カレントアウェアネス-E
No.155 2009.08.05
E956
クラウド技術を用いた永続アクセスに関する実験が開始(米)
非営利組織“DuraSpace”と米国議会図書館全米デジタル情報基盤整備・保存プログラム(NDIIPP;CA1502,E525参照)は2009年7月,DuraSpaceがNDIIPPの支援の下で開発に取り組んでいる,クラウド技術を用いた文化機関(大学や図書館など)のデジタルコンテンツへの永続的アクセス保証サービス“DuraCloud”の試験プログラムに取り組むことを発表した。このプログラムの実施期間は2009年9月からの1年間で,ニューヨーク公共図書館とBiodiversity Heritage(生物多様性遺産)図書館が参加する。なお,DuraSpaceは,オープンソースのリポジトリソフトウェアの2大供給者,Fedora CommonsとDSpace Foundationが2009年5月に合併して誕生した組織である。
デジタルコンテンツの長期保存については,ツールやプロセスが未完成,限られたIT支援,限られた財源,莫大な作業などが課題となってきた。また,コンテンツへのアクセス拡大については,システム間の相互運用性,不均一なプラットフォーム,共通の基準の欠如,柔軟性を欠くコンピュータの処理力,といったことが障壁となっていた。これらの課題をクラウド技術を活用して解決し,デジタルコンテンツへの永続的アクセスを実現するサービスを文化機関に提供しようというのが,DuraCloud開発の目的である。DuraCloudは,複数のクラウドプロバイダに渡ってコンテンツを複製・モニタリングし,コンテンツの「アクセス」「保存」「再利用」「共有」を支援するサービスである。
今回試験プログラムに参加する,2図書館では,下記のようなテストを実施する予定である。
ニューヨーク公共図書館では,デジタル画像の大規模なコレクションをFedoraのリポジトリからDuraCloudに複製する。また,画像のファイル形式をTIFFからJPEG2000に変換し,DuraCloudの強力なJPEG2000エンジンを利用して,提供する。
Biodiversity Heritage図書館(欧米の機関が参加する,生物多様性に関する歴史的雑誌文献の電子図書館)では,生物多様性に関する貴重資料の保護を目的とするデジタルコンテンツの複製に焦点を当てる予定で,米国と欧州の双方向での複製を実証する。また,DuraCloudの提供するクラウドコンピューティング機能を利用して生物多様性に関するテキストの分析を行うことになっている。さらに,デジタル画像の処理と提供のためにJPEG2000エンジンを用いる計画である。
なお試験プログラムへの参加機関は今後も増える予定で,近い将来の本サービス提供に向けて,サービスの検証が進められている。
Ref:
http://www.loc.gov/today/pr/2009/09-140.html
http://duraspace.org/index.html
http://duraspace.org/duracloud.html
http://duraspace.org/documents/DuraCloudOR09May09.ppt
CA1502
E525