17:00
24時間セルフ返却サービス南区東門に資料返却機を設置
厚さ6㎝、大きさ32㎝までの資料に対応
資料返却中国語図書貸出機能付き国家図書館利用者カード又は第二代身分証毎日24時間
その他のサービス
セルフ複写コーナー外国語文献第四閲覧室、海外中国学文献研究センター、国際機関及び外国政府出版物閲覧室に設置セルフ複写サービス、複写代行サービス(対象:高齢者・障害者・妊婦)国家図書館利用者カード(磁気・ICカード)、第二代身分証各閲覧室の開室時間
複写受付本館南区の利用者サービスエリア及び閲覧室複写、スキャニング、プリントアウト、マイクロフィルム引き伸ばし、写真撮影、製本、CD-ROM焼付 利用者サービスエリア:月~日
9:00-17:00
閲覧室:各閲覧室の開室時間
古籍館
利用者カード受付 利用者カード手続き 月~金
9:00-16:30
普通古籍閲覧室明・清・中華民国期の普通古典籍、中華人民共和国建国後に印刷された古典籍閉架閲覧、レファレンス、スキャニング、写真撮影、複写サービス国家図書館利用者カード(原本閲覧は修士課程在籍又は中級職称以上)月~金
9:00-17:00(資料出納は
9:00-12:00、13:00-16:30)
清史文献センター清史及び関連の大型史料叢書・研究書開架・閉架閲覧、複写サービス国家図書館利用者カード月~金
9:00-17:00(資料出納は
9:00-12:00、13:00-16:30)
地方志・家譜閲覧室1949年以前に編纂された地方志・家譜の原本閉架閲覧、レファレンス、複写サービス国家図書館利用者カード(原本閲覧は修士課程在籍又は中級職称以上)月~金
9:00-17:00(12:00-13:00は出納休止)
地方文献第一閲覧室1949年以降に編纂された全国各行政レベルの総合志、地方年鑑、地方志学研究参考書開架閲覧、レファレンス、複写サービス国家図書館利用者カード又は第二代身分証(16歳以上)月~金
9:00-17:00
地方文献第二閲覧室国内各業種志、地方政協文史資料、影印旧地方志、マイクロ化旧地方志、影印旧家譜、新家譜、関連参考書閉架閲覧、レファレンス、複写サービス国家図書館利用者カード月~金
9:00-17:00

出典:“读者指南 阅览室介绍”. 中国国家图书馆・中国国家数字图书馆.
http://www.nlc.gov.cn/service/ylsjs.htm, (参照 2010-09-02). に基づき作成。

 

3. 1. 3. 本館二期館(国家デジタル図書館)の閲覧サービスモデル(2)

 国家デジタル図書館として2008年9月9日に開館した本館二期館は、最新のIT技術を駆使し、次のような新たなサービスモデルを展開している。

  • 館内全域を無線LAN化し、利用者が館内のどこからでも個人の携帯PCを使ってインターネット接続できる。
  • デジタル資源を利用しやすいように、利用者用PCを約500台設置した。うち、デジタル共有空間に約250台、残りは他の区域に分散配置されている。
  • RFID(Radio Frequency Identification=無線自動識別)技術により、二期館閲覧エリアの資料の現在の排架位置情報がOPAC上で利用者に即座に提供される。
  • 来館利用者が電子図書・雑誌・新聞等を閲覧するのに便利なように、携帯型の電子書籍リーダーを提供し、館内に電子読書ステーションを設置している。
  • 視覚障害者サービス専用エリアが設置され、視覚障害者は画面読み上げソフト対応PCや、国家図書館と中国障害者連合会が共同で構築した「盲人デジタル図書館」によって、健常者と同様にデジタル情報資源へのアクセスが可能である。
  • バーチャルリアリティ技術により来館利用者にバーチャルナビゲーションサービスを提供し、同時にインターネット上で非来館利用者に館内バーチャルナビゲーションを提供している。
  • 国家デジタル図書館展示システムを通じて、ユーザーにデジタル図書館システムの利用方法の研修を行うと共に、国家デジタル図書館構築の成果を展示している。

