E741 – NIHパブリックアクセス方針義務化等を含む予算案が成立

カレントアウェアネス-E

No.121 2008.01.23

 

 E741

NIHパブリックアクセス方針義務化等を含む予算案が成立

 

 2007年12月26日,米国ブッシュ大統領は,「2008年9月30日に終了する歳出年度における米国連邦国務省,国外活動および関連事業に対する予算措置,ならびにその他の目的に関する法律(Making appropriations for the Department of State, foreign operations, and related programs for the fiscal year ending September 30, 2008, and for other purposes. Pub.L.No.110-161)」案に署名した。

 同法は2008予算年度の連邦政府予算を決める法律の一つである。2007年11月13日のブッシュ大統領の拒否権発動で廃案となった「2008年9月30日に終了する歳出年度における米国連邦労働省,保健社会福祉省,教育省および関係機関に対する予算措置,ならびにその他の目的に関する法律(FY08 Labor-HHS Bill)」案(E712E723参照)をベースに,拒否権発動の理由となった支出額に対する削減を盛り込み,その他の予算関連法案と一本化した上で,同年12月17日から連邦議会で再審議が進められていた。2007年12月18日には上院で,翌19日には下院でそれぞれ可決され,ブッシュ大統領に送付されていた。

 同法には,“FY08 Labor-HHS Bill”にも盛り込まれていた米国国立衛生研究所(NIH)の助成による研究成果のパブリックアクセス化を求める条項や,縮小されていた米国環境保護局(EPA)図書館ネットワーク(E609参照)のサービス回復のための助成金増額(約300万ドル・約3.2億円)などが盛り込まれている。一方で博物館・図書館サービス機構(IMLS)に対する助成金は,“FY08 Labor-HHS Bill”から約1,400万ドル(約15億円)減額され,約2億6,300万ドル(約282億円)とされている。

 同法の成立を受けてNIHは,2008年1月11日付けでパブリックアクセス方針(CA1600参照)を改訂した。改訂点として,(1)同法の対象を2008年4月7日以降に出版社に受理された,NIHの助成研究者または内部職員による査読済み論文とする,(2)論文の公表時に生じる出版権や著作権について,このパブリックアクセス方針が適用されることを,研究機関や研究者はあらかじめ確認しておく責任がある,(3)提出された研究成果は,“PubMed Central”をはじめ,内外のデータベースを通じてアクセス可能とする,(4)「査読済み原稿」とは,図表をはじめとする全ての素材を含むものである,(5)2008年5月28日以降,NIHに提出される助成申込書,提案書,中間報告書で,NIHの研究成果を引用する際には,PubMed CentralまたはNIH原稿提出参照番号(NIH Manuscript Submission reference number)を併記すること,の5点を掲げている。

Ref:
http://thomas.loc.gov/cgi-bin/bdquery/z?d110:HR02764:
http://www.whitehouse.gov/news/releases/2007/12/20071226-1.html
http://www.libraryjournal.com/article/CA6515019.html
http://grants.nih.gov/grants/guide/notice-files/NOT-OD-08-033.html
http://www.ala.org/ala/pressreleases2007/december2007/epa122107.htm
http://www.arl.org/sparc/publications/an-open-access-mandate-fo.html
CA1600
E609
E712
E723