4.1 ALA(アメリカ図書館協会)の動向

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獨協大学 経済学部  井上 靖代(いのうえ やすよ)

ALAの組織と活動概要

 ALAの財源は会費および財団などからの補助金や寄付金で構成され、連邦政府からの資金は受けない独立採算制を取っている。また個人会員が、部会(Division)やラウンドテーブルに所属する場合には別個に会費を支払うことになる。

 なお、アラバマ州、カンザス州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州には“Library Support Staff”会員制度があり、専門職ではない図書館員がALA会員になるための補助制度がある。

1) 理事会(Executive Board)

◆会長(president)、◆次期会長(兼副会長)(president-elect)、◆前会長(兼会長補佐)(immediate past president);各3年の任期

◆会計担当(treasurer);財政年度3年間の任期。現任者は2004—2007の任期

◆事務局長(executive director);1名。常勤職員で任期なし。

◆選出理事(elected council members);8名。任期3年。

※選出理事8名は以下をリエゾンとしてそれぞれ複数担当する。

ALAおよび評議員会直轄の委員会――

○会議/決裁担当、○プログラム・アドバイザリ担当、○会則/情報技術政策(OITP)局アドバイザリ/研究統計/会員会合担当、○資格認定/教育/政策モニター担当、○支部/人的資源の開発および採用(HRDR)アドバイザリ担当、○多様性/出版担当、○雑誌American Libraries /賞/知的自由/専門職倫理/公的意識/地方・ネイティブおよび部族図書館担当、○国際関係/会員/ウェブ担当、○選挙/法制化/リテラシー/リテラシーおよびアウトリーチ・サービス(OLOS)アドバイザリ/訓練・リーダーシップ担当

部会担当――

○図書館委員会・支持者部会(ALTA)/専門・企業図書館部会(ASCLA)/公共図書館部会(PLA)担当、○図書館管理・経営部会(LAMA)/ レファレンスおよび利用者サービス部会(RUSA)担当、○大学・研究図書館部会(ACRL)/図書館資料およびテクニカル・サービス部会(ALCTS)/図書館情報技術部会(LITA)担当、○学校図書館員部会(AASL)/児童図書館サービス部会(ALSC)/ヤングアダルト図書館サービス部会(YALSA)担当

ラウンドテーブル担当――

ラウンドテーブル協議会担当

外部機関との連絡担当――

○読書の自由財団(Freedom to Read Foundation)担当、○州図書館振興機関(State Library Agencies)担当、○都市図書館評議員会(Urban Libraries Council)担当、○研究図書館協会(Association of Research Libraries)担当、○未来のための図書館(Libraries for the Future)担当、○展示会出展者(exhibitors)担当

2) 評議員会(Council)

 議決組織。会員から選出される評議員の最大100人までで構成される。その他の構成員は

   • 理事会メンバー(会長、副会長、会計、事務局長を含む)。

   • 各部会(division)は1名の評議員を選出参加させることができる。

   • 各州・地域支部(chapter)は1名の評議員を参加させることができる。

   • 政府情報ラウンドテーブル、知的自由ラウンドテーブル、図書館教育ラウンドテーブル、社会的責任ラウンドテーブル、新会員ラウンドテーブルはそれぞれ1名の評議員を参加させることができる。そのほかのラウンドテーブルは共同で評議員を選出できる。

 なお、評議員会には委員会がおかれる。

3) 部会(Division)

 図書館の館種別団体や職種別団体の専門別に11の団体がある。ALAと関係をもちながら、別個に結成したのちにALAに加入した団体もあり、かなり独立性の高い部会(協会)集団といってよく、ALAは入れ子型の組織となっている。それぞれ「―協会」と訳されることも多い。

 各部会は評議員会と総会に代表を参加させている。議決権を有する。

     ・学校図書館員部会

      (American Association of School Librarians:AASL)

     ・図書館資料およびテクニカル・サービス部会

      (Association for Library Collections & Technical Services:ALCTS)

     ・児童図書館サービス部会

      (Association for Library Service to Children:ALSC)

     ・図書館委員会・支持者部会

      (Association for Library Trustees and Advocates:ALTA)

     ・大学・研究図書館部会

      (Association of College and Research Libraries:ACRL)

     ・専門・企業図書館部会

      (Association of Specialized and Cooperative Library Agencies:ASCLA)

     ・図書館管理・経営部会

      (Library Administration and Management Association:LAMA)

     ・図書館情報技術部会

      (Library and Information Technology Association:LITA)

     ・公共図書館部会

      (Public Library Association:PLA)

     ・レファレンスおよび利用者サービス部会

      (Reference and User Services Association:RUSA)

     ・ヤングアダルト図書館サービス部会

      (Young Adult Library Services Association:YALSA)

4) 委員会(Committee)

