E962 – オンライン健康情報の利用状況と情報の質向上への取組み(米国)

カレントアウェアネス-E

No.156 2009.08.19

 

 E962

オンライン健康情報の利用状況と情報の質向上への取組み(米国)

 

 米国の調査機関Pew Internet Research & American Life Projectが2009年6月に公表した報告書“The Social Life of Health Information”によると,米国の成人の61%はオンラインでの健康情報の探索を行っているという。

 オンラインでの健康情報探索の特徴として,自分以外の人のために情報を探す人が多いこと,自分や周りの人にあてはまる具体的な事例についての情報が求められていること,ソーシャルネットワーク等で自らが健康情報の発信をする人は少ないこと,等があげられている。利用される情報としては,特定の病気や医療上の問題,治療法,運動・フィットネス,医師・医療専門職の情報,等が多くなっている。

 これらの人々のうちのおよそ6割が,インターネットで見つけた医療・健康情報により自分や周りの人が助けを得られたと回答しており,この比率は2006年の調査時の31%から大幅に上昇している。その一方,インターネット上の情報により害を受けたという人も,3%と少数ながら存在している。

 健康に直接的な影響を与える可能性があることから,健康情報はその信頼性が重要課題である。2009年7月29日付けのNew Scientistの記事では,オンラインの健康情報には必ずしも適切ではない情報が含まれることや,オンラインでの健康情報探索において最も利用されることの多いとされるWikipediaにおいても,情報量が十分でない場合があることが指摘されている。

 こうした状況を踏まえ,Wikipediaを運営するWikimedia財団は,米国国立衛生研究所(NIH)と共同で,オンラインの健康情報の質を高めるための取組みを開始した。Wikipediaの理念や仕組みなどを理解してもらうための説明会が2009年7月にNIHで開催され,NIHの専門家による記事の投稿が促されており,実際に投稿も行われている模様である。

 もちろん,人々がオンライン以外の手段を利用しないわけではなく,冒頭の調査でも,医師にかかる,家族や友人に相談する,書籍を参照する,といった手段も同程度かそれ以上の利用があることが示されている。これらの情報入手手段の補足的な位置づけであるとしても,オンライン情報を参考にする人がますます増加している今,オンラインでの健康情報の質を高めるための取組みは,社会的な意義を持つものであると思われる。

Ref:
http://www.pewinternet.org/Reports/2009/8-The-Social-Life-of-Health-Information.aspx
http://www.newscientist.com/article/mg20327185.500-should-you-trust-health-advice-from-the-web.html
http://wikimediafoundation.org/wiki/Press_releases/NIH_and_WMF_announce_first_WP_Academy_July_2009
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/27/AR2009072701912_pf.html
CA1676
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