カレントアウェアネス-E
No.85 2006.06.21
E502
公開されていた記録文書を非公開とする措置の妥当性は?(米国)
米国国立公文書館(NARA)が管理・提供する記録文書に対しては,1995年以来,「国家の安全上機密指定されているものも,正当な承認を得ないまま機密指定を外され公開されている」とする連邦政府機関によって,公開されている記録文書の妥当性の調査と,問題のあるものを非公開とする措置が行われてきた。これに対し歴史家や研究者からは,「このような措置のために,公開されていた数多くの歴史的な記録文書が見られなくなった」という批判が上がっていた。
このような批判を受けて,米国国立公文書館(NARA)のワインシュタイン館長(Allen Weinstein)は2006年2月22日,「不適切な公開措置はセキュリティに関する潜在的な脅威となり,不適切な非公開措置は情報の自由な流通を阻害する」として,公開されている記録文書を見直して非公開とした各機関の措置に対する監査を行うと発表した。その結果が4月26日,ウェブサイトで公表された。
監査結果によると,これまでで少なくとも25,315点の記録文書が,見直しの結果公開から非公開にされたという。そのうち約40%が,自機関の文書が適切な承認を得ずに公開されていたという理由,残りの約60%が,公開について他機関に照会すべき文書であったという理由によるものであった。このような非公開措置は,エネルギー省(DOE)や中央情報局(CIA)などの連邦政府機関がNARAとの場当たり的な合意に基づいて行っていたほか,NARA自身も自主的な対応として行っていた。さらに,非公開措置が取られた記録文書のサンプリング調査を行ったところ,その64%は非公開措置が妥当なものであったが,24%は明らかに不適切,12%は疑問が残るものであった。
NARAはこのような結果を受けて,非公開措置に関する基準がないことが最大の問題であるとした。そして「件数に加え,どのような記録文書が非公開とされたのか明示する」という暫定的な手引きを作成して各機関の合意を取り付けた。さらに今後は,機密指定のシステム全体の見直しを行っていくとしている。
Ref:
http://www.archives.gov/declassification/
http://www.archives.gov/isoo/reports/2006-audit-report.html