E411 – ネットワーク上の伝送権の保護に関する法制化動向(中国)

カレントアウェアネス-E

No.71 2005.12.07

 

 E411

ネットワーク上の伝送権の保護に関する法制化動向(中国)

 

 中国の国家版権局は10月,情報ネットワーク伝送権保護条例の草案を発表し,意見募集を行った。中国では,世界貿易機関(WTO)に加盟した2001年に著作権法の改正が行われたが,情報ネットワーク伝送権の保護方法については,国務院が別途定める,とされるに留まっていた。この草案では,ネットワークを介した伝送権を著作権者に与えるとともに,伝送権の制限に関する規定,権利が侵害された場合の権利侵害者およびインターネットサービスプロバイダの法的責任などが定められている。

 図書館サービスに関する規定としては,権利を制限して,公共図書館のネットワーク閲覧システムで所蔵資料を提供できる際の条件が定められている。図書館の館内にいる利用者に対しては,第4条の5の規定で,著作者名,タイトル等の明示と,複写およびネットワークを越えた利用ができないようにした閲覧専用システムを用いることを条件に,権利者の許諾・権利者への補償金とも必要なくサービス可能とされている。また図書館の館外にいる登録利用者に対しては,第6条の規定により,上記の館内サービスの条件に加えて閲覧システムに利用回数を記録できる機能があること,対象資料が刊行後3年以上経過していることが満たされている場合,権利者の許諾を必要とせずサービスが可能としている。ただし後者については,権利者への補償金が必要であり,また権利者が前もって不許可を宣言している場合はこの限りではない。

 なお,この草案に対しては,中国図書館学会が2つの意見を提出している。1つは第4条の5,第6条で「公共図書館」と記載されている点に関する指摘であり,国家図書館や学校図書館などの非営利・公益的な図書館も含むような表現とすべきであるとしている。もう1つは第6条の補償金の規定に関してである。同学会では,第6条の対象は専ら図書館でデジタル化した資料の館外利用者への提供にあり,合法的に購入したボーン・デジタル資料の館外提供には及ばないと捉えている。この理解のもと,(1) 自前でデジタル化した資料についても元の資料は購入しており,デジタル化した資料に同時にアクセスできるユーザ数が元の資料の冊数を越えない限り,さらに補償金を払う必要はない,(2) 図書館の運営に係るコストは増大しており,政府からの資金援助でもなければ利用者に補償金を負担してもらうことになってしまうが,これは公平なサービスという観点から認められない,の2点を理由に,非営利・公益的な図書館においては補償金を不要とすべきであるとしている。

Ref:
http://www.gov.cn/zwhd/2005-10/17/content_78781.htm
http://www.ncac.gov.cn/servlet/servlet.info.InfoTopicServlet?action=topiclist&id=30