カレントアウェアネス-E
No.87 2006.07.19
E519
【連載】アジア・オセアニアの図書館事情:(1)オーストラリア
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2006年3月にフィリピン・マニラで行われた第14回アジア・オセアニア地域国立図書館長会議(CDNLAO)において,13か国の国立図書館長から自館と自国の最新動向に関する報告がなされている。この報告資料をもとに,毎号1〜数か国の図書館事情を紹介していく。
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(1)オーストラリア
オーストラリアには1,520の公共図書館,677の大学図書館,3,030の専門・私立図書館,652の政府・議会図書館がある。図書館に来館する利用者の数は,公共図書館が高い値を保っているのに対し,大学図書館では減少傾向にある。2004年の調査によると62%の家庭でインターネットアクセスが可能となっており,オンラインでの図書館利用が急速に増加している。オーストラリア国立図書館(NLA)においてもウェブサイトだけを利用する新規利用者の数が多く,閲覧室に来館した利用者でも,OPACの使い方やレファレンスのために図書館員の助けを必要とする人が減ってきているという。
全国規模で活動している図書館ネットワークとしては,オーストラリア州立図書館評議会(CASL),オーストラリア大学図書館員委員会(CAUL),オーストラリア図書館・情報専門家協会(ALIA)がある。CASLにはNLAと州立・準州立の図書館が加盟しており,図書館・情報サービスの広報,政策立案,公共図書館の支援などを行っている。最近の活動としては,電子資料のコンソーシアム契約や,ニュージーランドやシンガポールとの協同によるオンラインレファレンスサービス“AskNow”の提供などを行っている。CAULは大学図書館を代表する組織として,学位論文のデジタル化,電子ジャーナルの協同契約,大学図書館向けパフォーマンス指標の策定,情報リテラシーの測定といった事業を展開している。ALIAには5千人以上の専門職が加入しており,専門職の育成や図書館情報誌の刊行,各種大会の開催などを行っている。
NLAの最近の活動としては,“Libraries Australia”(CA1575参照), “MusicAustralia”(CA1575参照),“PictureAustralia”(E443参照),“PANDORA”(CA1537参照),CASL加盟館の有する貴重な歴史・文化資料で作成した展示“Treasures From Australia’s Great Libraries”(これは各加盟館でも巡回展示される),ナショナル・ライセンスの導入(CA1438参照),デジタル資料コレクションに係る一連のプロジェクト“Digital Service Project”(DSP)などが挙げられている。特に“Libraries Australia”では書誌情報が無料提供され,誰でもドキュメント・デリバリーの申し込みができるようになり,利便性が拡大した。
そのほか関連するトピックとして,米国と自由貿易協定(FTA)を締結したことにより,著作権の保護期間が50年から70年に延長されたことなどが挙げられている。
Ref:
http://www.nla.gov.au/lap/meetings.html
http://www.nla.gov.au/lap/documents/aust06.pdf
CA1438
CA1537
CA1575
E443