カレントアウェアネス-E
No.122 2008.02.06
E747
ERMSと図書館システムの相互運用性に関するレポート
電子図書館連合(DLF;E174参照)が設置している小委員会である電子資源管理イニシアチブ(ERMI)は,統合図書館システム(ILS)の収集システムモジュールと電子資源管理システム(ERMS;E362参照)の相互運用性に関するレポートをまとめ,2008年1月に公開した。
本レポートは第1章で,カリフォルニア大学ロサンゼルス校など3大学・組織と米国議会図書館(LC)の事例について分析を加え,第2章で,ERMSシステムベンダーの認識を分析している。
第1章ではまず,各図書館のサービス対象者数(LCは登録利用者数および貸出権限を持つ利用者数),導入しているシステム(ILS,ERMS,リンクリゾルバ(CA1482,CA1606参照))の状況を把握した上で,それぞれにおける電子資源管理のワークフローのレビューを行った。この結果,(1) システム環境が複雑になっている,(2) より効率的な電子資源管理のためにはスタッフや業務フローの変更が必要である,(3) 契約交渉や契約書の締結に係る業務の負担が大きい,という現状がわかった。またこれらの事例から,発注番号,価格,契約の開始・終了日,ベンダー情報,財源の情報など,電子資源の講読契約に関しILSとERMSの間で交換すべき7種類の情報が得られた。各図書館は,電子資源の利用単価統計を自動的に測定できるようになれば,ILSとERMSの相互運用性確保の契機となるだろうと認識していることもわかった。
第2章では,ERMSベンダーの製品責任者や開発スタッフへの調査結果を掲載している。ERMSベンダー側も,ILSとの相互運用性に関しては戦略的に重要な分野であると同意したものの,電子資源をひとまとめにしたパッケージ(CA1586参照)やその構成について記述するためのオープンな標準的識別子が存在しないことを挙げ,現時点では相互運用は困難であると認識していたという。またERMSを,ILSの1モジュールとしてとらえる見方から,ILSの機能の大半を置き換えるものとする見方まで,ベンダーの認識には大きな差があった。
最後に結論として,相互運用性の確保に向けて図書館とベンダーが協同し,関係者間でさらなる対話を行っていくこと,またそこから,小規模な交換用データセットについて合意を形成したり,標準識別子の開発を行ったりしていくことを提言している。
2006年から2007年にかけて,各出版社やアグリゲーターによる電子ブック提供サービスが本格化しており(CA1648参照),従来の電子ジャーナルとともに,図書館が管理する電子資源の範囲は拡大の方向を示している。従来の物理的所蔵を前提としたILSと電子資源を主なカバー領域とするERMSが,どのような形で相互運用性を確保し,図書館利用者や図書館職員にどのような恩恵をもたらすのか,研究の余地はまだ多い。
Ref:
http://www.diglib.org/standards/ERMI_Interop_Report_20080108.pdf
http://www.diglib.org/standards/dlf-erm05.htm
http://www.diglib.org/pubs/dlf102/
http://digital-scholarship.org/digitalkoans/2008/01/14/white-paper-on-interoperability-between-acquisitions-modules-of-integrated-library-systems-and-electronic-resource-management-systems/
E174
E362
CA1482
CA1586
CA1606
CA1648