4.5 SLA(専門図書館協会)の概要と最近の動向について

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アサヒビール株式会社 技術情報室(現アサヒビール株式会社 商品開発第二部)
藤澤 聡子(ふじさわ さとこ)

(1) 専門図書館協会(SLA)の概要

 専門図書館協会(Special Library Association: SLA)は1909年に設立され、2007年現在では北米を中心として世界80カ国以上、約12,000人の会員にサービスを行う非営利の国際組織である。会員は企業、教育機関、政府機関、非営利団体などの情報部門に所属する情報専門家(Information Professional、以下、インフォプロと略す)であり、それぞれの所属する母体(企業や組織)に対し、情報をマネジメントする役割を担っている人々である。その職種は図書館員に限らず、所属する組織のために情報を戦略的に利用するすべての専門家を指しており、ナレッジ管理者(knowledge managers)、情報管理者(chief information officers)、Web開発者(web developers)、情報ブローカー(information brokers)なども含まれている(図1-1参照)。

 これら会員の活動を支援するSLAの組織は59の支部(Chapter)、25の分科会(Division)、10のローカルミーティング(Caucus)からなっている。それぞれの分科会は化学、医学・薬学、法律、金融、ニュースなど主題分野別に分かれており、主題に特化した専門性の高い活動を行っている。

 SLAの使命は、会員であるインフォプロに対し、学習の機会を提供し、彼らを支援し、かつ相互のネットワークを促進・強化することである。そのため、年次大会を含む多くの学習プログラムが実施されており、いずれの学習プログラムも「実務家」として情報部門を管理・運営することを主軸としている。


図1-1 SLA会員の所属別割合

図1-1 SLA会員の所属別割合(1)
(本情報はSLAの好意により2006年データを転載する)

(2) 最近の動向

 2000年以降、ネットワーク環境の変化により、SLAの活動も様変わりしている。情報環境の変化に伴い、インフォプロに求められる役割やスキルも大きな変容し、またSLAが提供するサービスやプログラムもWebベースで提供されるなど、インフォプロ間のネットワークや相互援助をサポートする取り組みが実践されている。

 1) 21世紀に向かって求められるスペシャルライブラリアンの能力と資質

 SLA「専門図書館員の資質に関する特別委員会」では、1997年に“The Competencies for Information Professionals of the 21st Century”を発表し、2003年6月にその改定版を発表している。

 多くの企業や組織の情報部門は1~数名の少人数で運営されることが常であり、情報担当者は情報を扱うプロとしての役割に加え、情報部門のマネジメントまで責を負っている場合が多い。インフォプロとして必要とされる能力と資質について提言がなされ、それが数年で改定される背景には、インフォプロを取り巻く情報環境が著しく変化してきていることに他ならない。この情報環境の目まぐるしい変化を的確にキャッチし、母体組織への利益を最優先とするインフォプロの姿勢が強く打ち出されている。

 2) 学習プログラムの新たな取り組み

 SLAでは年次大会を毎年開催している。大会では実務者のためのトレーニングプログラムや就職斡旋など、通常の学会機能に教育・学習を加えた運営を行っており、毎年5,000~7,000人が参加している。SLAは2005年から新たな学習プログラムである“Click University”をWeb上に開設した(2)。この“Click University”はSLA会員の誰でもが、それぞれのレベルに応じて継続的に学習できる機会を提供することを目的としている。また、“Click U Live!”(旧名称:Virtual Learning Series)はSLA会員以外からも利用できる有料プログラムである。

 3) Task Forces for 2005-2006とその後

 前SLA会長であるロッロ(Pam Rollo)氏は新しい8つのタスクフォースを提案し、SLA会員の参加を呼びかけた。このタスクフォースはSLA本体、SLA会員および広義の意味でのインフォプロ全てにおいて、さらに革新的なインフォプロを目指したタスクフォースである。

 8つのタスクフォースはいずれもインフォプロの新しい価値の提案と専門性を高めるために、パートナーシップ、新ビジョン、支部構成のあり方などについて報告している。今後、これらの報告をもとに、(1) SLA新会員の強化、(2) 協力機関とのパートナーシップの強化、(3) 大学院との連携、(4) 会員の継続的な学習を支援するプログラム等の施策が展開される。



(1) Libby Trudell et al. “Introduction to SLA for Japanese Information Professionals”. 2006. http://www.imic.or.jp/news_topics/pdf/SLA061207/Libby-SLA.pdf, (accessed 2007-01-25).

(2) Special Library Association. “CLICK UNIVERSITY: an online learning community for the benefit of SLA members”. http://sla.learn.com/, (accessed 2007-01-25).

Ref:

国際医学情報センター. “SLA Meeting in Tokyo 開催報告”. http://www.imic.or.jp/news_topics/20061207sla_rp.html, (参照 2007-01-25).

Special Library Association. “Association Fact Sheet”. http://www.sla.org/content/SLA/pressroom/factsheet.cfm, (Accessed 2007-01-25).

[Special Library Association et al]. 21世紀に向かって求められるスペシャルライブラリアンの能力と資質:エグゼクティブサマリー. 片岡洋子訳. 専門図書館. 1997, (163), p.11-16.

[Special Library Association et al]. 特集, 人材育成:21世紀のインフォメーション・プロフェッショナルに求められる能力と資質<改訂版 2003年6月>翻訳, 栗田淳子訳. 専門図書館. 2003, (202), p.34-38.