カレントアウェアネス-E
No.160 2009.11.04
E990
第6回電子情報保存に関する国際学術会議(iPRES2009)<報告>
第6回電子情報保存に関する国際学術会議(iPRES2009)が,米国サンフランシスコのミッションベイ・カンファレンスセンターを会場として,2009年10月5日から6日の2日間にわたり開催された。国立国会図書館(NDL)からは筆者が参加した。
iPRES は,2003年に中国科学院と図書館電子情報財団(eIFL)により,電子情報保存に関する意見と専門的知識を交換する会議として企画され,2004年に第1回会議が北京で開かれた。2005年の第2回会議以降,各国の電子情報保存に係る実務者及び研究者による国際会議として規模が拡大され,毎年行われている。iPRES2009は,カリフォルニア電子図書館が企画・運営の中心となり,約400人の参加者を集めた。
基調講演は,メリーランド大学のカーシュ(David Kirsch)准教授が,民間が保有するデータの保存について行った。カーシュ氏は,近時の世界的な不況により企業が倒産すると,多くの場合,企業が保有する電子文書が残らないため,企業活動の調査・研究の貴重な資料を失うことになると警鐘を鳴らした。同氏が主任調査員を務める全米デジタル情報基盤整備・保存プログラム(NDIIPP;CA1502,E214,E256,E525参照)のような,官民が連携した電子情報保存の仕組みを各国がすみやかに構築する必要があると強調した。
基調講演後,各国の国立図書館や大学・研究機関による約30に及ぶ報告やパネル・ディスカッションが行われた。各国の国立図書館からは,米国議会図書館のNDIIPP,ドイツ国立図書館のNestor(E642参照),英国図書館の LIFE(CA1696参照)等の電子情報保存プロジェクトについて報告された。大学・研究機関からは,ウィーン工科大学のガッテンブルーナ(Mark Guttenbrunner)博士による,1980年代のコンピュータがプログラムを記録するため利用していた音楽録音用テープから当時のゲーム用ソフトウェアの抽出に成功した実験成果報告を始めとして,電子情報保存に係る研究成果の報告等が行われた。
なお,次回のiPRESは2010年9月19日から23日にかけてウィーンで開催される。
(関西館電子図書館課・柴田昌樹)
Ref:
http://www.cdlib.org/iPres/
CA1502
CA1696
E214
E256
E525
E642