E533 – 【連載】アジア・オセアニアの図書館事情:(3)中国

カレントアウェアネス-E

No.89 2006.08.23

 

 E533

【連載】アジア・オセアニアの図書館事情:(3)中国

 

 第14回アジア・オセアニア地域国立図書館長会議(CDNLAO)における中国からの報告は,すべて中国国家図書館(NLC)に関するものであった。  

 NLCは,2005年末の段階で2,500万点を超える蔵書を有しており,このうちの10分の1に相当する250万点を超える資料が,合計40の閲覧室で開架されている。2005年に受け入れた資料は約22万4千タイトル,63万6千点を超えた。また2005年のNLCの開館日数は363日で,来館利用者数は450万人を突破した。この値は2003年,2004年と比べると微増しているが,新規の利用者カード発行数は19万5千枚と,2004年の約22万4千枚から少し減少している。資料の閲覧・貸し出し冊数,レファレンスおよびコンサルテーションの件数,ドキュメント・サプライの件数,NLCウェブサイトの合計閲覧時間も,軒並み減少している。  

 一方で,NLCのサービスメニューは着実に拡大している(E406参照)。特にデジタル情報を提供するサービスの拡大は著しく,NLCのウェブサイトによると,NLCが作成したデジタル資源の総量は120テラバイトに達しているという。2008年の開館を目指している「NLC二期工事および国家デジタル図書館プロジェクト」(E425参照)も順調に進捗している。

 このほか,貴重書を複製・再刊行する「中華善本再生プロジェクト」,農村地域に図書を寄贈する「『図書を地方に』プロジェクト」が,主要プロジェクトとして紹介されている。いずれも,2002年に開始されている。前者では2005年末までに490冊の貴重書が複製刊行されており,うち157冊が2005年に作成された。また後者では,文化部・財政部の支援のもと,2003年から2005年の3年間で,合計6千万人民元(約8億6,500万円)分にあたる500万冊以上の資料を寄贈したという。  

 なお,中国の図書館界を鳥瞰したIFLA Journal誌の記事によると,2004年の時点で中国には2,719の公共図書館,80以上の子ども専用図書館,1,500を超える大学・研究図書館,8千〜9千の専門図書館,60万の学校図書館,6万の企業図書館があるという。各図書館とも市民への情報リテラシー教育に力を入れており,特に公共図書館では2004年だけで合計15万3千のプログラムが行われ,2,500万人が参加したとのことである。また図書館員向けの専門職研修も重視されており,規定によればすべての図書館員は1年につき40時間以上,研修またはワークショップに参加しなければならない。これは図書館員の業績評価の一部となり,地位の確保や昇進にも影響するという。情報リテラシー教育と業績評価を重視するこれらの図書館政策は,機会の均等を指向しつつ競争を奨励する中国社会の一面を表しているともいえよう。  

Ref:
http://www.nla.gov.au/lap/documents/china06.pdf http://www.nlc.gov.cn/service/guanyuguotu/gangyao.htm http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/data/jc_23_ch_01.pdf http://www.ifla.org/V/iflaj/IFLA-Journal-2-2006.pdf
E406
E425