カレントアウェアネス-E
No.110 2007.07.11
E664
米国の著作権団体,学術機関向け年間ライセンス契約を開始
米国の著作権集中管理団体であるコピーライト・クリアランス・センター(CCC)は高等教育機関向けに,1ライセンスで著作物を広範に利用できる年間契約サービス“Annual Copyright License”を開始すると発表した。
対象となる資料は図書や学術雑誌のほか,業界専門ニュース雑誌,新聞が含まれる。また図書や雑誌のタイトル, ISBN,ISSN,出版社名から利用対象であるか確認できるデータベースも整備されている。このサービスにはSpringer社, Sage社,Nature社,Wiley社など有力な学術出版社を含む,約200社近い出版社が参加している。またCCCによると,すでに1,000機関を超える高等教育機関と契約を交わしており,参加出版社も増え続けているという。
契約対象は高等教育機関で,対象となる利用者は研究者や学生など高等教育機関の構成員である。構成員は著作物の複写,授業での複製・配布,講義録への転載ばかりではなく,電子リザーブ(E341参照)の共有,電子化された授業教材への転載,また学内限定ではあるが電子メールでの著作物配布やサーバ保存による共同利用を行うことができる。さらに学外の事業者による著作物の複写や教材集(Coursepack)への転載も認められており,著作物を利用できる仕組みとなっている。このライセンスは複数のキャンパスを持つ大学にも対応しており,米国に本拠地を置く高等教育機関の海外キャンパスに対しても,ライセンスの適用が可能であるという。
研究・調査や授業における著作物の複製・頒布は,米国著作権法第107条の「フェア・ユース」に該当する限り,法的に認められる。だが「フェア・ユース」に該当するかどうかは,個々の具体的事例に即して裁判所が判断するため,著作権法違反のリスクを抱えているのが現状である。もちろん個々の著作物単位で権利処理手続きを行えば,法的なリスクは回避できるが,膨大な手間と時間がかかり,運営コストと時間の損失につながっていた。
高等教育機関における授業教材作成を目的とするコピーとスキャニングについては,すでに英国において包括ライセンスの実例が存在する(E373参照)が,Annual Copyright Licenseは,より広範な利用を認めており,今後の展開を注視していく必要があろう。
Ref:
http://www.copyright.com/ccc/viewPage.do?pageCode=au143
http://www.copyright.com/ccc/viewPage.do?pageCode=ac12
http://www.copyright.com/ccc/search.do?operation=show&page=academic
http://www.copyright.com/media/pdfs/AACLProductSheet.pdf
E341
E373