E2470 – 第46回ISSNセンター長会議<報告>

カレントアウェアネス-E

No.429 2022.01.27

 

 E2470

第46回ISSNセンター長会議<報告>

収集書誌部逐次刊行物・特別資料課・幡谷祐子(はたやゆうこ),柳澤健太郎(やなぎさわけんたろう)

 

  2021年11月17日から19日まで,第46回国際標準逐次刊行物番号(ISSN)センター長会議(以下「センター長会議」)が,ドイツ国立図書館(DNB)をホストとしてオンライン形式で開催された。会議には,ベケ(Gaëlle Béquet)ISSN国際センター長,シュッツ(Christian Schütz)ISSNドイツセンター長ほか各国センター長,ISSN国際センタースタッフをはじめ,最近1年間に新規にISSNネットワークに加盟した3か国のセンター(オーストリア,ペルーおよびウクライナ)からなど,75人以上が参加した。国立国会図書館(NDL)からは第44回以来2年ぶりの参加であり,筆者2人が11月17日のみ出席した。他の日程については,ISSNネットワークに提供された録画や資料により内容を把握した。

  1日目には,ISSN国際センター(以下「国際センター」)からの報告2件(2021年活動報告,前回センター長会議決議の概要とその後の進捗状況)並びにドイツ,エジプトおよび新規加盟の各国のセンターによる活動報告が行われた。2日目には,2つのワークショップと,DNBの号単位の書誌作成についての発表,3日目には,国際センターの2024年までの戦略の概要報告,ISSNマニュアル(後述)の改訂準備作業を担当するISSNレビューグループの報告,データの品質向上に関する報告等が行われ,最後に,今回の会議の決議案が投票に付され,承認された。主要な話題を以下に紹介する。

  ISSNレビューグループの報告では,新たな「クラスターISSN」として「ISSN-H」を設ける構想が公表された。クラスターISSNとは,ISSNを定めたISO 3297規格の最新版である第6版(ISO 3297:2020)において新設された概念である。互いに関連する複数のISSN登録資源をまとめて識別する必要がある場合に,ISO 3297の規定する登録機関(Registration Authority)を務める国際センターの判断のもとで,ISSN-X(Xには何らかのアルファベットが入る)の形の接頭辞を付した新たな識別子を与えることができる,というものである。ISSN-Hはその一例であり,時系列の来歴(History),例えば改題前・後といった関係にある複数誌をまとめて識別するためのものとして構想されている。なお,クラスターISSNの新設前から運用されてきたISSN-L(Linking ISSN。同一の内容を複数の異なる媒体で刊行するものをまとめる識別子)も,クラスターISSNの一種として位置付け直されている。

  また,ROAD(Directory of Open Access scholarly Resources)の新たな収録基準にも焦点が当てられた。ROADは,国際センターのデータ提供用システムであるISSN Portalに搭載されている書誌データのうち,オープンアクセスの学術情報資源(学術雑誌,会議録,学術リポジトリ等)の書誌データの全項目を無償で公開するもので,2014年に本格稼働を開始した。しかし,これまでのROADの収録基準は,数年前に基準を改訂したDOAJ(Directory of Open Access Journals)等の,ROADのパートナー機関のデータベースの基準に比べて緩やかであったために,連携上適切でない資源も含まれているとのことで,2021年,国際センターはROADの収録基準を改訂した。今後の運用方法はISSNネットワークの課題であり,今回の会議では,ROADに既に収録済みの学術情報資源を新しい収録基準に基づいて再精査する必要がある旨決議された。

  国際センターおよびISSNネットワークの各種事業については,現段階での予定も周知された。国際センターで運用準備中のデータ作成用システムであるISSN+の導入は2022年1月に,ISSNレビューグループによるISSNマニュアル(ISSNの付与対象,ISSN登録に必要な書誌データ作成に関する規則等を定めた,ISO 3297規格を補完するマニュアル)改訂の完了は2023年前半に,それぞれ延期される見込みである。ISSN Portalは2023年にアップグレードが予定されている。ISO 3297規格について,軽微な誤記を修正するための第7版の策定が計画され,策定作業の開始可否を問う投票が,今回のセンター長会議の期間と並行する形で,国際標準化機構(ISO)において実施されていることも周知された。

  次回の第47回センター長会議は,2022年11月に,エジプトのカイロで開催予定である。

Ref:
永井善一. 第44回ISSNセンター長会議参加報告―ISSNネットワークの新たな取組み. NDL書誌情報ニュースレター. 2020, 2020(2・3)(53・54).
https://www.ndl.go.jp/jp/data/bib_newsletter/2020_2_3/article_01.html
“ISSN日本センター”. NDL.
https://www.ndl.go.jp/jp/data/issn/index.html
ISSN International Centre.
https://www.issn.org/
ISSN International Centre 2020-2024 Strategy. ISSN International Centre. 2020, 9p.
https://www.issn.org/wp-content/uploads/2020/07/Strategy-ENG.pdf
ISO 3297:2020. Information and documentation — International standard serial number (ISSN).
https://www.iso.org/standard/73846.html
“ISSN日本センター ISSN-Lについて”. NDL.
https://www.ndl.go.jp/jp/data/issn/index.html#anchor10
“ROAD, the Directory of Open Access scholarly Resources”. ISSN International Centre.
https://www.issn.org/services/online-services/road-the-directory-of-open-access-scholarly-resources/
“ISSN and DOAJ: A renewed partnership”. ISSN International Centre. 2018-03-05.
https://www.issn.org/issn-and-doaj-a-renewed-partnership/