E495 – ソーシャルソフトウェアに関する新たなる展開(日本・カナダ)

カレントアウェアネス-E

No.84 2006.06.07

 

 E495

ソーシャルソフトウェアに関する新たなる展開(日本・カナダ)

 

 これまで民間を中心に利用されていたブログ, RSS, ソーシャルネットワークサービス(SNS), Wikiといったソーシャルソフトウェアを, 地域のコミュニティ形成の道具として行政部門でも積極的に活用しようとする動きが進められている。

 総務省は,平成17年度に行った「ICTを活用した地域社会への住民参画のあり方に関する研究会」および東京都千代田区・新潟県長岡市で行った地域SNSの実証実験の成果をもとに, 先日「住民参画システム利用の手引き」を公開した。

 この手引きは,現在の地域を取り巻く環境について,従来の行政手法では対応できない領域(子育てや介護,地域の安全の確保など)が生じていると分析し, 地域社会の課題解決のためには,地域住民の参画と地域コミュニティの再生が不可欠であるとして, 情報通信技術(ICT)の活用による地方行政を含めた地域社会への住民参画の可能性について論じている。たとえば住民参画の手段としてはネット上の掲示板や会議室を活用して議論に参加したり, 自治会や町内会とは異なるテーマ別のコミュニティを形成することができる, といった利点があるとしている。また住民の相互理解や信頼関係の構築, 情報の共有を前提としたコミュニティを形成する有効なツールとしても, SNSは期待されている。

 図書館界においても, ソーシャルソフトウェアを導入してウェブサイトを構築し, 新たなスタイルの情報提供を進めている機関やライブラリアンが増加している。カナダではこのようなソーシャルソフトウェアの重要性に注目して, 図書館情報学課程の独立した科目として講義の対象とする大学が現れている。

 西オンタリオ大学講師をつとめるAmanda Ethches-Johnson氏のブログによれば,同大学の情報メディア学科で,ブログ,Wiki,RSS,オンラインブックマーク,ソーシャルネットワーク,その他の技術(インスタントメッセンジャー,ポッドキャスト等)について,それぞれ1〜2週間程度ずつ,半期の講義が開講される予定である。この講義では, ソーシャルソフトウェアを実際の利用者サービスの場面に即して利用して, 図書館サービスにおけるソーシャルソフトウェアの意義について議論をおこない, 実際の情報組織化に利用可能なソフトに関する理解を深めることを目的としているとのことである。

 この記事に対して「すばらしい」「興味深い」といった声が同ブログのコメント欄に多く寄せられている。ソーシャルソフトウェアが図書館サービスに及ぼす影響の大きさがあらためて印象付けられた感がある。

Ref:
http://www.soumu.go.jp/denshijiti/ict/index.html
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060413/235223/
http://www.blogwithoutalibrary.net/?p=197
http://www.fims.uwo.ca/
CA1565