E781 – ALA,米国図書館界の現状報告書を刊行

カレントアウェアネス-E

No.127 2008.05.14

 

 E781

ALA,米国図書館界の現状報告書を刊行

 

 米国図書館協会(ALA)は2008年4月,2006年(E472参照),2007年に引き続き,米国図書館界の現状を概括した報告書“The State of America’s Libraries”を刊行した。

 取り上げられている主なトピックは,(1) 学校図書館,(2) 公共図書館,(3) 大学図書館,(4) アウトリーチとダイバーシティ(多様性)に関する取組,(5) 政府・議会の情勢,(6) 米国合衆国憲法修正第1条に関わる問題(表現の自由やプライバシー),(7) 財源と給与,などであり,特に(1)と(4)に関する調査結果が注目に値するトレンドとして取り上げられている。

 (1)については,学校図書館メディアセンター(SLMC)や学校図書館メディアスペシャリストの認知度が高まり,また実際に,SLMCと教育との連携が児童の学力を向上させることなどが明らかになっているが,その充実のための財源の確保は遅れを取っており,こうした動向に対し図書館関係者が,全ての学校への学校図書館メディアスペシャリスト配置を義務付ける法律改正を議会へ訴えていること(E680参照)などが紹介されている。(4)では,公共図書館で提供されている英語以外でのサービスに関する調査が報告されている。最も多いのがスペイン語でのサービスであり,調査の回答者の78%がスペイン語を最も優先順位が高い言語だと答えている。次いでアジア言語の29%となる。また,英語を話せない人に対するサービスが充実しているのは,大都市ではなく,人口10万人以下のコミュニティの図書館だったという。 ALAはこの調査結果を,多言語サービスが不十分な地域でのサービス向上のため,活用していく予定であるという。

 上記以外には,ティーンエージャーの公共図書館利用が頻繁であること(E743参照),コンピュータやオンラインゲームを利用したサービスが公共図書館で定着しつつあること(E693参照),館種を問わず電子書籍の提供が通常サービスの1つとして浮上しつつあること,予算削減のため,サービスを縮小していた米国環境保護局(EPA)図書館ネットワークが,アドヴォカシー活動の甲斐もあり,サービスを回復したこと(E609E741参照)などが紹介されている。

 この報告書が,図書館の価値を社会にアピールしようという全国図書館週間の活動の一部として刊行されていることもあり,総じて米国社会の発展にとって図書館が果たす役割の重要性を強調する内容となっている。今回の報告書によって,これまで断片的に扱われてきた米国の図書館界の概要を通覧でき,2008年現在,米国の図書館が立っている地点を再確認することができる。

Ref:
http://www.ala.org/ala/pio/presscentera/piopresskits/2008statereport/2008statehome.cfm
E472
E609
E680
E693
E741
E743