E2360 – East Asia Digital Library(EADL)β版公開と今後の展望

カレントアウェアネス-E

No.409 2021.03.04

 

 E2360

East Asia Digital Library(EADL)β版公開と今後の展望

電子情報部電子情報企画課・福林靖博(ふくばやしやすひろ),中川紗央里(なかがわさおり)
電子情報部電子情報流通課・奥田倫子(おくだともこ)

 

   East Asia Digital Library(EADL)は,東アジアの文化・学術資源を対象とするポータルサイトである。韓国国立中央図書館(NLK)が主体となって構築・運営しており,国立国会図書館(NDL)は参加館として協力している。本稿では,2020年12月17日にβ版を公開したEADLの構築に至る背景,構築体制,機能概要,今後の展望について紹介する。

●EADL構築の背景

   EADLの構想は,2010年8月にNDLとNLKおよび中国国家図書館(NLC)の間で締結した「日中韓電子図書館イニシアチブ(CJKDLI)協定」に端を発する。CJKDLIは,3か国における文化・学術資源へのアクセスを容易化し,学術界へ貢献することを目指し,メタデータの標準化,統合ポータルの構築,電子情報の長期保存等について,3か国持ち回りで開催される年次会合において共同で検討を行ってきた。

   2013年の第3回会合(E1526参照)で,3か国の電子情報資源のポータルサイトを構築することについて合意し,2014年の第4回会合(E1647参照)で,NLKが中心となり,3か国ポータル「CJK Digital Library」の構築を2017年9月の公開を目指して進めていくこととなった。CJK Digital Libraryには,各国で主題を定めたデジタルコレクションおよびメタデータを相互交換して搭載することで合意し,NDLは,2016年から2017年にかけて,データ提供,システムレビュー,公開ドキュメントの作成等において協力した。

   しかし,2017年11月以降,中国の国内事情によりCJKDLIの活動が事実上停止となり,それに伴いCJK Digital Libraryの公開も見送りとなった。その後,NDLとNLKとで検討を継続し,NLCの了解の下,CJKDLIの協定と切り離して日韓2か国でポータル,すなわちEADLを構築することとなった。

●構築体制

   CJK Digital Libraryの構築過程では,効率よく作業を進めるため,3機関で共通の体制を整えた。意思決定を行うプロジェクト委員会のもとに,全体総括班,技術班,リソース班の3つのワーキンググループを設け,各館とも班員を2人ずつ配置した。またNDLとNLCにおいてはシステム開発を受け持つNLKとの間に連絡担当を1人配置した。この体制はEADLの構築においてもNLCを除いたかたちで継続している。

   EADLの開設にあたっては,2020年3月25日に両館長名で「EADLの運営に関する覚書」を締結した。覚書ではEADLのサービス内容,共有する情報資源,各館の役割分担,知的財産や個人情報の扱い,サービス閉鎖時の手続きを定めている。現在,EADLは,運営館であるNLKと参加館であるNDLによって担われている。運営館は,システムの開発,運用,管理の責任を負い,また連携拡大のための契約締結を行うことができる。一方,参加館はデジタルコレクションのテーマ選定やメタデータと画像データの提供義務を負うほか,運営館によるサービスの運営に積極的な支援を行うこととされている。

●EADLの機能

   EADLには,2020年12月現在,NDLおよびNLKがデジタル化した古典籍資料等約8,000点のメタデータおよび約100点のデジタル画像が収録されている。トップの検索窓から,キーワード検索および資料のタイトル,作成者,出版者による詳細検索ができるほか,所蔵機関,地域,言語,出版年のファセットで資料を絞り込むことが可能である。各資料の書誌情報のページには各館が提供しているデジタル資料検索・閲覧サービスへのリンクがあり,それぞれのウェブサイトに遷移して本文画像を閲覧できる。また,SPARQLエンドポイントも備えており,SPARQLクエリによるデータの検索や,WebAPIとして活用することも可能である。

   各館の資料については,日本語,韓国語,英語の3か国語の解説を付した「EADLデジタルコレクション」のページを設けている。現在,デジタルコレクションのテーマとして,NDLからは「古活字版」,「古刊本」,「本草学と博物誌」等,NLKからは「タクチ本(朝鮮旧活字小説)」,「朝鮮王室資料」,「朝鮮通信使」等を提供している。

●今後の展望

   EADLは試験公開されたばかりで,検索できるメタデータ件数もまだ限られているが,今後,正式版公開に向けて,機能改善および連携データの拡充を行う想定である。機能面では,特に,検索機能の改善や,言語タグによるメタデータの統制が残課題となっている。連携拡充に向けては,NDL提供分については,メタデータおよびデジタルコンテンツ提供の協力を継続する。さらに,運営館であるNLKは,東アジアに所在する機関に限らず,米国や欧州等の東アジア関連資料を所蔵する機関にも参加館を拡大し,東アジア学研究者に役立つサービスとなることを目指すとしている。

Ref:
East Asia Digital Library.
https://eadl.asia/home/
福林靖博, 奥田倫子, 中川紗央里. EAST ASIA DIGITAL LIBRARY:東アジアにおける国際共同プロジェクトの一事例. デジタルアーカイブ学会誌. 2020, 4(s1), 4p.
https://doi.org/10.24506/jsda.4.s1_s80
小澤弘太, 福山樹里, 安藤一博. 第3回日中韓電子図書館イニシアチブ(CJKDLI)会議<報告>. カレントアウェアネス-E. 2014, (252), E1526.
https://current.ndl.go.jp/e1526
木目沢司, 小澤弘太, 福山樹里, 大山聡. 第4回日中韓電子図書館イニシアチブ(CJKDLI)会議<報告>. カレントアウェアネス-E. 2015, (274), E1647.
https://current.ndl.go.jp/e1647
小澤弘太, 橋詰秋子, 町屋大地, 木下雅弘. 第6回日中韓電子図書館イニシアチブ(CJKDLI)会議<報告>. カレントアウェアネス-E. 2017, (319), E1885.
https://current.ndl.go.jp/e1885