図書館におけるデジタル化についてのEU司法裁判所の法務官意見が公開

2014年6月5日、欧州連合(EU)司法裁判所のJääskinen法務官が、著作権に関するEU指令(Directive 2001/29/EC)における、加盟国の図書館におけるデジタル化についての意見を発表しました。

ドイツ連邦裁判所におけるダルムシュタット工科大学とドイツの出版社Eugen Ulmer KG社の裁判(Case C-117/13)において、
(1)同大学が、その図書館の蔵書である同社の出版物をデジタル化すること。
(2)同大学の図書館の利用者が、同大学の図書館内で提供されている専用端末から、その資料を印刷し、あるいはUSBメモリスティックに保存し、図書館外に持ち出すこと。
の2点について争われており、EU指令における図書館の権利制限の範囲が問われていました。

Jääskinen法務官の見解によれば、権利者からの合意がなくても、EU加盟国の図書館は蔵書のデジタル化を行い、利用者の求めに応じて専用端末から提供することができるとのことです。また、EU指令では、専用端末で得られる資料の紙媒体への印刷は、図書館における権利制限では認めていないとしながら、私的利用に関する権利制限などで保護されるものであるとしているようです。

Advocate General’s Opinion in Case C-117/13 Technische Universität Darmstadt v Eugen Ulmer KG(Court of Justice of the European Union, 2014/6/5付)
http://curia.europa.eu/jcms/upload/docs/application/pdf/2014-06/cp140078en.pdf
※PRESS RELEASE No 78/14

Advocate General’s Opinion – 5 June 2014
Technische Universität Darmstadt Case C-117/13
Advocate General: Jääskinen (EUR-Lex)
http://curia.europa.eu/juris/celex.jsf?celex=62013CC0117&lang1=en&type=TXT&ancre=

via:Digitization: Advocate General of EU Court of Justice Backs Libraries’ Right to Digitise(infoDOCKET, 2014/6/5付)
http://www.infodocket.com/2014/06/05/digitization-advocate-general-of-eu-court-of-justice-backs-libraries-right-to-digitise/

参考:
E1542 – WIPOで,図書館等に関する著作権の権利制限が議論される
カレントアウェアネス-E No.255 2014.03.06
http://current.ndl.go.jp/e1542