カレントアウェアネス-E
No.448 2022.12.08
E2558
「ひろしま子どもサイエンスライブラリー」の開設
広島県立図書館・正井さゆり(しょういさゆり)
2022年7月7日,広島県立図書館は,子供の読書活動推進コーナー(以下「子供向けコーナー」)にサイエンスをテーマにした「ひろしま子どもサイエンスライブラリー」(以下「ライブラリー」)を開設した。
●概要
子どもにとって興味関心が高いサイエンスに特化した一角には,動植物・昆虫・天気・宇宙・恐竜等自然科学分野の図書約2,000点を新たに整備し,ビジュアルやイラストを多く含んだ図鑑等を中心に魅力的な配架を行っている。また,太陽系や分子構造の模型などと併せて配置し知的好奇心を刺激するビジュアルライブラリーとしての空間を創出している。
子供向けコーナー全体ではサイエンスに関する本の他,調べ学習に役立つ本や読み物・絵本とともに,新たにLLブックや布絵本等,知的障害のある子どもが親しみやすい本等も加えて約7,000冊を配架した。また,できるだけ面出しを多くして図書の表紙を見せるスペースを確保するとともに,車椅子でも通りやすいよう,これまでより通路の幅を広くするなどユニバーサルデザインにも配慮している。
このことにより,子どもの探究的な学びにつながる図書館サービスの充実を図るとともに,教員や図書館職員などにとっても選書や環境整備の取組などの参考になる「場」として展開することを目指している。
●経緯
元々,当館では,専門性の高い資料の収集やレファレンスサービスの提供,県内図書館の物流制度の充実,市町立図書館職員の研修の実施など,「県立図書館ならでは」の役割を果たせるよう取り組んできた。こうした取組に加えて,広島県教育委員会が行っている「広島版『学びの変革』アクションプラン」に資する取組として,「探究的な学び」を図書館資料の充実により支えることを目指した。ただし,子供向けコーナーは約200平方メートルとスペースがあまり広くないため,限られたスペースで特徴あるサービスに絞って実施することとした。
読書というと,未だに文学などの読み物が想像されがちだが,歴史や社会,自然科学に関するものなど幅広い分野がある。なかでも,自然科学は,昆虫・恐竜・宇宙など子どもにとって興味を持つ内容が多く,また,今の子どもは小さな頃からビジュアルの媒体に触れていることもあり,以前よりも関心も多様化してきている。しかし,自然科学系の本の多くは大人のコーナーに置かれていることもあり,子どもの関心に十分応えることが難しい面があった。
そこで,子ども向けから大人向けまで一堂に揃えて見ることができるライブラリーを作ることになったというわけである。なお,ライブラリーの開設にあたっては,児童文学評論家で全国の学校図書館のリニューアルを手掛けている赤木かん子氏に指導・監修をしていただいた。
●準備等
オープンまでのリニューアル作業は,なるべく利用を妨げないよう子供向けコーナーのみを閉鎖して6月30日から7月6日まで行った。この作業には,県内外から公共図書館,学校図書館の関係者,中学生,大学生など35人のボランティアに参加いただいた。
●関連イベント
7月7日のオープン以後,国立天文台の縣秀彦准教授よる宇宙に関する講演や,大柿自然環境体験学習交流館さとうみ科学館の西原直久館長によるカブトガニに関する講演,日産自動車株式会社による「わくわくエコスクール」等,定期的にサイエンスに関するイベントを行い,関心を喚起し図書館の利用促進につなげている。
●利用の状況
オープン後10月までの来館者数と児童図書の貸出冊数の平均は,2021年度と比較してそれぞれ約1.4倍と1.8倍で,利用した児童からは「とても楽しそうな本がいっぱいあったので,どれを選べばいいか時間がかかりました」等の感想が,県内の教育関係者からは,「学校図書館での展示の参考にしたい」等の感想があり好評を得ている。
●今後について
2022年9月から,当館では「調べ学習おたすけ講座」を実施する等,探求的な学びにつなげる企画も始めている。ライブラリーの取組は,県民の来館を促す魅力的な図書館づくりのきっかけと考えており,その他のコーナーについても利用者目線で改善し,多くの県民に来てもらえる,そして市町立図書館等のモデルとなるような県立図書館にしていきたいと考えている。
Ref:
“ひろしま子どもサイエンスライブラリー”. 広島県立図書館.
https://www2.hplibra.pref.hiroshima.jp/pid101/sciencelibrary