E958 – 「図書のメタデータのワークフローの能率化」白書の概要紹介

カレントアウェアネス-E

No.155 2009.08.05

 

 E958

「図書のメタデータのワークフローの能率化」白書の概要紹介 

 

 2009年6月30日,米国情報標準化機構(NISO)とOCLCは,「図書のメタデータのワークフローの能率化」(Streamlining Book Metadata Workflow)と題する白書を公表した。この白書は,2009年3月18日から19日にかけて行なわれたOCLC主催の図書のメタデータを議題としたシンポジウムフォローアップとして位置づけられている。

 白書の前半部分ではステークホルダー別にメタデータの作成・使用状況を分析し,全体の流れを示した「メタデータ交換マップ」を示している。位置づけられているステークホルダーは,出版社,メタデータベンダー(OCLC, Bowker, CrossRefなど),取次,書店,国立図書館,その他の図書館,Google,である。次いでワークフロー上の非能率的な点を記している。ワークフロー上の最たる問題点として挙げられているのが,出版社側と図書館側とで異なる基準を用いて作業を行なっているという点である。例えば,出版社側ではONIX,図書館側ではMARCという相異なるメタデータフォーマットを用いている。また,主題管理の深度にも両者で大きな違いがある(米国議会図書館件名標目表は300,000件の語数を持つが,出版社等の用いるBISACは3,000件に過ぎない)。

 後半部分では,シンポジウムでステークホルダーらによって交わされた意見を集約し,ワークフローの能率化について以下のような提案を列挙している。

  • 米国議会図書館のCIP(Cataloging in Publication)データの作成を容易にし,また,出版社にMARCデータのXMLフィードを提供するために,ONIXとMARCの間のクロスウォークを使用すること
  • 出版後のCIPレコードの作業分担を促進すること
  • より洗練された検索結果を提供するために,シリーズや目次に関するメタデータを統合すること
  • 図書館が出版社とメタデータベンダーから入手した個別タイトルのパッケージを表す「コレクション識別子」の必要性
  • ISTC(国際標準テキストコード)とISNI(創作者等の名称に関する識別子;E942参照)を既存のワークフローに統合し,導入を促進するための方法を探ること

 白書の末尾部分では,近い将来には,それぞれのシステムをつなぐクロスウォークがステークホルダー間でのメタデータの共有を可能にし,長期的には,各基準間の変換を可能にするベストプラクティスが全てのステークホルダーに役立つであろうと述べて,コンテンツの検索・販売・利用のためのメタデータワークフローの能率化はこういった協同作業によって可能であると括っている。

Ref:
http://www.niso.org/publications/white_papers/
http://www.niso.org/publications/white_papers/StreamlineBookMetadataWorkflowWhitePaper.pdf
E942