カレントアウェアネス-E
No.97 2006.12.20
E585
大学生は情報を使いこなせているのか?
「今の大学生は,大学や職場で成功するために必要なICTリテラシースキルを有していない。」米国の非営利テスト開発機構であるEducational Testing Service(ETS)が,このような調査結果を公表した。研究主幹のカッツ氏(Irvin R. Katz)は次のように述べている。「大学生は情報機器を使いこなしているが,コンテンツの扱い方については必ずしも理解しているわけではない,と多くの学者は考えている。今回の我々の予備調査の結果は,およそこの疑念が事実に基づいていることを示している。」
ETSは,米国に拠点を置く世界最大のテスト開発機構であり,TOEIC,TOEFL,GREをはじめ約200ものテストプログラムを提供している。同社は,2001年から高等教育機関や図書館とともにICTリテラシー,すなわち「情報社会において活動するために,情報課題を的確に解決する目的でデジタル技術,コミュニケーションツール,ネットワークを適正に活用する能力」を評価するためのテストの開発に取り組んでいる。一応の完成に至っている現在のテストは,情報ニーズを特定する「明確化(Define)」,情報を探索・収集する「アクセス(Access)」など,7つの技能領域の習熟度を図るものとなっており,これは,米国大学・研究図書館協会(ACRL)が2000年に出した「高等教育のための情報リテラシー能力基準」など,現在有効とされている基準と合致したものとなっている。
今回の調査は,このICTリテラシー評価テストを受けた6,300人余の大学生の結果を分析したものである。注目される結果としては,ウェブサイトの客観性を正しく判定できたのは52%,ウェブサイトの信頼性(authoritativeness)を正しく判定できたのは65%,ウェブサイトを検索する際に複数の検索語を入力したのは40%,データベースを検索する際に無関係な結果を最小化するための方策を利用したのは50%,などがある。いずれもICTリテラシーの課題を浮き彫りにするものとなっている。
ただし,この調査は予備調査の領域を出ないものである。データの収集は63の大学等の協力によりおこなわれているが,協力機関のサンプリングの方法がまちまちである等の問題がある。しかしながら,ICTリテラシースキルを正しく測定することは困難な課題であり,引き続きデータの収集とより適正な測定方法の研究が期待される。また,この調査に関係した米国の高等教育機関等の今後の対応が注目される。
Ref:
http://www.ets.org/portal/site/ets/menuitem.c988ba0e5dd572bada20bc47c3921509/?vgnextoid=340051e5122ee010VgnVCM10000022f95190RCRD
http://www.ets.org/
http://www.ala.org/ala/acrl/acrlstandards/informationliteracycompetency.htm
http://www.eschoolnews.com/news/showStoryts.cfm?ArticleID=6725