E373 – 教育目的でのスキャニングに関する包括ライセンス(英国)

カレントアウェアネス-E

No.65 2005.09.07

 

 E373

教育目的でのスキャニングに関する包括ライセンス(英国)

 

 英国著作権ライセンス協会(Copyright Licensing Agency: CLA)は8月16日,英国大学協会(Universities UK: UUK),高等教育カレッジ学長会議(Standing Conference of Principals: SCOP)等の高等教育機関と,授業で使用する教材を作成・配布するための出版物のコピーとスキャニングに関する包括ライセンスの試行について合意したと発表した。CLAとUUK・SCOPはすでに,2001年8月から5年間の期間限定で,教育目的のために複数部数コピーを作成できるという包括ライセンス(CA1442参照)を運用しており,今回の試行はその拡張という位置付けである。期間は8月1日または2006年2月1日のいずれかから3年間を選ぶことができる。

 各高等教育機関は,CLAと個別にライセンス契約することで,個々の資料のスキャニングやコピーを行う都度の権利処理手続きが不要となる。対象資料は,英仏独やオーストラリア,カナダなど20か国・地域からなる複写委任地域(Photocopying Mandate Territories)の出版者およびこのライセンスに参加する一部の米国の出版者の出版物である。ただし,楽譜,地図,新聞や非売品,一部の出版者・著者の出版物は除かれる。また,教育以外の利用,例えば個人の調査・研究目的でのスキャニングや,スキャニングした資料で電子図書館を構築することも禁じられている。範囲は出版物全体の5%,あるいは図書の1章,雑誌では1論文を越えてはならないとされている。

 スキャニングができるライセンスの場合,各機関が専攻コースごとに作成したデータベースに,スキャニングした電子ファイルを登録する。授業の履修者は認証システムを経てファイルにアクセスし,ダウンロードするという利用法になる。ファイルへのアクセスはコースが開催されている間可能であり,1人1部に限りプリントアウトも認められている。

 年間ライセンス料は,全日制換算の学生数に対し,スキャニングができるライセンスの場合は4.92ポンド(約980円),従来どおりのコピーだけの場合は4.42ポンド(約880円)を乗じた金額となる。なお各機関には,(1)スキャンしたファイルに定められた書式の著作権表示をつける,(2)スキャンを行った記録を作成しCLAに報告する,(3)スキャニングについて監査を行うなどの義務が課されている。各機関のスキャニング記録と監査に基づき,CLAは著作権使用料を配分するとともに,試行を評価するという。

Ref:
http://www.cla.co.uk/news/press_releases/press111.html
http://www.cla.co.uk/support/he/index.html
http://www.cla.co.uk/support/he/HE_TrialPhotocopyingandScanningLicence.pdf
CA1442