E2489 - オープンデータとしての学術論文<報告>

カレントアウェアネス-E

No.434 2022.05.12

 

 E2489

オープンデータとしての学術論文<報告>

国立国語研究所・宮川創(みやがわそう)

 

  2022年2月15日,京都大学図書館機構の主催で,国際シンポジウム「オープンデータとしての学術論文」がオンラインで開催された。シンポジウム自体はZoom上で行われたが,事前に参加者に発表の録画と発表資料が配付されるなど,ユニークな形式であった。各発表は,最後のディスカッション以外はZoom上で録画が流された。筆者もシンポジウムに参加したので,その内容について報告する。

  はじめに,京都大学附属図書館の北村由美氏と西岡千文氏による趣旨説明があった。ここでは,オープンデータの定義,学術論文のオープンデータ化の国内外の動向,学術論文の機械可読性,セマンティック・ウェブ,RDFなど,この講演会における重要事項とキーワードの説明があったあと,各講演の趣旨説明が行われた。

  その後,第一部「オープン・サイテーション」が始まった。最初の発表は,学術出版物のオープン・サイテーションを促進するイニシアティブであるInitiative for Open Citations(I4OC)とイタリア・ボローニャ大学兼任のSilvio Peroni氏による“OpenCitations: crossing one billion citations and beyond”である。同氏はまず,引用(citation)とオープン・サイテーションの定義を述べた後,1989年にウェブが導入されて以降の発展の歴史を紹介した。そして,オープン・サイテーションの学術基盤組織であるOpenCitationsの優先事項が,サービス,ソフトウェア,データを常にオープンライセンス(データはCC0,ソフトウェアはISC)の下で無償で提供し,最大限の再利用を促進することであると述べた。

  続いて,西岡氏が「オープン・サイテーションの実践1:京都大学図書館機構における紀要論文のオープン・サイテーションに向けた取り組み」として,京都大学図書館機構が行っている紀要論文のオープン・サイテーション活動を紹介した。また,引用データの組織化における課題として,引用先文献に種別が多いことや,識別子がないものが多いことを挙げた。そのほか, 機関リポジトリKURENAIなどにおける引用データの利活用について議論した。

  このセッションの最後の発表は,スイス連邦工科大学ローザンヌ校のMatteo Romanello氏,オランダ・アムステルダム大学のGiovanni Colavizza氏,そして最初の発表者であったPeroni氏の3人による「オープン・サイテーションの実践2:Building the Humanities Citation Index (HuCI): why and how?」で, この発表は字幕付きであった。この発表では,論文など研究文献だけでなく,人文学の一次資料のオープン・サイテーションも可能にすることを目指すHuCIの構想について説明が行われた。

  第二部は,引用関係をはじめとした,論文に書かれた知識をデジタルデータとして構造化し,検索・比較のために利用可能にするOpen Research Knowledge Graph(ORKG)についてであった。このセッションでは,2つの発表があり,最初の発表は,ドイツ国立科学技術図書館(TIB)のLars Vogt氏,Sören Auer氏,Allard Oelen氏,Vitalis Wiens 氏による“Introduction to the Open Research Knowledge Graph”であった。ORKGの動機・概要について説明がなされた後,ORKGの可視化のデモが行われた。引き続きAuer氏が次の発表“What can University Libraries do for Open Research Knowledge Graph?”を行い,ORKGの最新機能SmartReviewが紹介され,出版プラットフォームへの統合の展望が述べられた。

  第三部は,Auer氏,Colavizza氏,Peroni氏,Romanello氏,西岡氏による質疑応答,ディスカッションであり,国内外のオープン・サイテーション,オープンサイエンスの課題と展望が議論された。様々なトピックが論ぜられたが,特に,様々な言語・文字の文献を扱う際の方策に関わる議論が印象的であった。

Ref:
“【図書館機構】2021年度京都大学図書館機構講演会「オープンデータとしての学術論文」”. 京都大学図書館機構. 2022-01-07.
https://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/bulletin/1392470
OpenCitations.
https://opencitations.net/
Initiative for Open Citations.
https://i4oc.org/
ORKG.
https://www.orkg.org/orkg/
西岡千文,北村由美. オープン・サイテーションと機関リポジトリの展開<報告>. カレントアウェアネス-E. 2019, (373), E2160.
https://current.ndl.go.jp/e2160