カレントアウェアネス-E
No.158 2009.09.16
E977
大学図書館の整備・学術情報流通の在り方に関する審議のまとめ
文部科学省の科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会学術情報基盤作業部会(以下,作業部会)は2009年7月,同年3月からの6回の審議をまとめた「大学図書館の整備及び学術情報流通の在り方について(審議のまとめ)」を同省のウェブサイト上に公開した。これは,「電子ジャーナルの効率的な整備」及び「学術情報発信・流通の推進 」という早急な対応を要する2つの課題についての審議内容をまとめたものである。
1点目の,大学図書館が抱える電子ジャーナル経費の増加の問題に対して,国立大学及び公私立大学でそれぞれコンソーシアムを形成して主要な外国出版社と契約交渉を行うことで電子ジャーナルの価格上昇を抑制したり,各大学内で冊子の重複購入を中止するなど,さまざまな努力が行われている現状を踏まえて,以下のような対応策が挙げられている。
- 大学ごとの需要や財政状況に応じた形態での契約を結べるよう出版社と交渉
- 交渉の主体はコンソーシアム,契約の主体は個別の大学
- 交渉に係る専門性を有する人材の育成および活用
- ナショナル・サイト・ライセンス(CA1438参照)と個別契約の中間的な方法の導入・利用環境の改善
2点目の,学術情報発信・流通の推進については,(1) オープンアクセスの推進,(2) 機関リポジトリの構築,(3) 学協会の国際情報発信力の強化が必要とされ,それぞれ以下のような要点が挙げられている。
(1) オープンアクセスの推進
- 国立情報学研究所(NII)のSPARC Japan(国際学術情報流通基盤整備事業;CA1469参照)や科学技術振興機構(JST)のJ-STAGE(科学技術情報発信・流通総合システム)といった関連事業との連携
- 個々の研究者の意識改革・学協会が行う学術情報の電子化への支援を強化
- 国際的な学術雑誌の価格高騰問題への(間接的であるにせよ)効果
(2) 機関リポジトリの構築
- NIIへの支援や各機関が共通利用できる共用リポジトリのシステムの構築
- 機関リポジトリの重要性についてとりわけ人文社会科学系分野での認知度の向上
(3) 学協会の国際的な情報発信力の強化
- 学術雑誌の電子化
- NIIのNII-ELSやJSTのJournal@rchive(E467参照)といった関連事業の拡充
作業部会では,引き続き,専門的な知識・技能を備えた図書館職員の必要性や,国際性を有する図書館職員の確保など,今回取りまとめた事項以外の課題について検討を行うとしている。
Ref:
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/toushin/1282987.htm
CA1438
CA1469
E467