カレントアウェアネス-E
No.158 2009.09.16
E976
オンライン時代に対応した図書館法改正(韓国)
韓国では2009年3月2日,図書館法改正案が国会本会議を通過し,新しい図書館法(法律第9528号)が2009年3月25日に公布された。この新図書館法が,2009年9月26日から施行される。
今回の図書館法改正の骨子は,オンライン資料の増加をふまえ,国立中央図書館がオンライン資料の収集・保存を行えるように,必要な制度的根拠を準備するというものである。まず,第2条(定義)において,図書館資料を「印刷資料,筆写資料,視聴覚資料,マイクロ形態資料,電子資料,その他障害者のための特殊資料等,知識情報資源の伝達を目的とする情報が蓄積されたすべての資料(オンライン資料を含む)で,図書館が収集・整理・保存する資料」とした。そして,第20条の2(オンライン資料の収集)を新設し,その第1項で「国立中央図書館は,大韓民国でサービスされるオンライン資料のうちで,保存価値の高いオンライン資料を選定して,収集・保存しなければならない」と規定した。また以後の項では,次のような内容を記している。
- 技術的な保護措置が取られているため収集できない場合には国立中央図書館が協力要請を行うことができ,要請を受けた提供者は特別な理由がない限りそれに応じなければならない(第2項)
- 収集されたオンライン資料に自分の個人情報が含まれていることを知った者は訂正・削除請求,さらに権利・利益の侵害に対する行政審判・行政訴訟を行うことができる(第3項・第4項)
- 販売されているオンライン資料を収集する場合には,国立中央図書館が正当な補償金を支払わなければならない(第5項)
- 収集対象のオンライン資料の選定・種類・形態と収集手続きおよび補償等に関して必要な事項は大統領令(=図書館法施行令)で定める(第6項)
また第20条(図書館資料の納本)も改正され,視覚障害者サービスに必要な場合には,刊行物の発行者・製作者に対し,デジタルファイルの形でも納本するように要請することができることが盛り込まれた(第2項)。この要請も,特別な理由がない限り,応じなければならないとされている。
このほか,障害者,高齢者,基礎生活保障(日本の生活保護に相当)受給権者といった「知識情報脆弱階層」が図書館でデジタル資料を利用する際にかかる費用を国・地方公共団体が補助できるようにする,図書館の規模に満たない小規模読書施設として従来の「文庫」に替えて「小さな図書館」(E696参照)を法的に位置づける,といった改正がなされている。
なお,国立中央図書館を所管する韓国文化体育観光部では2009年9月現在,図書館法改正に伴う同法施行令・施行規則の改正準備を行っている。同部が2009年6月10日に発表して意見募集を行った施行令改正案には,オンライン資料の納本者の請求に応じて補償金を支払う手続きや,オンライン資料を含む図書館資料の納本・収集に係る重要事項(選定,種類,形態,補償等)を審議する図書館資料審議委員会を国立中央図書館に設置すること等が記載されている。この施行令・施行規則も,2009年9月26日から施行される予定である。
ちなみに,もうひとつの納本図書館である国会図書館についても,2009年5月21日に国会図書館法(法律第9704号)が一部改正され,第7条(情報の提供および納本)で定める納本対象に「非図書・視聴覚資料・マイクロ形態資料・電子資料・その他規則が定める立法情報支援に必要な資料」が追加されている。同時に第6条(電子図書館構築のための資料の収集)も改正され,国会図書館長から資料提供の要請を受けた国家機関,地方自治体,公共機関,教育研究機関の長に対し,特別の事情がない限り,当該資料を電子ファイルでも提供することを義務付けた。ただし,オンライン資料については記載されていない。この国会図書館法は公布と同日に施行されている。
Ref:
http://law.go.kr/LSW/NwRvsLsInfoR.do?ancbSeq=6087
http://www.mcst.go.kr/web/notifyCourt/press/mctPressView.jsp?pMenuCD=0302000000&pSeq=9872
http://www.clip.go.kr/intro/intro_view.jsp?tableid=100&idx=340&method=V
http://law.go.kr/LSW/NwRvsLsInfoR.do?ancbSeq=7700
E696