 ALA直轄、または評議員会(council)直轄の委員会として、

     ・常任委員会(standing committee)

がある。常任委員会にはまとまった金額の予算がつき、事務局から職員が派遣される。

 またこのほかに、以下の委員会がある。

     ・特別委員会(special committee)

     ・部会調整委員会(interdivisional committee)

     ・合同委員会(joint committee)

     ・臨時委員会(ad hoc committee)

 また下部組織として小委員会(subcommittee)やタスク・フォース(task force)などがおかれていることも多い。下記にいくつか例示しておいたが、実際はもっと多くの下部組織がある。

 各部会(division)やラウンドテーブルでも委員会を設置し活動している。またワーキング・グループ(working group)が部会やラウンドテーブルの実務を担当していることもある。

 ALA直轄の委員会の委員は、任命委員会(Committee on Appointments)のアドバイスに基づき、任命委員会の委員長であるALA副会長によって任命される。ALA直轄の委員会には、以下のものがある。

     ・認定(Accreditation)(常任)

     ・雑誌 American Libraries アドバイザリ(American Libraries Advisory)(常任)

     ・任命(Appointment)(常任)

     ・賞(Awards)(常任)

     ・支部関係(Chapter Relations)(常任)

     ・会議(Conference)(常任)

     ・会則(Constitution and Bylaws)(常任)

     ・選挙(Election)(常任)

     ・人的資源の開発および採用アドバイザリ事務局(Office for Human Resource Development and Recruitment Advisory)(常任)

     ・情報技術政策アドバイザリ事務局(Office for Information Technology Policy Advisory)(常任)

          →下部組織として著作権アドバイザリ(Copyright Advisory)小委員会、 E-Rateタスクフォースがある。

     ・リテラシー(Literacy)(常任)

     ・リテラシーおよびアウトリーチ・サービスアドバイザリ事務局(Office for Literacy and Outreach Services Advisory)(常任)

         →下部組織としてアメリカン・インディアンへの図書館サービス(Library Services to American Indians)小委員会、貧困層・ホームレスの人々への図書館サービス(Library Services to Poor and Homeless People)小委員会がある。

     ・会員(Membership)(常任)

        →下部組織として機関会員便益(Corporate Member Benefits)タスクフォース、会費制度(Dues Structure)タスクフォース、インターンシップ・プログラム(Internship Program)小委員会、図書館サポートスタッフマーケティング(Library Support Staff marketing)タスクフォース、会勢拡大(Membership promotion)タスクフォースがある。

     ・会員会議(Membership Meetings)

     ・指名委員会(Nominating Committee)

     ・オリエンテーション、訓練とリーダーシップの開発(Orientation, Training and Leadership Development)

     ・公的・文化的プログラムアドバイザリ(Public and Cultural Programs Advisory)(常任)

     ・研究と統計(Research and Statistics)(常任)

     ・ラウンドテーブル調整(Round Table Coordinating Assembly)

     ・地方・ネイティブおよび部族図書館(Rural, Native and Tribal Libraries of All Kinds)

     ・奨学金および研究補助金(Scholarship and Study Grants)

     ・ウェブサイト・アドバイザリ(Website Advisory)

 評議員会直轄の委員会の委員は、ALAの副会長と協議のうえ、評議員会の「委員会に関する委員会(Committee on Committees)」によって任命される。ALA副会長は「委員会に関する委員会」の委員長であり、各委員会の委員長を任命する。評議員会直轄の委員会には、以下のものがある。

     ・財政分析と評価(Budget Analysis and Review)(常任)

     ・委員会に関する委員会(Committee on Committees)

     ・評議員会オリエンテーション(Council Orientation)(常任)

     ・多様性(Diversity)(常任)

     ・教育(Education)(常任)

     ・知的自由(Intellectual Freedom)(常任)

          →下部組織として、メディアの集中が図書館に与える影響(Impact on Media Concentration on Libraries)小委員会やプライバシー(Privacy)小委員会がある。

     ・国際関係(International Relations)(常任)

         →下部組織として小委員会が多数あり。

     ・法制化(Legislation)(常任)

        →下部組織として、政府情報(Government Information)(臨時小委員会)、知的財産権(Intellectual Property)(臨時小委員会)、立法議会(Legislation Assembly)(小委員会)、プライバシー(Privacy)(臨時タスクフォース)などがある。

     ・組織(Organization)(常任)

     ・給与支払いの平等性(Pay Equity)(常任)

     ・政策モニター(Policy Monitoring)(常任)

     ・専門職倫理(Professional Ethics)(常任)

     ・パブリック・アウェアネス(Public Awareness)(常任)

        →下部組織として、アドヴォカシー(Advocacy Assembly)(小委員会)、アメリカの図書館のためのキャンペーン(Campaign for America’s Libraries)、 全米図書館週間(National Library Week)などがある。