 

3. 1. 4. 本館の閲覧サービス概況(3)

 本館二期館は地下3階、地上5階で、ガラス張りの建物である(4)。地下1階から地上4階までが閲覧スペースで、地下2~3階は書庫、地上5階は事務スペースとなっている。

 吹き抜けの中央閲覧室には国内外の参考図書(2階)、古典籍及び一次資料類の影印叢書(1階)、四庫全書関連の影印叢書(地下1階)が開架されている(図3.1)。また、地下1階には、ガラス張りの保存書庫を設けて、四大貴重蔵書(5)のうちの1つである『文津閣四庫全書』の原本を保存する(図3.2)。普段は幕が下ろされていて、内部の様子を窺うことはできないが、記念式典の際には、幕を上げてガラス越しに一般に披露される。

 さらに、中央閲覧室の周囲を取り囲むかたちで、地下1階から地上3階まで、回字型の閲覧室があり、最近5年間に出版された中国語図書約60万冊が開架されている。また、4階には逐次刊行物の閲覧室が設けられ、最新2年分の中国語雑誌7,000タイトル及び中国語新聞約300タイトルを開架している。

 中国語図書にはすべてRFIDタグが貼付されており、OAPCを検索すると資料が排架されている書架と段数が図で表示され、入口からの最短経路が画面上に表示される。そのほか、タッチパネル式の大型閲覧器を10台設置し、毎日クローラを用いて採取した電子版の新聞約200紙を閲覧提供している(図3.3)。

 

図3.1 本館二期館の中央閲覧室

図3.1 本館二期館の中央閲覧室

 

図3.2 文津閣四庫全書を収める保存書庫

図3.2 文津閣四庫全書を収める保存書庫

 

図3.3 タッチパネル式大型閲覧器

図3.3 タッチパネル式大型閲覧器

 

 4階のデジタル共有空間には約250台のPCが設置され、国内外の電子ジャーナル、データベース、電子書籍、視聴覚資料など約130種類以上のコンテンツが提供されている。インターネットも利用できる。利用者カードのID・パスワードを入力すれば、1時間は無料で利用できるが、1時間を越えて利用する場合には、事前に利用者カードに料金をデポジットしておかなければならない。利用料金は1時間当たり3元である。さらに、携帯型の電子書籍リーダーの貸与も行っており、これに閲覧用PCから電子資料をダウンロードして、館内の随意の場所で利用することもできる。また、新館内には無線LANが張り巡らされ、持ち込みのPCで館内LANにアクセスすることもできる。

 一方、本館一期館には、外国語資料、学位論文、古典籍資料など、専門性の高い資料を配置する。また、館外貸出用の閲覧室を設置し、最近3年間に出版された中国語図書を館外貸出している。国立図書館が館外貸出サービスを提供していることに関しては、中国では公共図書館の整備が十分でなく、国家図書館に対して公共図書館としての機能を求める声が根強いという事情がある。ただし、そうした要請に応える一方、限られた予算と人的資源のなかで、これらのサービスにどのくらいの力点を置くべきか、また今後も継続していくべきかについては、館内でも議論されているようである。実際、2007年末の機構改革に当たって、従来3つあった貸出閲覧室を2つに減らすなど、貸出サービスにかける比重を減少させている。ある幹部職員によると、国家図書館が提供している公共図書館の機能のうち、少なくとも館外貸出については、今後の公共図書館の整備状況や電子図書など代替メディアの進展具合を見ながら、さらに縮小する方向で調整していくつもりだという。

(岡村志嘉子、前田直俊)

 

(1) ICチップが埋め込まれた新式の身分証。

(2) 中国国家图书馆. 中国国家图书馆读者指南. 2009, p. 5.

(3) 2008年10月~2009年1月の前田の現地調査による。

(4) ドイツのKSPエンゲル・ツィンマーマン建築設計と華東建築設計研究院の合同設計。

(5) 『四庫全書』、『永楽大典』、『敦煌文書』、『趙城金蔵』の4つ。