E1086 – 米国国家機密解除センター,設立後初の報告書を刊行

カレントアウェアネス-E

No.177 2010.08.19

 

 E1086

米国国家機密解除センター,設立後初の報告書を刊行

 

 2010年7月,米国国家機密解除センター(National Declassification Center:NDC)は,設立後初となる報告書を刊行した。報告書は今後も年に2度,1月と7月に発行されることになっている。

 NDCとは,2009年12月29日にオバマ大統領によって国家安全保障の機密指定に関わる大統領令13526が制定されたことに伴い,2010年1月に米国国立公文書館(NARA)内に設置されたセンターである。NDCの任務は,恒久的な歴史的価値を有しながらも,原則公開となる25年間の非公開期間を超えて機密扱いとなっている文書について,適時かつ適切な機密解除の審査を行うことにある。審査対象は,現在NARA内で管理されている文書約4億1,800万ページであり,NDCはこれらすべてについて2013年12月31日までに審査を完了することとなっている。

 報告書は,(1) 報告対象期間の主要な出来事,(2) 同期間の関係政府機関との協力内容,そして(3) 機密解除済み点数と今後の審査対象点数の3部構成となっている。以下それぞれについて簡単に概要を紹介する。

 (1)については, 2010年5月29日に文書の機密解除とその審査の優先順位を定める計画“Prioritization Plan”のドラフト版を作成し,パブリックコメントの募集を行った。そのほかには,NDCに関するウェブサイトとブログを公開し,6月23日にはNDC設立のオープンフォーラムを開催したこと,NARAやエネルギー省(DOE),そして中央情報局(CIA)などの職員をチームとして過去の審査の再評価を行うなど,審査作業の効率化とリスクマネージメントに努めたとある。また,実作業ではトルーマンからカーターまでの歴代の大統領図書館の一部のコレクションやキッシンジャー私文書コレクションの中国関係資料について,優先度を高めて審査を行ったという。そしてNDCの審査プロセスをより効率的なものとし,またデータ収集とその整理のためには,新たなITシステムを導入する必要があると指摘されている。

 (2)の関係政府機関との協力については,各機関職員を交えた会議を週2回実施して審査プロセスの改善に努めている。審査作業は,CIAとDOEの強力なサポートとともに,陸・空軍や国務省,国防情報局や司法省等もNDC内にある審査手続きの評価検討チームや審査品質保証チームに支援を行っている。

 最後に(3)については,2010年1月1日から6月30日までに機密扱いが解除された文書のページ数は約800万ページで,審査対象にはまだ約4億1,000万ページが残されているという。しかし,上記の作業効率化の効果が表れれば,今後は作業が早まると予想されている。

 NARA館長であるフェリエロ(David S. Ferriero)氏は,「国家機密解除プロセスが合理化されることで,記録資料をより早く国民の監視の下に置くことができるようになる。NDCは政府文書へのアクセスの世界に新しい時代の到来を告げるものである」とNDCの果たす役割を強調している。

Ref:
http://www.archives.gov/press/press-releases/2010/nr10-33.html
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/24202/02420211.pdf
http://www.archives.gov/press/press-releases/2010/nr10-122.html
http://www.archives.gov/declassification/reports/2010-biannual-january1-june30.pdf