E526 – 【連載】アジア・オセアニアの図書館事情:(2)カンボジア

カレントアウェアネス-E

No.88 2006.08.02

 

 E526

【連載】アジア・オセアニアの図書館事情:(2)カンボジア

 

 カンボジアには,政府機関の図書館が28館,大学図書館が13館,学校図書館が1千以上あり,地方には,インターネットにアクセスできるコミュニティ情報センターが22か所ある。また,50以上の中小の専門図書館・私立図書館や,NGOや国連の組織が運営する図書館もある。1日平均の利用者数は,もっとも多いプノンペン王立大学図書館で600人,カンボジア国立図書館(NLC)で35〜50人で,小さな図書館では10〜15人程度である。  

 図書館関連団体としては,1995年に発足したカンボジア図書館員・ドキュメンタリスト協会(CLDA),2003年に発足したカンボジア書籍セクター振興連盟(FDBC)がある。CLDAには100人以上が加盟しているが,専門教育を受けた図書館員は全国で4人しかおらず,CLDAなどの組織が行っている基礎研修のほか,専門教育を受けた図書館員や国際ボランティアによるOJTによって,図書館員の養成を図っている。  

 NLCの2005年の活動としては,まず,ISBNの付与開始が挙げられる。FDBCと協力して“Books in Print”の刊行も準備しており,出版・書籍販売・図書館・研究者に配布する予定であるという。ISSNの付与および法定納本を開始するための準備も行っており,2006年中の制度化が目標とされている。  

 またNLCは,2005年7月から貸出用コレクションの構築を始めている。一般に資料を貸し出すサービスは,これがカンボジアで初めてだという。このほか,NLCが所蔵する“Cambodiana”(カンボジアで刊行された資料,カンボジアに関する資料およびカンボジア人によって作成された資料の総称)の目録の刊行,2万冊を超える19〜20世紀フランス語資料コレクションの目録の刊行といった事業が,近々予定されている。  

 カンボジア全国規模での図書館協力や電子図書館サービスはまだ発展途上である。公式の図書館間貸出プログラムは存在せず,全国の図書館を結ぶ通信ネットワークも存在しない。しかし,NLCやFDBCによる読書推進活動や,ユネスコやユニセフ,NGOなどの支援による情報リテラシー普及プログラムなどによって,人々への図書館・情報サービスは徐々に拡大している。予算不足や建物の老朽化など,依然として課題は多いものの,カンボジア図書館界は着実に歩みを進めている。

Ref:
http://www.nla.gov.au/lap/documents/cambodia.pdf
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