E807 – 大学生にとって,電子書籍の存在感は?

カレントアウェアネス-E

No.131 2008.07.09

 

 E807

大学生にとって,電子書籍の存在感は?

 

 電子書籍・電子コンテンツを提供している米国のebrary社(CA1648参照)が,大学生・大学院生の電子書籍の利用,ニーズ,認知について理解を深めるため,彼らを対象とする調査を実施し,2008年6月,その結果を“2008 Global Student E-book Survey”として公表した。この調査は世界規模で実 施され,世界75か国から,約400の大学・カレッジ等に所属する大学生・大学院生およそ6,500人が協力した。

 本調査のサンプルは,ebrary社のニューズレターを読んだ図書館員たちによる,学生への非公式のプロモーションによって得られたものである。また75か国の内訳を見ると,最も回答が多い国がイタリア(2,707名),2番目が米国(2,143名),3番目が香港(529名)となっており,英・仏の回答者は少数で,日・韓・独など回答者がいなかった国もある。調査結果には偏りが予想されるが,事例の1つとして参考になる。

 今回の調査では,主に以下のようなことが分かった。

  • 所属する機関が提供する電子書籍をどのくらいの頻度で利用しているか,という問いに対し,最も多い回答は「一度もない」で,回答のほぼ半数を占めた。
  • 一度も利用したことがない人に理由を尋ねたところ,「どこで電子書籍が見つけられるか知らない」が回答の約57%を占めて最多,次いで「印刷体の本の方を好むから」(約45%)であった。
  • 研究に利用する情報源を複数回答で選んでもらったところ,Google等の検索エンジン(2,593名),電子書籍(2,517名),印刷体の本(2,478名)となり,上位5位のうち,4つを電子媒体が占めた。
  • いくつかの情報媒体を挙げ,それぞれについて,信頼度を評価してもらうという項目では,信頼度の高い媒体は,1位が印刷体の本(2,845名),2位が電子書籍(2,796名)となった。上位5位を見ると,電子媒体は電子書籍のみで,ほかはすべて印刷体の情報源であった。
  • 電子書籍の特徴のうち,重要だとみなされているのは,検索性,いつでも・キャンパス外からでもアクセスできること,一度に何人もの学生が利用できること,ダウンロードできること,などであった。
  • 電子書籍を知ったきっかけの上位3位は,図書館員,図書館目録,図書館ウェブサイトまたはブログと,図書館に関係のあるものが占めている。

 ebrary社は,電子書籍に対する学生の意識の変遷を時系列で比較できるよう,定期的に調査を実施していく計画であるという。また,今回学生に対して実施したものと同様の調査を図書館員に対しても実施し,その内容を両者で比較できるようにする予定だという。この図書館員向けの調査の結果は,今夏公表される。

Ref:
http://www.ebrary.com/corp/newspdf/ebrary_student_survey.pdf
CA1648