カレントアウェアネス-E
No.297 2016.02.04
E1762
第5回日中韓電子図書館イニシアチブ(CJKDLI)会議<報告>
2015年12月10日と11日,第5回日中韓電子図書館イニシアチブ(China-Japan-Korea Digital Library Initiative:CJKDLI)会議(E1526,E1647参照)が国立国会図書館(NDL)で開催された。中国国家図書館(NLC)と韓国国立中央図書館(NLK)からは各4名,開催国であるNDLからは9名が出席した。
初日の午後は,昨年実施の第4回会議後の各館の電子情報サービスに関する取組を報告した。NDLは,災害対応力の強化のためのデジタル化事業,図書館向けデジタル化資料送信サービスの提供状況,国立国会図書館サーチの連携拡張等について報告した。NLCからは,モバイル端末を活用した資料紹介,電子書籍・雑誌の提供等のサービスの展開,NLCが所蔵する電子書籍やオーディオブックが閲覧できるスマートフォン用アプリの提供,ソーシャルネットワークサービスの活用の現状と効果等について報告があった。NLKからは,情報環境の変化に対応するためのオン・オフライン資料収集窓口の一元化,Linked Open Data(LOD;CA1746参照)への取組,同館のホームページと電子図書館サービスのポータルサイト“Dibrary”(E934参照)の統合等について報告があった。
その後引き続き,NLCから「中日韓デジタル図書館データベース」の構築の提案について,NLKからCJKDLIポータルサイトのパイロット版の開発・検証状況について報告があった。NLCの「中日韓デジタル図書館データベース」は,儒教経典や漢方医学・芸術・建築等,中国文化をテーマとした古典籍をデジタル化した資料を,World Digital Library(E912参照)をモデルとして,メタデータも含めて一か所に集約し,データベースを構築する構想で,NLCが使用しているシステムを基礎に開発し,NLC側で主な運営も担うという提案であった。一方,NLKのCJKDLIポータルサイトのパイロット版は,Europeana(CA1863参照)をモデルに,各国のメタデータを集約して統合検索を可能とすることを目指すもので,機能等を検証するためにNLKが開発し,現在は日中韓のそれぞれの著名な作家10人,計30人の作品をCJKDLIの関係者に限り検索可能としている。米国議会図書館の著者名典拠ファイル,バーチャル国際典拠ファイル(VIAF;CA1521参照),DBpedia(WikipediaをLOD化したもの)等のデータとLODでリンクする機能も実装している。
2日目は,初日午後の報告を受け,CJKDLIポータルサイトのパイロット版について,グラフィカルユーザインターフェース(GUI)の在り方や文字コードなど,これまでの検討の過程で残された課題を確認し,本格版に向けての方向性の確認を行った。その上で,NDLから,CJKDLIポータルサイトの本格版の構築に向けて,NLKが開発したパイロット版を発展させ,メタデータのみを一か所のサーバに集約するシステムを目指す提案を行い,議論を行った。また,当初の対象コンテンツとして,日中韓共通の文化的基盤である中国古典をテーマとするというNLCの案をベースにして検討することを提案し,議論を行った。
協議の結果,CJKDLIポータルサイトのパイロット版については,引き続きNLKを中心にメタデータ集約型での開発を進めること,またその際にメタデータ等の標準化を進めることで合意した。次回第6回会議においては,第7回会議までにCJKDLIポータルサイトを公開することを目指して,議論をする予定である。コンテンツは,各国が選定したテーマを基に,東アジア文化の源流にあたることから,できるだけ中国に関連した古典籍のデジタル化資料を20種類以上選定し,そのメタデータ(書誌データ,抄録データ),画像データを相互に交換することで合意した。
第6回CJKDLI会議は,2016年にNLKで開催する予定である。
電子情報部・原田久義
Ref:
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/elib-cooperation.html#2-3
http://iss.ndl.go.jp/
http://www.nl.go.kr/nl/index.jsp
http://ja.dbpedia.org/
E1526
E1647
E934
E912
CA1746
CA1863
CA1521