E875 – ファーストライブラリアン,ローラ・ブッシュ夫人の8年

カレントアウェアネス-E

No.142 2009.01.21

 

 E875

ファーストライブラリアン,ローラ・ブッシュ夫人の8年

 

 2009年1月20日,米国にオバマ(Barack Obama)新大統領が誕生した。これと同時に,ブッシュ(George W. Bush)政権は8年間の任期満了を迎え,ファーストレディ,ローラ・ブッシュ(Laura Bush)夫人もその役割を終えた。ローラ夫人はかつて,ライブラリアンとして公共図書館,学校図書館に勤務した経験があり,ファーストレディ時代には,「ファーストライブラリアン」として,図書館振興や読書推進に関する多くの活動に従事してきた。米国図書館協会(ALA)が発行する雑誌“American Libraries”は特集を組み,8年間に渡る彼女の業績をまとめている。

 彼女は図書館に対し,例えば下記のような貢献をしている。

  • 2001年
     教育イニシアチブ“Ready to Read, Ready to Learn”開始,ローラ・ブッシュ財団設立,米国議会図書館(LC)とともに“National Book Festival”を開始など。
  • 2002年
     学校図書館に関するホワイトハウス会議の開催,図書館情報学専門家養成のための“21st Century Librarian Program”開始など。
  • 2003年
     名誉大使として「国連識字の10年」を開始,19年振りの米国のユネスコ復帰を祝う式典開催など。
  • 2005年
     アメリカの若者救済に関するホワイトハウス会議の開催など。
  • 2006年
     カトリーナで被災した学校図書館への修復資金の助成など。
  • 2007年
     ローラブッシュ財団による263の学校図書館への助成,米国博物館・図書館サービス機構(IMLS)の“National Medal”の受賞(CA1669参照)など。
  • 2008年
     世界規模での識字に関するホワイトハウス会議の開催,世界の識字率改善のための助成,娘との共著で子ども向けの本“Read All About It!”を出版など。

 ファーストレディを退いてからローラ夫人は,母校である南メソジスト大学(テキサス州)にブッシュ大統領図書館を建設すべく引き続き活動していく予定であり,American Libraries誌のインタビューに対し,「大統領図書館のために尽力することや,米国のために,また国際的な問題のために引き続き働いていくことは,私がこれまで図書館とリテラシーに関して行ってきたすべての事を継続していくための,よい機会であると考えています」と答えている。

 American Libraries誌によると,ブッシュ前大統領は図書館や読書にあまり興味がなく,ローラ夫人が図書館振興に一役買っていた。一方オバマ大統領は,読書の重要性や図書館が社会において果たす役割,図書館員の役割に対し,理解を示している(E855参照)。今後新政権の下で,図書館を巡る動きがどのような方向に展開していくのか,注視したい。

Ref:
Leonard Kniffel. Eigth Years Later: Laura Bush, Librarian in the White House. American Libraries. 2008, Volume 39, Issue 11, p.42-47.
http://site.ebrary.com/lib/ala
http://www.whitehouse.gov/about/first_ladies/laurabush/
CA1669
E855