カレントアウェアネス-E
No.454 2023.03.23
E2587
第47回ISSNセンター長会議<報告>
収集書誌部逐次刊行物・特別資料課・幡谷祐子(はたやゆうこ),柳澤健太郎(やなぎさわけんたろう)
2022年11月20日から23日まで,第47回国際標準逐次刊行物番号(ISSN)センター長会議(以下「センター長会議」;E2470参照)が,エジプト・カイロ及びオンラインのハイブリッド形式で開催された。会議には,ベケ(Gaëlle Béquet)ISSN国際センター長,ラシュワン(Rabab Rashwan)ISSNエジプトセンター長ほか各国センター長,ISSN国際センタースタッフなど,70人程度が参加した。これらの人数には会場への参加のほか,オンラインによる参加も含まれる。国立国会図書館(NDL)からは,筆者2人が11月21日のみオンラインにより参加した。他の日程については,ISSNネットワーク(パリにあるISSN国際センターと各国のISSNセンターで構成される政府間組織)に提供された資料により内容を把握した。
1日目は,エジプトの関係者による開会挨拶や議題の採択等で会議の幕を開けた。2日目には,前回会議の議事録承認,ISSN国際センター(以下「国際センター」)からの報告3件(2021年及び2022年活動報告,前回センター長会議決議の概要とその後の進捗報告,2024年までの戦略の進捗報告)に加え,エジプトその他の各国センター(アルジェリア,フランス,ガーナ,モーリシャス,ナミビア,ナイジェリア,セーシェル)による活動報告,ベケ国際センター長による永続的識別子に関する研究報告,レイノルズ(Regina Romano Reynolds)米国センター長による新興又は疑念のある出版者からのISSN申請への対応に関する問題提起が行われた。3日目と4日目には,国際センターが提供する目録作成システムであるISSN+に関する実習セッション等とともに,ISSNについて定めた国際規格ISO 3297:2022を補完するISSNマニュアルを改訂するためのISSNレビューグループの会議を行い,最後に今回の会議の決議案が投票に付され,承認された。主要な話題を以下に紹介する。
特に重要なのが,国際センターの戦略の進捗報告及びISSNレビューグループ会議の両方で取り上げられた,MARC21の856フィールドへのサブフィールド$g,$hの追加である。これまでオンラインジャーナルのURIを記録するために用いられてきたのが,856フィールドのサブフィールド$uである。しかし,オンラインジャーナルにおいては,掲載先のURIの変更や消滅といった事情で,従来のURIがリンク切れになることがある。こうした問題に対処するため,永続的識別子を記録するためのサブフィールドとして$g,リンク切れとなったURIを記録できるサブフィールドとして$hを新設すべく国際センターがフィンランド国立図書館とともにMARC諮問委員会に働きかけてきたが,その進捗が会議の場で報告された。なお,この改訂は会議後の2022年12月に実現し,既にMARC21の856フィールドの規定に反映されている。
また,新興又は疑念のある出版者からISSN申請があった場合について,レイノルズ米国センター長からは,基本的にはISSNを付与する方向で対応するのが妥当との見解が示された。ここでいう新興又は疑念のある出版者とは,ハゲタカジャーナル(CA1960参照)であることが疑われる出版物の出版者を指す。今回の問題提起の趣旨は,ISSN申請のあった刊行物がハゲタカジャーナルにあたるかどうかは,申請の時点では必ずしも明瞭ではないこと,ISSNの役割は刊行物の識別であり,その品質保証ではないこと,といった点にある。なお,オンライン刊行物については,学術出版物としての質の保証は,収録対象を一定の基準を満たす学術的なオンライン刊行物に限定しているROAD(Directory of Open Access scholarly Resources。国際センターのデータ提供用システムであるISSN Portalに搭載されている書誌データのうち,オープンアクセスの学術情報資源(学術雑誌,会議録,学術リポジトリ等)の書誌データの全項目を無償で公開するもの)への掲載の可否によって示されるべき,との見解も合わせて述べられた。
次回の第48回センター長会議は,2023年10月に,ベルギーのブリュッセルで開催予定である。
Ref:
“ISSN日本センター”. NDL.
https://www.ndl.go.jp/jp/data/issn/index.html
ISSN International Centre.
https://www.issn.org/
“The 47th ISSN Centre Directors’ Meeting is taking place in Cairo, Egypt, for the first time in 46 years !”. ISSN International Centre. 2022-11-21.
https://www.issn.org/the-47th-issn-centre-directors-meeting-is-taking-place-in-cairo-egypt-for-the-first-time-in-46-years/
ISSN International Centre 2020-2024 Strategy. ISSN International Centre. 2020, 9p.
https://www.issn.org/wp-content/uploads/2020/07/Strategy-ENG.pdf
“856 – Electronic Location and Access (R)”. Library of Congress.
https://www.loc.gov/marc/bibliographic/bd856.html
ISO 3297:2022. Information and documentation – International standard serial number (ISSN).
https://www.iso.org/standard/84536.html
“ROAD, the Directory of Open Access scholarly Resources”. ISSN International Centre.
https://www.issn.org/services/online-services/road-the-directory-of-open-access-scholarly-resources/
幡谷祐子,柳澤健太郎. 第46回ISSNセンター長会議<報告>. カレントアウェアネス-E. 2022, (429), E2470.
https://current.ndl.go.jp/e2470
千葉浩之. ハゲタカジャーナル問題 : 大学図書館員の視点から. カレントアウェアネス. 2019, (341), CA1960, p. 12-14.
https://doi.org/10.11501/11359093