E2374 - 米国で電子書籍の法定納本が開始される

カレントアウェアネス-E

No.411 2021.04.22

 

 E2374

米国で電子書籍の法定納本が開始される

関西館電子図書館課・渡部淳(わたなべじゅん)

 

   2020年12月14日,米国において,著作権登録に関する規則(PART 202, Title 37, Code of Federal Regulations)の改正により,オンラインのみで出版された電子書籍(electronic-only books)が法定納本の対象となる最終規則(final rule)が発効した。この最終規則の要点を紹介したい。

   米国著作権法第407条では,米国内で発行された著作物の著作権者または排他的発行権者は,発行日後3か月以内に,最良版(best edition)の完全なコピー(complete copy)2部を米国議会図書館(LC)に納入しなければならないと定めている。当初,電子出版物はこの規定の対象外であったが,2010年2月24日,オンラインのみで出版された電子出版物のうち電子逐次刊行物(electronic-only serials)の納入が制度化された(E1032参照)。今回の最終規則は,さらに電子書籍の納入を制度化したものである。

   LCの著作権局長は,オンラインのみで出版された電子出版物の著作権者または排他的発行権者に対して,完全なコピー1部をLCでの利用のために納入するよう,書面で要求することができる。電子書籍については,2020年12月14日以降に出版されたものが要求の対象となる。著作権者または排他的発行権者は,納入要求に係る書面の受領後3か月以内に要求された電子出版物を納入しなければならない。なお,電子と冊子体の両方の出版物が発行される場合は,冊子体の出版物のみが納入対象となる。

  「完全なコピー」とは,出版物の最良版を構成するすべての要素を含んだものであり,メタデータやフォーマット・コードも含まれる。また,記事,図表,前書き,後書きに加え,外部ファイルや外部フォントなど,出版物の表示に不可欠な要素はすべて納入が必要である。

  「最良版」とは,「納入日以前に米国内で出版された版のうち,米国議会図書館がその目的に最も適していると判断したもの」と定義されている。同一バージョンで複数の版が出版されている場合,一般的には最高品質のものが最良版と見なされる。納入者が,複数出版された版のどれが最良版であるか不確実なときは,著作権局に問い合わせなければならない。

  「オンラインのみで出版された電子書籍」の定義付けも行われ,「1巻または特定の巻数の下,米国内で発行され,オンライン上でのみ利用可能な電子フォーマットによる言語の著作物」とされた。オーディオブック,コンピュータープログラム,ウェブサイト,ブログ,電子メール,ソーシャルメディアは,電子書籍から除外される。消費者の注文に応じて印刷する,いわゆるプリント・オンデマンドの書籍については,「オンライン上でのみ利用可能」と見なし,電子書籍に該当すると規定された。

   電子出版物を納入する際は,当該電子出版物に含まれる記述データ(メタデータ)を添える必要がある。電子逐次刊行物においては,タイトル,ISSN,出版者,刊行頻度,出版地,巻号,出版日,記事タイトル,記事の著者,記事の識別子(DOIなど),電子書籍においては,タイトル,著者,出版日,出版地,出版者,ISBNなどが必要とされるメタデータである。

   出版物へのアクセスまたは利用を制御する,技術的保護手段(Technological Protection Measures:TPM)の扱いについても規定された。電子逐次刊行物においては,TPMを解除して納入することが求められる。電子書籍においては,(1)TPMを含まず出版した場合は,TPMなしの版を納入する,(2)TPMありで出版した場合は,著作権者がTPMを解除して納入する,(3)著作権者がTPMの解除を拒否した場合は,著作権局,LC,LCが許可した利用者が継続的にアクセスできる版を納入する,とされた。

   納入された電子出版物は,LCの施設において,許可された利用者のみが利用できる。「許可された利用者」とは,LCの職員・請負業者・登録研究者,連邦議会の議員・秘書・職員を指す。電子出版物に同時にアクセスできるのは2ユーザーまでに制限される。また,権利者の許諾なしに,インターネット公開することはない。

   以上が,最終規則の要点となる。電子出版物の法定納本について,日本においては,2013年7月から,無償かつ技術的制限手段(DRM)が付与されていないものを対象にオンライン資料収集制度を実施している(E1464参照)。国立国会図書館(NDL)では,有償等オンライン資料の制度収集に向けて,有識者で構成される納本制度審議会にて審議を行い,2021年3月25日,調査審議の結果を総括した答申が提出された。オンライン資料収集制度の参考とするため,引き続き各国の動向を注視したい。

Ref:
“Issue No. 864 Copyright Office Issues Final Rule Regarding Mandatory Deposit of Electronic-Only Books”. Copyright.gov. 2020-12-12.
https://www.copyright.gov/newsnet/2020/864.html
Mandatory Deposit of Electronic-Only Books. Federal Register. 2020, 85(219), p. 71834-71838.
https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2020-11-12/pdf/2020-23101.pdf
“Mandatory Deposit of Electronic-Only Books”. Copyright.gov. 2020-12-12.
https://www.copyright.gov/rulemaking/ebookdeposit/
“Part 202--Preregistration and Registration of Claims to Copyright”. Copyright.gov.
https://www.copyright.gov/title37/202/index.html
“オンライン資料の補償に関する小委員会”. 国立国会図書館.
https://www.ndl.go.jp/jp/collect/deposit/council/council.html#anchor02
“納本制度審議会から答申が提出されました(付・プレスリリース)”. 国立国会図書館. 2021-03-26.
https://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2020/210326_01.html
鳥澤孝之. 米国でオンライン出版物の納本制度が開始される. カレントアウェアネス‐E. 2010, (168), E1032.
https://current.ndl.go.jp/e1032
関西館電子図書館課. オンライン資料収集制度(愛称:eデポ)の開始. カレントアウェアネス‐E. 2013, (242). E1464.
https://current.ndl.go.jp/e1464