     ・出版(Publishing)(常任)

     ・決議(Resolutions)(常任)

     ・ライブラリアンシップにおける女性の地位(Status of Women in Librarianship:COSWL)(常任)

 ALAと外部団体とが共同で設立した合同委員会には、以下のものがある。

     ・ALAおよびアメリカ出版社協会(Association of American Publisher)

     ・ALAおよび児童図書評議会(Children’s Book Council)

     ・ALA、アメリカ・アーキビスト協会(Society of American Archivists)およびアメリカ博物館協会(American Association of Museums)

     ・ALA、レファレンスおよび利用者サービス部会(RUSA)およびアメリカ労働総同盟・産業別組合会議(American Federation of Labor / Congress of Industrial Organizations :AFL-CIO)

     ・英米目録規則(AACR)の共同出版、AACRの改訂のための合同運営委員会およびAACR基金委員会(Co-Publishers of AACR, Joint Steering Committee for the Revision of AACR, and AACR Fund Trustees)

5) 支部(Chapter)

 支部は、一定の地理的な範囲で、一般的な図書館サービスや図書館に関する理論と実践について議論、検討することを目的としている。ALAの内部には支部関係事務局(Chapter Relations Office)と支部関係委員会(Chapter Relations Committee:CRC)がおかれている。

     ・州(51)および地域(6)の支部

     ・学生支部

6) ラウンドテーブル(Round Table)

 会員の自主的な活動グループである。事務局から職員を担当者として配置しない。現在は17グループがある。内容によってはリエゾンとして委員会などに参加する。会員数の多い5つは評議員会に代表を派遣でき議決権を行使できる。ほかは共同で1名を参加させることができる。現在、以下のようなラウンドテーブルが活動している。

     ・継続図書館教育ネットワーク・交換(Continuing Library Education Network and Exchange:CLENERT)

     ・エスニックおよび多文化情報交換(Ethnic and Multicultural Information Exchange: EMIERT)

     ・展示(Exhibits:ERT)

     ・連邦政府および軍図書館(Federal and Armed Forces Libraries:FAFLRT)

     ・ゲイ、レスビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダー(Gay, Lesbian, Bisexual, Transgendered:GLBTRT)

     ・政府情報(Government Documents:GODORT)

     ・知的自由(Intellectual Freedom:IFRT)

     ・国際関係(International Relations:IRRT)

     ・図書館史(Library History:LHRT)

     ・図書館教育(Library Instruction:LIRT)

     ・図書館研究(Library Research:LRRT)

     ・図書館サポートスタッフ(Library Support Staff Interests:LSSIRT)

     ・地図・地理(Map and Geography:MAGERT)

     ・新規加入会員(New Members:NMRT)

     ・社会的責任(Social Responsibilities:SRRT)

     ・スタッフ組織(Staff Organizations:SORT)

     ・ビデオ(Video:VRT)

 委員会は任命委員で構成されているが、ラウンドテーブルは会員が自主的に参加するものであり任期はない。

7) 事務局(Headquarter)

 事務局は専任職員で構成されている。活動資金はALAからだけでなく、外部の各種財団などからも調達している。

     ・支部関係部(Chapter Relations Office)

     ・開発部(Development Office)

     ・管理部(Governance Office)

     ・国際関係部(International Relations Office)

     ・認定部(Office for Accreditation:OA)

     ・多様性部(Office for Diversity:OFD)

     ・政府関係部(Office for Government Relations:OGR)(在ワシントンD.C.)

     ・人的資源の開発と採用部(Office for Human Resource Development and Recruitment:HRDR)

     ・情報技術政策部(Office for Information Technology Policy:OITP)(在ワシントンD.C.)

     ・知的自由部(Office for Intellectual Freedom:OIF)

     ・リテラシーおよびアウトリーチ・サービス部(Office for Literacy and Outreach Services:OLOS)

     ・研究と統計部(Office for Research and Statistics:ORS)

     ・公表情報部(Public Information Office:PIO)

     ・公的プログラム部(Public Programs Office:PPO)

     ・ワシントン・オフィス(Washington Office)(在ワシントンD.C.)

8) そのほか提携関連外部機関・団体

 以下のような団体と合同委員会を形成したり、密な共同活動をすることが多い。

     ・協賛団体(Affiliate)(アメリカ法律図書館員協会(American Association for Law Librarians:AALL)など23団体)

     ・ALA連携専門家協会(ALA-Allied Professional Association:ALA-APA)

     ・読書の自由財団(Freedom to Read Foundation)

     ・メリット人道主義基金(Merritt Humanitarian Fund)

     ・全米リテラシー連合(National Coalition for Literacy)

     ・全米情報リテラシー・フォーラム(National Forum on Information Literacy)

     ・友好図書館(Sister Libraries)

ALA会員組織図

ALA会員組織図