カレントアウェアネス-E
No.84 2006.06.07
E496
デジタル・サイエンス分野における研究図書館の国際協力の重要性
2006年5月,米国研究図書館協会(ARL)の第148回会員集会が,カナダ研究図書館協会と協同で開催された。この会議資料が,ARLのウェブサイトで公開されている。
今回の集会のテーマは「デジタル・サイエンスとその助成における国際的重要性」であり,3日間に渡って多くの発表が行われた。基調報告では,ARLのショットレンダー(Schottlaender Brian)議長に続き,英国図書館(BL)のブリンドリー(Brindley Lynne)館長,米国議会図書館(LC)のマーカム(Marcum Deanna)図書館サービス担当副館長が発表を行った。
ブリンドリー館長は,BLが行っている国際的な助成プロジェクトや新聞のデジタル化プロジェクト,また欧州デジタル図書館(E390参照)やGoogleの図書館蔵書デジタル化の試み(CA1564参照)などの例を紹介しながら,「国境や組織を超えて協同し, デジタル化された資料をできる限り多く作ることが, デジタル世界で研究図書館の役割を拡大するのに必要不可欠である」として,国際的な協同,模範事例の共有などの必要性を訴えた。また, マーカム副館長は,英米の学術協同事業の展開や,米国におけるオープンアクセスの状況を説明した上で,「デジタル資源の増加に伴い検索サービスの重要性も増している」として,書誌コントロールの分野でのLCの役割と,今後の方向性,課題について説明している。
このほかにも,オープンアクセスと著作権の問題,研究図書館の使命・アイデンティティなどをテーマとした発表が数多く行われており,デジタル環境下において,北米の研究図書館が向かうべき方向性や課題についての認識を端的に知ることができる。